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⑴『ゴーストに吹く風』
⑴『ゴーストに吹く風』
㈠
答えなど、どこにもない。それは、小説書きの自分が一番分かっているべきことだ、と思うに至り、自分の無知を知る。学校のテストで良い点が取れても、論文などを書く際に、答えがないことは、ー少なくとも文學の世界ではだがー、明白である。
㈡
それにしても、季節的に寒くなって来た。特に、風が吹くと、一層寒く感じるのだ。そうであるから、何か思考も変容し、賞にでも応募する様なものを書きたい、と思うのだが、文學の意識が邪魔して、高みを目指すと書けない。つまり、俺には、書けるものしか書けない。
㈢
この書けるものしか書けないが、非常に重要なのであって、こういう風に書いたら文學の賞が貰えると決まっていたら、皆、それに則って書くだろう。だから、文學のゴーストに吹く風の様に、俺もまたこの寒い季節に、精神が暖まる様な、いわゆる賞を取れる小説を書くことが出来ないのだ。