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殺人鬼は少女に恋をする:前

 皆様こんにちはこんばんは、遊月奈喩多と申す者でございます! 突然ですが、日曜日といえば何だと思われますか? そうですね、ヒーローものですね(今も日曜の朝がヒーローものの時間なのかは不明です)


 とうとう最終章に突入しました!

 梨田と美玲を付け狙う影が、遂に動き出す……?


 それでは、本編をお楽しみください♪

梨田(なしだ)さんは、何者なんですか?」


 静寂の支配する病室で、美玲(みれい)が尋ねる。

 シーツを握る手は小さく震え、その双眸は梨田の──いや、梨田の奥に潜む何かを捕らえようとするようにまっすぐ、突き刺すように彼の瞳を見つめている。

 美玲の心には、微かならぬ恐怖があった。


 いつも優しくて、何でも話してくれて、どんなことがあっても傍にいてくれるこの人がこんなにも隠そうとしていることは何なのだろう? それを知ろうとすることで、もしかしたら今の関係は終わってしまうのかも知れない、と。

 しかしそれでも、だとしても。

 たとえ彼が何者であっても、それを知りたい。

 それを知るのは他の誰でもない、自分がいい。

 いずれ多く知られるとしても、最初は自分が。

 そしてできることなら、自分だけの胸の中で。


 恐怖は、梨田との関係が変わってしまうことだけではなかった。美玲は、温かくて愛おしいこの時間を終わらせてでも得たいものが自分にあったことを自覚するのが恐ろしかった。

 梨田といる時間で、美玲は安らぎを得ているのだと思っていた──父以外の男と遊び、そのことに気付いている自分に対して身も心も凍えてしまうような感情を抱いている母のことを忘れられる、心が満たされる時間なのだと思っていた。

 しかし、いつの間にか変わっていた。

 美玲のほしいものが、変わっていた。


 そのことに気付いているのか否か、梨田が美玲を見つめ返す瞳はひどく静かだった。じっと何かを噛み締めるように、透き通るような暗い瞳が美玲を捉える。飲み込まれていいとすら思いながら、美玲は彼を見つめ返していた。

 それは、静寂を(まと)った短い永遠。

 黙したまま移ろう時を、鼓動が律儀に刻み続けて。


「お加減いかがですか?」

 やがて看護師の声が、ふたりの空間に終止符を打った。

 そのままあれこれと尋ねている看護師と、それに淡々と応じる梨田の姿を見ながらそっと病室を立ち去った美玲の胸は、まるで生まれたての星にも似た熱が煮えるように渦巻いていた。

 それからも美玲は何度か梨田の見舞いに訪れはしたものの、ぎこちなくしか話しかけることができなくなってしまい、それまでの温かさを感じられなくなってしまって……。

「僕は僕だよ、美玲ちゃんの知ってる梨田だ」

 とうとうそれ以外の答えを聞けないまま、退院の日を迎えたのだった。

 そして。


『殺人鬼再び』

 その一報が世間を騒がせたのは、梨田が退院してしばらく経った頃だった。


   * * * * * * *



 刑事・蘆部道明(あしべ みちあき)は事件について懇意にしている記者にこう伝えている。蘆部と記者の塚前泰造(つかまえ たいぞう)はお互いがお互いの情報屋のような関係で、持ちつ持たれつで長年うまくやってきた間柄だった。

「酷いなんてものじゃあなかったよ、あれは。化野(あだしの)の奴ァ子どもをオモチャか何かと勘違いしてやがる。鑑定によりゃあまず首絞めて殺したらしくてよ、それから頭ァ切り落としてそこに両腕を()じ込んで、その頭はなんと腹ん中だ、ご丁寧に縫い合わせてやがるんだから腹立たしいのなんのって……!」

 殺害された児童と似た年頃の孫がいるために興奮しすぎたのか、怒りに顔を赤くしながらゲホゲホと()せ返る蘆部の背を擦りながら、塚前はふと思った。


 何かが、以前の化野とは違うような気がする……。


 しかしその微かな違和感は、スクープにありつけそうな予感の前にはあまりに些細で。次の瞬間にはこの話がオフレコだという約束をうまく反古にする口実を考える忙しさに、違和感など跡形もなく消え去っていた。

 前書きに引き続き、遊月です。今回もお付き合いいただきありがとうございます! お楽しみいただけていましたら幸いです♪


 今回はtendencyにしては珍しく超次元格闘のないお話となりましたが、嵐の前の静けさというものだと自分では思うことにしております。次からきっといろいろ始まりますので、何卒よろしくお願いいたします……!(何を?)

 ということで、また次回お会いしましょう!

 ではではっ!!

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