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2024/4に投稿した短編がどういうわけか10月になってPVが爆増しました。

感想を何件かいただいて、神坂いいじゃん!的なことを言っていただいたのでちゃんと書くかと思った次第です。

スーパーロングな連載にはならないと思いますが、書きたかったエピソード事態はストックがあるのでぼちぼち消化しながらのんびりやることにしました。

顔のあるモブ・神坂をどうか応援してくださると幸いです。

 お前じゃなければ良かったんだ。


「俺、春陽(はるひ)と付き合うことにしたんだ」


 お前だけはだめだったんだ、お前じゃないなら俺は素直に祝福できたんだ。


「そうかぁ〜。一応聞くけど、なんで?」

「ええっと……ええ、なんか恥ずかしいな、俺ら幼馴染だし、やっぱ俺の近くに春陽がいてくれたらいいなって思ってさ」

「ほォん。そうかそうかそうだよな、市山(しやま)サッカー部の手伝いとかしてたもんな」


 サッカー部っていうかお前のな、という言葉を飲み込む。

 目の前の男……、友人だったそいつはそうなんだよ! だからさぁ、とか言って嬉しそうに笑っている。なに笑ってやがるクソが。


「おめでとさん。まあ、それならお前との友情は今日限りだわ」

「え? なんだよそれ、なんでそうなるんだよ? も、もしかして春陽のこと……」

「んなわけあるかバーーーーカ! おめーの目が節穴だからだバーーーーーーーーカ! クソが! あとで後悔しても俺は一切合切手を貸さねえし、手どころか顔も貸さねえからな! ブワァーーーーーーカ!」







 神坂(かみさか) (ゆう)。俺である。


 端的に言うと、俺は友達が多いけど少女漫画の恋愛しないレギュラーキャラ、って立場のやつである。マスコット枠と言い換えてもいい。

 職業は高校生。普通の高校二年生だ。異世界転生とかしていないごく普通の。死に戻りとかもしてない、本当に普通の。とりたてて特技も面白味もない。


 一つだけ俺の人生の変わった話があるとすれば、やたらと俺の周りには少女漫画みたいなことしてるやつが多い。中学の時からずっとそうだ。そんで多分これからもそうだ。

 しかもすんなりいかないタイプの恋愛が多い。


 さっき話していたアレはサッカー部で去年同じクラスだった楠井(くすい) 秋人(あきと)だが、アレには女の幼馴染が二人いる。

 晴れて彼女になった市山(しやま) 春陽(はるひ)と、もう一人、その市山に良いように使われ邪魔されている影山(かげやま) 雪那(ゆきな)


 良いように、邪魔されて、っていうので察してほしいが要は秋人の中の市山の評価っていうのはそのほとんどが影山さんの功績だ。幼馴染だから気づかないことも使いやすいことも反抗できないこともあるんだろう。

 秋人がそんなぼんくらだとは思わなかった。ちょっと考えればわかるのに。というわけで俺はあいつと友達辞めることにした。俺は何回も影山さんのおかげだねって誘導したからな! 聞かなかったのおめーだからな! まじでクソ! 顔だけ野郎!


「あー、影山さん」

「神坂くん」


 落ち込んで、は見えないが俺の知らないところでいろいろあるに違いない。平静を装って話しかけるといつも通りに見えるので女子っていうのはこういうとき本当に強いなと思う。

 俺が話しかけるのは「俺にしとけよ」的なやつではない。

 なんというか……俺が関わると「いいほうに」進むのだ。いつもそうである。


「さっき秋人から、市山と付き合うって話聞かされて……でも俺知ってるんだ、本当は影山さんが全部……」

「雪那、……っとごめん話し中だったか」

「一条先輩……」

「え!? 一条先輩!?」


 過去一の大物が出てきて思わず飛び上がる。一条(いちじょう) 夏樹(なつき)といえば芸能人で生徒会長という設定盛りすぎの弊学校のメインヒーロー枠の一人だ。そうか、影山さんは一条先輩なのねなるほどね。


「神坂くんは、去年のクラスメートで……あの……ぜんぶっ、ほんとは……知って……っ」

「雪那」


 一条先輩の出現で安心したのか泣き出す影山さん。これお互いにもういろいろ知っててイベントやってるやつじゃん。実際のところは知らんけど。今までの奴らも知らんけど。

 ただ俺が事情知っててこういうことしてるやつら、高確率でそのあと付き合ってるからそういうことなのだと俺は解釈している。


 ちなみに俺にそういうイベントは一切起きたことがない。クソが。やっぱり顔か? 俺がパッとしないマスコット枠なせいなのか? 秋人なんかより確実に見る目あるんだけどね俺のほうが!


「一条先輩いるなら俺の心配とか思い過ごしかもな! えーと、一条先輩」

「なに?」


 早くどっか行け、という圧を感じる。俺だってこんなところいつまでも居たくないのだが、とどめの一言を告げておかないと後でひどい目に合う。経験則なので言っておく。


「俺、二人の味方っすから!」

「え……」

「じゃっ! 影山さんまたな!」

「えっ、ちょ、か……神坂くんっ!」


 俺は影山さんの努力わかってますよ&でも俺そういう目で彼女を見てませんよ、というのは本当に本当に大切だ。言っておかないと後でうっかり敵対視されることがある。俺を当て馬枠にしないでほしい勘弁してほしい。俺そういうしんどい恋愛に組み込まれたくねーもん。


 至極真面目な話をすると、これらのマスコット役は好きでやっているわけじゃない。なんか勝手にそうなる。俺全然関係ないのになぜかいつも渦中にいる。まあこれは基本的に男友達側(男キャラ側と言ってもいい)のせいだ。


 顔のあるモブというのは、なんなら主軸に組み込まれやすい。本人が恋愛しなくても周囲の恋愛に感づいてキーマンになったり相談される役だったりする。母親所蔵の少女漫画では大体そうだし、俺の役回りはそれに似ている。


 ここは現実世界、俺は特徴のない高校生。本当にそれだけのはずなので世界がおかしいのである。許せねえ。

 好きでやってない。勝手にそうなる。だからうまく立ち回らないとめんどくさいことに巻き込まれる。俺はそれが大嫌いだ。


 秋人と市山が付き合ったのも、影山さんと一条先輩がよろしくやってんのもそれは構わない。今日は乗り切った問題は明日なんだよなあ! 明日腹痛で欠席ってだめかなぁ、と思うが数学で小テストあるって言われてた。だめだ。詰んだ。

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