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Unleashed Antiquer  作者: 圧倒的サザンの不足
存在の章
37/47

反発

「伏せて!エルさん(お母さん)!!」

 自暴自棄に陥り、目の輝きがより一層濃く映るエELVISに、たった一人待ったをかけた。その少女の声にエルは咄嗟に膝を折り、振り下ろされた刃から散る火花を目の当たりにする。

「なぜ私の邪魔をするのですか!アルプスちゃん!」

 燃え盛る炎よりも紅く光る彼女の目に負けじと、アルプス左目が閃光のように白く輝いていた。アルプスもまた、超越状態になっていた。

「エルピスさんが今までどんな辛い思いをしてきたのか、私には分からないけど、お母さんを殺して、嬉しいの?」

「ええ、嬉しいです!スッキリします!清々します!今までずっとずっと恨んでいた相手が無抵抗で私の目の前にいるのですよ?この機会を逃す訳には行きません!だから、今すぐにでも退いてください」

 ELVISの圧力が勢いに現れ、防いでいる死神の鎌が押され始める。それでもアルプスは臆することなく、足腰に力を入れ、エルの盾となって、ELVISの掌握領域内で自由に動いていた。

「なら、退かしてみてよ!お兄やリヒトお兄達みたいに、私を見えない力で押し潰してみてよ!」

 アルプスは余裕の表情で鎌を振るい、ELVISを挑発する。彼女の焦りに曇りゆく表情に、既に勝機を見出していたのか、アルプスは自慢げに微笑みながらその隙を突いて刃を弾き、すかさず赤い刃を地面に突き刺した。

「エルピスさんはもう私を操れないよ!あの時エルピスさんに使った力を私自身に使ってるんだからね!」

「自身に使う……?おいエル、そんなことってできるのか?」

「あぁ、変化の特性を持つ力は基本的に()()()()()()()()、その力を行使できる」

「ってことは、自分の体に指で触れさえすれば……!」

「そういうこと!そして超越状態は常に力を使っている状態!ほんの一瞬でも触れられたら、私はエルピスさんの拘束から逃れられるってわけ!」

 そんなアルプスの機転にリヒトは空いた口が塞がらず、自らを超越状態に持ち込もうと力む。しかし、それに至るほどの強い感情が抱けないのか、中途半端な悔しさで土を握り固めていた。

「そしてこういうことも出来る!!」

 鎌を突き刺した地面にヒビが入り始め、割れ目が枝分かれしながらもどんどん広がりを見せる。伸びていく割れては意思を持っているようで、ELVISの足元やエルの足先にではなく、私の指先へとまっすぐ伸びてくる。

「お兄、一瞬だけだよ!エルピスさんを絶対に落ち着かせるよ!」

 エルの前に立たれ、思うように手も足も出ないELVISにアルプスは左目の光を強める。

「存在乖離!!」

 割れ目から同様の光が漏れ始め、指先に届いてた割れ目からも光が現れる。閃光のように眩い光が指に触れ、ふと、体が軽くなると共に、体が淡い光を纏っていたことに気付く。

 その光はとても弱く、今すぐにでも消えてしまいそうなほど。眩い光に紛れ、エルに切りかかろうとしたELVISの視界の端で大剣を空に向かってほおり投げる。

「一体どこを狙って……」

 アルプスの存在乖離によって思考を読めなくなり、珍行動に見えた彼女の目はほんの僅かだけ剣の行先を嘲笑いながら追う。

 ほんの一瞬だけ彼女の視線を動かせた。それだけで十分すぎる成果だった。彼女は()()()()()()()()使()()()()()()のだから。

 空高く、刀身が太陽の光を反射して輝くのを目の当たりにしたところで重荷が一つ外れる。残る重荷はあと()()。これから私は残り三回、賭けに出る。

 布越しに胸に手を当てると、指先へと向かう血の流れが穏やかな清流をイメージさせる。清らかな河川に、晴天に雷鳴が轟いた。

「存在消滅!!」

 アルプスが与えてくれたほんの僅かな時間、僅かな無駄が大きな命取りになる中で、自らの肉体を風音ひとつしない真っ白な空間へと誘う。消滅世界、血族の力によって消滅させたモノ全てが集結するこの世界で、()に高く、一際白く光る一点が異物として現れていた。

 ()()()()()()に手を伸ばし掴み取ると、自分を幽閉させていた世界が元に戻り、空へ向けて投げた大剣を手にして今にも落下してしまいそうになっていた。

「せぇえりゃぁぁぁああ!!!」

 目を血走らせ、柄を握る手に力を込め、龍にも劣らない雄叫びを上げる。空からの叫びにELVISとアルプス達は一同に空を見上げ、焦燥したり、震撼したり、歓喜したり、驚愕したり、茫然したり……一人だけで良かったのに、五人の視線を集めてしまう。

「先程の大剣はそういうことだったのですか……!」

 刃の真下にいたELVISは純白の翼をはためかせ、飛び上がろうと試みる。

「させないよエルピスさん!」

 彼女の足が地面から離れようとした刹那、地面にヒビを作っていた鎌が背中に向けて振り下ろされる。すんでのところで彼女は反応し、死神が振り下ろした刃を正面に受け止めた。

「ぐっ……邪魔、しないでください……!」

「エルピスさんの手が穢れるくらいなら、いくらでも邪魔してみせる!」

 肉体は落下を始め、ELVISの、翼を露にした背中に向けて太陽に照らされた刃を振り下ろす。

「やはり狙いは私……!」

 サーベルを掴む両手が片方離れ、空からの刃を防ごうと天に向ける。大剣は見えない壁に阻まれ、分厚い空気の壁の向こうに、焦燥に駆られる彼女の顔を見た。

「戦闘経験のない人間など、片手で十分……ぐっ、あぁ!?」

 痛みに上がる嬌声が攻める者の頬を緩ませ、彼女が伸ばした腕が押しつぶされるように、ほんの僅かながらも少しずつ肘を曲げていく。

「掌握領域がッ!狭められてるッ!?何故!」

「エルピスが防いでくるのを待っていたんだ!そしてアルプスが教えてくれた力の反発!」

「まさか、私の掌握領域に存在消滅を!?」

「そうだ!エルピスは今、その力を解いてしまったら自分がやられてしまう、だが、解かずとも領域は私の力によって狭まる!」

「そしてエルさん(お母さん)と私はエルピスさんの力でもう操れない!」

「なら……理仁さんを……!」

 ELVISは遠く離れた場所に目を向ける。アルプスもハッと思い出したかのような表情を浮かべて同じ方向を見る。

「残念だったな姉貴!!」

 自由に腕を回し、首の音を鳴らす彼に胸を縛る茨の鎖は全て解かれた。

「兄貴のおかげで俺も自由の身だ!いくら騎士団長サマと言えど、三人を一度に相手取るなんて、無理だよなぁ!」

「酷く舐められたものですね!多数戦は得意分野なのですよ!!」

 突然、空気の壁が斬れたかのように剣の侵入を許す。それでもELVISは焦燥顔から一転し、余裕の表情となって握り直したサーベルでアルプスの鎌を弾き、直後に大剣を視野に入れることなく横転して躱す。重力を乗せて振り下ろされた大剣は地面に突き刺さり、深くまで抉れ容易に抜くことは出来なかった。

「さて、お遊戯会はここまでです」

「今まで手加減してたってこと!?」

 ELVISは翼を羽ばたかせ、太陽を背に再び私たちを見下ろす。

「アルプスちゃんや伊黎さんの力が私の力にも影響を及ぼすなんて想定外でしたが……何ら差し支えありません。準備運動にはなったでしょう」

「エルピスとは一回だけ剣を交えたことがあったが……まさかあの時も手を抜いていたのか」

「はい、そうです。貴方が作り出した氷で足を封じられた時も意表を突かれましたが、あれは子供の戯れ程度でした」

「はっ、ってことはエルピスの姉貴はこれまでずっと舐めプしてきたってことかよ!」

 彼女は微笑み、蔑む目で見下す。

「ええ、ですが、今は本気です。邪魔する貴方達を排除し、()()()()を殺します」

「へへっ、おもしれぇ……」

「リヒト?なにか策でもあるのか」

「あぁ、どんなやつにも攻略法は必ずあるからな。攻略法のない力なんて、クソつまらんだけだ」

「へぇ、理仁さんは攻略法をお持ちなのですか……教えて頂けませんか?今すぐに対処します」

 リヒトは槍を手放し、自信に満ちた笑みをうかべ地面に手をついた。

「なら、教える訳には行かねぇな!!」

「うぉぉぉ!行くぜ!次回のUnleashed Antiquerは!」

「リヒトお兄の、エルピスさんの存在掌握に対抗する力……?」

「領域内に入ったもの全てを操る力にどうやったら勝てるんだ……空気ですら壁にする力なのに」

「……我から一つヒントだ」

「お、わかったか、いやぁ、散々言ったが流石俺たちの母親だな!」

「ふっ、我が作り出した力だ。攻略できねば我を超えることとなってしまう。それだけは許せぬ」

次回、Unleashed Antiquer 決別

「そんなことより!ヒント!ヒント教えて!」

「まぁまぁそう急かすな、ちなみに、お前たち兄妹やそこのお前の攻略法もあるぞ?」

「え、存在消滅に攻略法なんてあるのか?それはそれで気になる」

「使わせないことが一番だがな!ハッハッハ!!」

「ヒーンートー!!おかーさんヒントおーしーえーてー!!」

「よし、教授しよう。あやつの攻略法は」

「あ、もう時間切れだぜ」

「ちっ、このお母さんポンコツだね」

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