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ポストアポカリプス・オフライン  作者: 名無しのオプ=アート
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第8話 光る眼

「ダメです。全然相手にされませんでした」


「こっちもです」


「……なんなんだこれは。一体どうなっているんだ」


「どうやって連絡してるんでしょう?」


「まさか、本当に自然発生的に起きているんですか? これが?」


「そんなわけあるか。集会やデモ行進の名称も、許可申請を出している奴の名前だって毎回違うんだぞ? 必ず連絡網があるはずだ」と、『鹿鳴館跡』の碑が側に埋め込まれている壁を男は蹴りつけた。


 2024年3月の第1日曜日、男の目の前を無言で歩いているデモ行進の列は、いつの間にか日比谷公園から東京駅までを埋め尽くしていた。老若男女のデモ参加者がいたが、mRNAワクチン後遺症とされる髪の抜けた参加者の目には、どこか共通する無機質で独特なものがある。


 一度その目を見たら、二度と見間違えることはない。元警察官だった男も、その例えには賛同していた。



 2023年12月になる頃には、日本中で、『mRNAワクチン問題』を掲げたデモが爆発的に増加していた。


 何処の団体も、取り込もうと近付いたり、似たような組織を立ち上げようとしたが、上手くいっているところは1つもない。人が集まっているのは、何の後ろ盾もない単発の集会、デモ行進の一部だけだ。


 人が集まる集会・デモ更新の共通点があるとすれば、その許可申請を出しているのが、COVID-19のmRNAワクチン被害者というだけだ。そして、ワクチン被害者が申請したからといって、その集会やデモ行進に必ずしも人が集まっているわけでもなかった。



 男の所属する与党系NPO法人も、警察官僚出身国会議員の息がかかっており、運動の取り込みを指示されていたが何の手応えもなく、上からの叱責を受けるばかりだった。


 2024年2月までの僅か2カ月で、その運動は大規模なものになり、警察庁、警視庁、公安調査庁のどれもが、誰がこの運動を主導しているのかすら掴めていなかった。



 ファーザー(Father Inc.)かマミー(Mommy,Inc.)かを問わず、COVID-19のmRNAワクチンを三回以上接種すると、全身の体毛が抜け落ちてからのアルビノ化・メラニン色素増加・皮膚の硬化など、一目でわかる外見の変容を遂げる副反応が生じることが知られている。


 世界中で有機フッ素化合物(PFASs)による汚染が一気に問題になったのは、mRNAワクチンの副反応に、PFASsによる影響と考えられる外見の変容があることだ。全身に黄色腫(おうしょくしゅ)、黄色い腫瘤が増殖する事例が多発していた。PFASsの曝露濃度と比例するように、黄色腫(おうしょくしゅ)の発症率も高くなっていた。


 日本国内の汚染地域は、PFASsが、フッ素樹脂を製造する乳化重合に用いられていた為、必然的に人口密集地帯へと集中していた。水撥油剤、界面活性剤、半導体用反射防止剤、金属メッキ処理剤、消化器の泡消火剤、殺虫剤、調理用器具のコーティング剤などの幅広い用途に用いられた。


 アメリカ軍だけを狙い撃ちにしている問題のすり替えだという声もある。



 2000年代にアメリカ国内で問題化したPFASsを、アメリカ軍が日本国内で使用し続けてきたことが、日米地位協定、COVID-19のmRNAワクチン接種問題化、台湾積体電路製造(TSMC)の熊本工場建設、外資系企業による水道事業民営化と関連づけられ、日本国内で最大の政治問題の1つになっていた。


 髪の毛を失い深い皺を刻んでのアルビノ化、メラニン色素増加や、まだら模様になった人々。100歳の老婆というより古木のようになったジャンパースカートの制服を着た女子中学生。見える肌の半分近くが黄色種(おうしょくしゅ)で覆われた小学校低学年の男子生徒。


 無言で歩き続けるデモ行進。集会には参加できても、デモ行進に加わることのできない者もいる。体調が悪くて、集会にすら参加できない人数の方がずっと多い。


 抗議のデモ行進が日本中で始まっていた。それを警備する警察官の表情も硬い。


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