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軍神の娘  作者: 雨宮玲音
第壱章 越相同盟
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第12話 手習い前編

 年が明けて永禄12年(1569年)6月となった。


 やはり、ここは史実通り越相同盟が結ばれることとなり、人質として上杉家からは上杉輝虎の子供が事実上の後継である、虎ことわたししかいないためかわりに柿崎景家の息子の晴家が行くこととなった。


 そして北条家からは当主の北条氏政の次男の国増丸が来ることなった。まあ、これも史実通りなら来ないな。いや、むしろ史実通りじゃないで欲しいけど。


「長年敵であったはずの北条と同盟を結ぶ日が来るなんて。世の中、不思議なものですね」


「そうだね……。ねえ、お苗、持ち方はこれで合ってる?」


「あっておりますよ。篠笛は左手の親指と人差し指乗っけて手穴の少し左を下から挟んだら、左手の人差し指の指の腹もしくは指の先で手穴を塞ぐんです。でも、まだ姫様の手は小さいので指の先で充分抑えられると思いますよ」


「ふーん……ええっと……こうだね!」


 数えで4つになったわたしは手習いを本格的にやり始めた。姫の役割を果たすために前述の通り「礼法」「歌学」「茶道」「書道」「芸事」「武芸」などをあと大体10年くらいで詰め込むのだ。ただ、わたしは3つの頃に書道と礼法の初級をマスターしたのでまだ時間の余裕はあった。


 武芸の方は父上自らか不在なら喜平次や与六、もしくは新しくわたしの小姓になった直江景綱の婿養子で最近15歳*になったばかりで、来年か再来年ぐらいに元服予定の藤九郎*という男の子が教えてくれることになった。


 これは余談だが、彼は後の直江信綱。彼の妻はお船の方で、与六(直江兼続)彼女の後夫ごふだ。


 まさかわたしの元服前後の10代〜20代ぐらいの文武両道な男児という要望に応えられる人が今後の上杉家の歴史に関わる重要な人だったとは気が付かなかった。彼に関する武将としての資料は正直少ない。


 生まれた年すら分かっていないのでわたしはあまり彼のことは詳しくないが、父上やその義父の景綱曰く「大変優秀で将来に希望がある若者」らしい。一応上杉家の重臣のうちの一人の養子だし父上も信頼を寄せている。優秀な人材だったことには間違えないのだろう。


 話を戻して、2人からはひたすらに木刀を持つように言われた。


 正直ここらへんの知識は学生時代の体育でやった程度で特に慣れ親しみがあった訳でもなかったので大変優秀な2人の指示に従って、この木刀は意外と重くて最初は5秒を待たなかったが今では1時間位は持てるようになったので最近ようやく素振りを教えられた。


 他にも馬術も必要なのでずっと馬に乗せられた。これは景勝、与六や千代丸が馬術になれるためという名目で一緒に乗せられたことはあるが意外と安全で安定していたりする。


 今年から新しく教えてもらうことが増えだ。それが乳母のお苗と一緒にやっている篠笛だ。篠笛や歌学が得意ということらしいので、主に2つはお苗に教えて貰っているという感じだ。


 この時代は楽器を弾ける(吹ける)こと=姫様のステータスらしい。ちなみに弾く楽器自体は正直何でも良かった。父上のように琵琶を弾いてもいいし、普通のお姫様のように琴でもよかったが、お苗がよくわたしに篠笛を吹いて見せたことによる憧れや前者の2つよりも持ち運びがしやすい点、そしてなによりも吹けたらかっこいいからなどという理由から篠笛を選んだ。


「そうにございます! 虎姫様」


「それで、右手はどうするの?」


「右手は小指の腹で1番右側の手穴を抑えます。親指は右側から3番目か4番目の手穴の裏を支える形で抑えます。それで今抑えていない指は手穴の上に指が被さるようにはせずにしてください」


「はーい」


 今はこうして手取り足取りお苗に篠笛の持ち方を教えて貰っていた。とりあえず今日は篠笛に触れて慣れることからだ。


 わたしが手習いに励んでいる間も時代は流れて行った。

*生年不明そのため妻のお船の方より2つ年上と考えて1555年だと仮定しました

*幼名についての資料が見つからなかったため通称から取りました。

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