流れ星の行くところ
その日は空が澄み渡ってきれいな夜でした。
子猫のミケは夜のお散歩に出かけます。ミケが空を見上げると、流れ星がひとつ、ふたつ……。
空をたくさんの星が流れていきます。
──ひとぉつ、ふたぁつ、みぃっつ!
ミケは流れ星を数えます。
──よぉっつ、いつぅつ、むっつ!
空にはたくさんの流れ星、とても数え切れません。
ミケは考えました。
──あの流れ星はどこに行くだろう。
と。
ミケは考えはじめるととまりません。
でも、ミケにはわかりません。なので、ミケは黒猫のお姉さんに聞いてみました。
彼女は胸をはって言います。
「あのお星様はきっと海に行くのよ」
「"海"って何?」
ミケは“海"を見たことがありませんでした。
「水がいっぱいあるところよ。たくさんのお魚もいるの」
「お魚!」
黒猫のお姉さんは優しく教えてくれました。ミケは黒猫のお姉さんの話に青い瞳を輝かせました。
ミケにはお魚がたくさんいる海という所がとても素敵な場所に思えました。
「あのお星様は"海"に行くんだね!」
ミケが言うと、物知りなお爺さん猫がやって来て言いました。
「いいや! きっと、砂漠に行くんじゃよ!」
「"砂漠"って何?」
ミケは驚いて目を瞬かせながら尋ねました。ミケは"砂漠"を知りませんでした。
「たくさん砂があるところじゃ!」
「それは砂場ではないの?」
黒猫のお姉さんが尋ねると、物知りなお爺さん猫は首を左右に振りました。ミケも砂場なら知っています。公園で見たことがありました。
「砂場よりももっともーっと広いんだ」
物知りなお爺さん猫は両手を広げて言いました。ミケはまた青い瞳を輝かせます。砂場よりも広い砂漠というところが見てみたくなりました。
「じゃあ、あのお星様は砂漠に行くだんね!」
「そうなの?」
ミケが言うと、今度は食いしん坊なぶち猫がやって来ました。
「僕はあのお星様達が金平糖になるのかと思ってた!」
「"金平糖"って何?」
ミケは"金平糖"を食べたことがありませんでした。
「とっても甘くて美味しくて、幸せな気持ちになる食べ物だよ!」
食いしん坊なぶち猫は嬉しそうに話します。ミケは青い瞳を輝かせます。ミケはその幸せな気分になるという金平糖を食べてみたくなりました。
でも、結局、あの星たちがどこへ行くのかはわかりません。なのでミケは考えます。
──海に行くのか、砂漠に行くのか、金平糖になるのか。
ミケは思いました。
──きっとあの星たちは世界中を旅するのだろう。
と。
ミケは願いました。
──自分も大きくなったら、あの星たちのように世界中を旅をして、知らない場所を見て、知らない食べ物を食べたい。
と。
すると星のひとつが大きく瞬いて流れていきました。