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暴虐の正義・中

こんにちは、遊月です!

日曜日はヒーローの曜日ということで、今回もヒーローアクション・ストーリー、更新です!


是非お楽しみください

本編スタートです!!

 ドナルド・コルテッサロには、赦せぬものがふたつあった。

 ひとつは益を成さぬ理不尽な暴力。正義のない力など赦されていいはずがなく、誰かの手によって妥当されなくてはならぬ悪だった。

 もうひとつは、幼子を自分の快楽のために痛め付けるような(やから)。幼子は世界からの愛と祝福を一身に受け、慈しみとともに育っていくものだというのがドナルドの信条だった。そのため、彼は幼い頃から児童を守るための力を欲し、手に入れていた。

 まだ初等部の学生だった頃には、誘拐した幼子を愉しげにいたぶった挙げ句アルコールランプで火をつけた大学生数人を相手取って辛勝し、中等部に上がる少し前には片想いしていた少女の脚を切断した男たちを半身不随になるまで叩きのめした。

 中等部に入った頃には妹のように可愛がっていた近所の娘を拉致・解体した学者を同じ目に遭わせてやった。その後も速さと力を追い求め、とうとう犠牲者を出す前に不埒な者たちを成敗することができるようになった。


   * * * * * * *


 近所の子どもを拐おうという企みをドナルドの拳によって挫かれ、現在も医療刑務所で服役中の吉岡(よしおか)正蔵(しょうぞう)はかつて、ここに入る前のことを尋ねられたときにこう語った。


『最初は、台風でも直撃したかと思ったんだ。けど、外はよく晴れているし、風だって穏やかなもんだった。雷雲だってなかったし、いや雲ひとつなかったんだ。けど……やつがいたんだよ。

 痩せっぽちで、どこにでもいるようなサラリーマンだった。けど、そいつの姿を一瞬だけ見たあと俺のダチ公は首から下だけになってて、俺自身も両手両足……っ』


 この言葉を最後に、吉岡は再び錯乱状態に陥った。

 四肢を綺麗に切断された状態で発見された吉岡は、今もまだ“痩せっぽちのサラリーマン”に恐怖して暴れている。それを鎮静剤で眠る間際、看護師は妙なことを聞いたという。


『やつが、やつがまた暴れる! やつがっ、嵐がっ、窓閉めろ、窓! いやだ、風があいつになる、風があいつになるっ!』


 (じか)に聞いた看護師も含めて、その意味を理解できるものは誰もいなかった。


   * * * * * * *


 ドナルドは思わず歯軋りしそうになった。

 彼の視界には、緑川(みどりかわ)を名乗る青年から見せられた写真と瓜二つの男が歩いている姿が映る。確かに教えられた通りだ、この場所にいたのだ、あの卑劣にして最低最悪の殺人鬼――化野(あだしの)義明(よしあき)が……!

 隣にいるのは年端もいかぬ少女のように見える。なんということだ、よりにもよって化野は、また幼子を殺めようというのか!?


 見敵必殺(サーチ・アンド・デストロイ)


 学生時代にドナルドが代表を勤めていた自警サークルの、唯一にして最大の会則がそれだ。街の無法者たちを数多屠り、千切り、撒き散らし……、時々は逮捕者も数人出るようなサークルだったが、ドナルドの課した訓練(トレーニング)を経た会員たちは皆、誇りに満ちた顔で収監されていった。

 そう、何も恐れてはならない。

 敵を見たら躊躇してはならない。

 一瞬の躊躇が、大切なものを傷付ける。傷付けさせてしまう、泣き声を上げさせることになる。そんなのは、もう繰り返すべきではないのだ――――!


 一陣の風が、路地裏をそっと流れた。

 柔らかな風にふわりと舞うように、肉片が宙を舞う。


「くっ――――――!?」

梨田(なしだ)さん!?」


 苦痛に(うめ)きながら屈み込む化野に、傍らの少女が悲痛な声すらあげながら寄り添う。梨田……それもまた、緑川から聞いた、化野の偽名だった。

「どうしたの、ねぇ、梨田さん! あの、え、どうしたの!?」

「……心配はいらないよ、美玲(みれい)ちゃん。このくらい大したことないさ……っ、ちょっと、眩暈(めまい)がしただけだよ」

「そんなっ、眩暈なんて違いますっ、だってっ、え、血が……!」

 あぁ、見ていられない。

 ドナルドは、たった今通り過ぎた(、、、、、)ふたりのもとへと戻る。やはり、子どもの泣いている顔などとても見られたものではなかった。その足音に気付いたのだろう、化野の傍らで無力に泣いていた少女が、「助けてください!」とドナルドに乞い始めた。


「あ、あのっ、この人わたしのお友達なんですけどっ、きゅ、急に、怪我しちゃって……すっごい苦しそうで、だから、あのっ、たす、」

 あぁ、なんて可憐なのだろう。

 こんなにも穢れなく、他人のことを真摯に想えるような娘が、果たしてこの世界にあとどれほど残っているだろうか? 左腕から血を流している、端正な顔立ちをした男の正体など、まだ微塵も知らないに違いない。


 どうか、その清らかさに祝福あれ。

 ドナルドは、胸を満たす熱を伝えるように、ミレイと呼ばれた少女の頭に手を乗せる。柔らかく、サラサラとした髪だ。


「安心してください、お嬢さん。この男性のことは私に任せておいて。あなたもどこかで休んだ方がいい。きっとこの人もそれを望んでいることでしょう」

「あぁ……、今日はおうちに戻っていて。最近あんまり遊べてないな、ごめんよ。また今度、たくさん遊ぼうね」


 自分の言葉に同調するように弱々しく言葉を紡いだ化野の姿に、ドナルドは一瞬(ひる)んだ。

 何故、言葉を話せる?

 そもそも生きていること自体奇跡に近い確率だというのに、更に意識もはっきりして、言葉も話せているだと!? 方便のつもりで言ったことに本人のお墨付きを貰う形になったのは初めてだった。

 この男……ただ者ではない!

 ドナルドは、全身の緊張を解く――脳の信号を受け付けられる感度を残したままに。すぐに動く……脊髄の辺りに脳を落としていくイメージを重ね、反応速度を極限まで高めていく。こんなに本気になったのは、人肉の味に取りつかれて自らの教える生徒たちを次々と喰らっていた教師を相手取ったとき以来か。


 ミレイが去ったあと、ドナルドは開口一番尋ねた。

「どうやって避けました? 私はオマエの心臓を狙いました」

「そうだろうね、殺気があまりにも正確だったよ。だから軌道の予測もついた――それでもあまりに速すぎて避けきれなかったけどね。彼女を巻き込むことになる」

 先程までの苦しげな表情が嘘のように平静な声で、化野も応じる。なるほど、重傷に見えたのすら演技だったのか――ドナルドは苦笑する。

 そして、再び構える。

 先程までとは違う、暴風のような荒々しさを秘めた構え。ひとたび解き放たれれば、この近隣の住宅は薙ぎ倒されてしまうような、暴力的な闘志。

 それはひとえに、ドナルドの強すぎる正義感から生まれたものである!


「何故、子どもを殺しましたか?」

「愛しているからさ。今は本当に愛しているひとがいる、だから誰も殺す必要なんてない」

「なるほど」


 最後の問答は、数秒。

 しかし、それで十分だった。


 風が、吹き荒れた!

前書きに引き続き、遊月です!!

ドナルドのあまりにも強い正義感、そして梨田さんの強い愛情、勝つのははたしてどちらなのか……


また次回お会いしましょう!

ではではっ!!

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