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名もなき怨讐の影・中

こんにちは、遊月です!

日曜日はヒーロー曜日! 日曜日はヒーロー曜日!

ということで、過去最恐の敵になりそうな吉田栄一が今回のメインです


本編スタートです!!

 秋が訪れようとしつつもまだ暑さの残る、夏の最期を思わせるその路地で、吉田(よしだ)栄一(えいいち)は仇敵とも言える男と対面していた――不出来な息子を見限って代わりに手塩にかけて育てた、完全なる自分の後継者になるはずだった孫の栄嗣(えいじ)を殺した男、化野(あだしの)義明(よしあき)と。

 孫には全て教えていた、強いリーダーであるための立ち居振舞い、自らに歯向かう者のわからせ方、敵を社会的に抹殺するための根回し、欲した相手の組み敷き方、より優秀な人間を手元に置くための手法、そしてそれを逃がさないための情報収集術……若い頃から(つちか)ってきた吉田なりのノウハウを、すべて、まだ栄嗣が幼い頃から教え込み続けた。

 抵抗する孫に対して折檻を加え、時に加減を誤って骨を折ることもあったが、亡くなる前の1、2年はとても従順に自分に従い、教えたこともよく吸収していた。あてがった女のこともよく(しつ)けていたようだし、まだこれからだったというのに……! 化野と対峙して、改めて吉田の胸中には孫を殺された悲しみ、そして己の快楽のためにそのような凶行に走った目の前の男への憎悪が膨れ上がっていた。


 だが、その前に。

「化野よ、ひとつ訊かせてくれ」

「……僕は梨田(なしだ)ですが、化野なんていう指名手配犯がもしあなたの質問に答えると仮定して――という形で、お答えしますよ」


 言いよる――と嗤いながら、吉田は目の前に立つ男を見つめる。

 先ほど一緒にいた娘について言及したからだろう、化野の(まと)う空気は娘といたときとはまるで別人のような冷たさを帯びていた。対して、吉田は少しずつ、急速に頭の冷えていく自分を感じる。周りを見れば、腕利きで名の通っていたはずの私兵たちがいずれも重傷を負い、あるいは命を落として横たわっている。私兵たちの加減など、家族や恋人を人質にとっている状況では考えられようもないし、単純に目の前の男があまりに強かったのだと、吉田は理解していた。

 孫を殺された憎しみは孫を殺された憎しみ、しかしそれと同時に。

「貴様、私の部下になるつもりはないか? ここで横たわっている屑共よりはいい待遇の手足にしてやれなくもない。命の保証だって、もちろんしてやるぞ? 警察の手からももちろん逃がしてやるさ。代わりなどいくらでも用意してやるから」

 吉田は、相対した化野の技量を買いつつもあった。

 憎しみはもちろんある、この手でその身体を17の肉塊に切り分けたとしてもはたしてこの感情が治まるものか、わかりようもなかった。しかし、それでもこの男は今まで雇ってきた者たちが束になってかかっても勝てないほど強く。


 そして、それでも尚、自分の御しきれない男ではない――そう確信していた。


 吉田栄一という男について、かつて彼の情婦であったと噂される若き実業家・島崎(しまさき)八恵(やえ)はその自伝のなかで、人間から逸脱したものと語っていたことがある。

 齢90を超えて尚衰えぬ体力、思考力、豪運。

 威厳に関わるとしてそのような姿を見せることなどないが、本気で走れば今でも1kmを3分切るスピードで走り、その片手間で新興国における国策についてアドバイスできるに違いない、彼を知る者の多くが、何の疑問もなくそう言えるような人物だ、と。


 事実、先日もプライベートで持っている山のなかに侵入した野生のツキノワグマ3頭をただひとりで、しかも武器すら持たずに仕留め、ジビエ料理だなどと言って役員たちに振る舞っているし、海外の愛人を訪ねる飛行機で遭遇した武装ハイジャックグループにも、その心身に介助なしでは生きられなくなるほどのダメージを負わせたというのも、まだここ数年以内のことである。

 そう、吉田の本当の恐ろしさは、その有り余るほどの力であった。世が世ならば、彼は武器すら持つことなく天下を治める存在になっていただろう。


 その吉田が、化野をスカウトする。

 断る選択肢など、通常ならばあり得ない。そう、通常ならば……しかし!


「せっかくのお話ですが、お断りします。僕はあくまで、先程あなたが辱しめる発言をしたあの少女を護るために生きているので」

 毅然とした態度で、化野は断るのだ。

 いや、その眼差しは吉田をして『梨田』と呼ばざるを得ないほどの輝きを帯びていた。吉田は愉快そうに「そうかそうか」と頷く。わかっていた、この男があの少女にどのような感情を向けているのか、見た瞬間にわかった。

 以前、写真を見たときに感じた、獣でも見ているような感覚は、もうなかった。この男は、ずいぶんと人らしくなった(、、、、、、、)


「ならば、思い残すことなく殺してやろう」

「なら僕は、全力で抵抗するだけだ」


 短い応酬のあと、吉田の足元で、アスファルトが砕け散った!!

前書きに引き続き、遊月です!

吉田翁のスペックが異常なことになっておりますが、はたして梨田さんは勝てるのでしょうか?


また次回もお会いしましょう!

ではではっ!!

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