第1話 武漢肺炎(Wuhan pneumonia)
「すると、COVID-19は、アメリカが核兵器の代わりに中国に提供したというわけですか? そんな馬鹿な」
「朝鮮戦争の時にも、毛沢東とスターリンの間で似たような話はあった。……少しは自分の頭で考えてみろ。世界の工場である中国が核兵器を増産したらどうなる? アメリカは、最初から勝つ見込みのないそんな軍拡レースに参加するつもりはない。露天掘りによる放射能汚染で、中国人の放射能汚染への耐性能力も向上しているらしいしな」
アメリカの元エコノミックヒットマンは鼻を鳴らしてみせた。
「四川省での2008年の大地震はアメリカの地震兵器による核関連軍事施設への攻撃だった? 中国政府はアメリカとの核戦争を睨んで、あれだけの鉄とコンクリートを増産したと?」と記者は尋ねた。
「そんなの当たり前だろう? 40億人分のマンションだけじゃない。実際、核シェルターを含めると秘密地下施設なんてどれだけあるかわからない。毛沢東が核兵器に固執していたことは知っているだろう? 原爆実験前に、外交部長は『中国人はたとえズボンをはかなくても、核兵器をつくってみせる』といっている」
元ヒットマンは、その後、日本の失われた30年についての見解を述べた。中国は日本のバブル崩壊を研究したと。
1964年10月16日、東京オリンピック開催中に、中国初の核実験は成功している。アメリカとソビエトの冷戦が終了したから、失われた30年が始まったわけではない。
1972年2月21日、ロック・フェロー・ホワイトウオッシュ第37代アメリカ大統領の中華人民共和国への訪問。この時に、『日本に、独立した外交政策・軍事政策を実行する能力を与えない。日本人には、自主的な核抑止力を持たせない』という両国間での密約がなされた。
元ヒットマンは、「それに独立した経済政策が加わっただけのことだ。冷戦崩壊後、アメリカのバブル崩壊の尻拭いをさせられてきたのは何処の国かな? 日本はアメリカと手を切ったほうがマシだろうな」と締めくくった。
全てはここから始まった。
2013年、イラク・ハサイネン・ナイル2世第44代アメリカ大統領は、国内でのウィルスの機能獲得研究を禁止した。
翌2014年に、メリーランド州ベセスダに本部のある国立衛生研究所(NIH;National Institutes of Health)から、中華人民共和国湖北省武漢市にある武漢ウィルス研究所(Wuhan Institute of Virology)へと、あるウィルスの機能獲得研究への資金、技術の援助をさせるためだ。
そのウィルスでの機能獲得研究への期待は、特定の人種、民族、性別、年齢などを区別してターゲットにできるだけではない。
たった1人だけをターゲットにして殺すことも、最終的には、感染者のマインドコントロールを目指したロードマップまでもが存在していた。
2019年、厳重に管理していたはずのウィルスが武漢市内へと流出する。その結果、中国共産党党内派閥での激しい政争が起こった。
このウィルス流出事件が「善意」によるものであったのかどうかは、もう知る術はない。
それから世界が大きく変わったわけではない。大きく変わったのは人間そのものだった。
2019年12月20日、中華人民共和国湖北省武漢市における原因不明のウィルス性肺炎の発生に関して武漢市当局による発表があった。
この2019年新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は武漢市で初めて検出された為、武漢肺炎(Wuhan pneumonia)という呼称が一般的になる。
2020年1月15日、日本国内で初の新型コロナウィルス感染症患者を確認。1月30日、日本政府は新型コロナウィルス感染症対策本部を設置。
COVID-19とCOVID-19ワクチンは、単に人類史上最悪の死者数を生み出しただけではない。突然変異によって、外面だけが変化した者、内面だけが変化した者、外面も内面も変化した者が現れはじめた。
地球上にいる全ての人類は、COVID-19とCOVID-19ワクチンの影響によって突然変異していたからだ。
純粋な人間と呼べるのは、南極や宇宙ステーションなどで隔離されているのでなければ、冷凍保存された人間の受精卵だけになっていた。
多種多様の突然変異した人間による世界の再構成、再構築の始まりだった。