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76. 使い魔、増?

 ごまかされてる感じがすごくある。


「このかっこ、アウトなんじゃないの?」


 両手を広げて自分の状態を示す。


 露出的には普通の範囲内にしっかり収まっているようには見えるけど、実はキャラの性格が男子的にはよくても女子的には最悪とかそういう可能性だってある――「必ずしもエッチじゃない」ってことは、ストーリー展開によってかなり自由がきくゲームなのかもしれないし。


「アウト、ってどういう意味ですか?」

「実際に着るなんてあり得ない、ってこと」


 タイガくんが目をぱちくりさせた。


「あ、え、それは、性格によるかと思いますけど。アイリーンさんは美少女ゲームだって知らなかったんですし、この制服自体はかわいいし、ありだと思います。美少女ゲームのキャラだって知ってて、美少女役をやったら、イタい人の可能性もありますけど……似合ってると思います。あの、でも、その髪型は……いえ、何でもありませんっ!!」


 最後だけまたすごい勢いで早口になったのが気になって振り向いたら、イザムがかな~り胡散くさい笑顔で真後ろに立っていた。その胡散くさい笑顔になる前に一瞬ものすごい冷笑が見えたような気がしたけど、一体何だ。


「ね? 普通の恋愛ものだし。タイガも似合ってるって言ってるし、ご飯にしよ?」


 そう言ってわたしに向けたのはニコニコ笑顔だけど、それをされるほど、信用できない感が高まる。


「なんか、ごまかされてる気がするんだよ……」

「気のせい気のせい」


 タイガくんは髪型がどうのって言ってた。

 別に普通のハーフアップなんだけど。

 何がいけないのかわからないまま、席に着くまえに髪の毛を一つにまとめて捻って、胸ポケットのペンを簪代わりにして留めてみた。


「あ」


 それを見てタイガくんがちら、とわたしの襟足に目をやって、それからイザムを見てなぜかほっとしたように息を吐いた。


「何? これもダメ?」


 まとめたのもダメなのだろうか。そのゲームには中学生の時みたいに「肩についたら黒いゴムで結ぶこと」みたいな校則でもあったのだろうか。そう思って聞いてみた。


「いえ、なんでも、ありません」


 顔を真っ赤にしたタイガくんが、急いでそう答えた。


「見るなよ、バカ」


 不機嫌そうにイザムが言って、自分も座る。


「すみませんっ」


 って、また慌てたようにタイガくんが言って、席に着く。


 何なの、この会話。

 わたしとアルフレッド様だけ、あきらかに置いてきぼりだ。


「何を見るな? 何が変なの?」

「いいの。アイリーンは変じゃない。かわいい」


 イザムは断言してるけど、わけがわからない。


 蝙蝠の給仕さんがお料理を運んできてくれて、そこでわたしの格好についての会話は中断になった。


「今日は、シュヴァルツとシルバーとイアゴと一緒に山に行ってきたんだけど」


 みんなに料理がいきわたったところで、イザムが話し出した。無理やり話を変えられた感じが否めない。


「旅に出ても、俺とアイリーンはちょくちょく向こうに帰ることになるから――基本的に俺たちは領地の屋敷から向こうの世界と行き来してるんだけど、そうなると旅先から領地に戻るまでに国境をいくつも超えることになって、ひどく大回りになるし時間もかかるんだよ。それはわかるよな? 

 山を挟んで正反対の国に向かう場合だと、のんびりしてると滞在時間がほぼないか、たどり着かない可能性も高い。転移陣も距離が遠いほど負担が大きいから、あまり多用したくないんだ。

 だから、俺たちに関しては遠い国に行く時は基本的に山を越えることにしようと思って」


 ぐ、とアルフレッド様が息を詰まらせた。


「え?」


 タイガくんが首を傾げる。


「山って、この陸地の真ん中にあるっていう、あの山のことですか? 僕、山には強い魔物がいるから近づかないようにって言われましたよ? 山の中心はいつでも真冬ですごく寒いし、ドラゴンの棲家だって」

「そう、その山」


 しれっと言い放って、イザムが続ける。


「ヴェッラさん、それにことによったらタイガもだけど――そっちはこの世界に永住する可能性が高いんだし、この世界の中はともかく現実との転移は場所もたぶん自由なんだろ? どの国にどれだけいようがそれも自由だし、感覚が狂うことについてもそんなに心配しなくてもいい。だから道中も楽しみながら普通に馬車で移動するのがいいと思うんだ。荷物も運べるし。

 だけど俺とアイリーンについては少なくても一週間に一回くらいは向こうに戻りたいから、別行動をとらせてもらいたくて――できればその時は現実に戻る前に一度山を抜けて領地に戻りたいんだ。幸い領地はこの国でも最も山側だから距離的にもその方が近いし。でも山にはドラゴンがいるしけっこう広いし、いちいち邪魔されてたら面倒だろ? だから今日はちょっと山に行って交渉してきたんだよ。で、いろいろ相談した結果、山の中を安全に運んでもらえることになった。

 まあ、使い魔みたいなものだよ。そのうち会うことになるだろうから、そのつもりでいて欲しい。用がないときは呼ばないけど、あいつらは基本的に怒りっぽいから、見かけても不用意にからかったりするなよ。黒こげにされる可能性が高い」


 それでよれよれになってたのか、と合点が行った。つまり、「ちょっと」いろいろ「相談した」結果だ、っていうところに関しては信憑性がゼロだってことで、よれよれになるくらい何かやらかしてきたってことだ。

 それが体力や魔力が減っていた理由――。

 そして、使い魔「みたいなもの」ってなんだ。そのいい加減な説明は。


 それでも今日どこに行っていたのかとその理由がわかったら、申し訳ない気持ちになって、さっきのセクハラとこのわけのわからない制服のせいでモヤモヤしていた気持ちが少し小さくなった。


 わたしたちが領地から転移する理由が、わたしだから。


 どうもわたしは転移が苦手で、すぐに『酔う』。異世界内での転移も、現実との行き来も苦手だ。もっとも異世界内での転移はできない人の方が多いらしいんだけど。

 今のところ一番負担が少ないらしいのが、イザムの領地の屋敷からの出入りだったので、現実への行き来をする時は一度領地で体調を確認した方がいい、ということになったのだ。


 でもだからって、山を抜けるとか、ドラゴンを使おうとか、そういうことになるとは思っていなかった。


「ドラゴンってそんなふうに使えるんですね~」

 タイガくんが無邪気に目を輝かせた。

「僕、見たことないんで楽しみです。早く見たいです」


 アルフレッド様の方は、青い顔になった。


「私はできるだけ会わずに済ませたいです。命は惜しいので」


 タイガくんが驚いた顔になる。

 わたしの方はそこまで楽観的でも悲観的でもないけど、やっぱり心配にはなった。 


「シルバーとイアゴ、怪我したりしてない? 大丈夫だったの?」


 イザムとシュヴァルツさんが返ってきた時の様子を思い返す。シュヴァルツさんは衣服に乱れがあった程度に見えたけど、イザムがあれだけ大急ぎで現実に帰ったことが気にかかる。けっこう大変だったはずだ。


 イザムが元気なのはわかってるけど、叩いたりして悪かったかな――って思う。本当はかなり不安定になってたり――したのかも。


 そんなことを考えたわたしの顔を見て、イザムが表情を緩めた。


「二人とも怪我と火傷は魔法で治しといたから大丈夫だよ。そのせいでここに帰ってきた時のMPが少なくなってたんだ。

 シルバーは、ちょうど毛が生え変わる時期でよかった。一カ月もすればきれいに生えそろうから。イアゴは今回よく働いてくれたから休みをやった。じきに戻るだろうけど、実家で今回の武勇譚を聞かせて、前回は鱗をゲットしたんだっていう自慢話をして、文字通り羽を伸ばして来るってさ。

 シュヴァルツが無事なのは見ただろ。念願の仕返しができてご機嫌だった。あいつが棲家をドラゴンに壊された話は前にしたよね? シュヴァルツは俺の友人だから、そういう意味では今回やられたドラゴンよりは立場が上になったし、鼻歌でも聞けそうなくらいにご機嫌だったよ。

 馬車の準備もできたし、移動手段も確保した。予定通り出発は明後日――王様が「城から派手に出発しろ」って言ってるから、明日の夜は城に泊まるけど、朝には出発するからそのつもりで――アイリーンはドラゴンに挨拶に連れて行くから、明日の日中の予定は空けといてね。

 それからアルフレッドは城に連絡してもらえるかな。お城にあるできるだけきれいな珠――なるべく大きくてよく光るやつ――を、明日の朝一でもらいに行くから準備しとくように、って。災厄を祓うための旅に使うアイテムだから、くれぐれもケチるなよ、って」


 王子様なのに使い勝手のいい伝言係のような扱い――だけど、アルフレッド様はまったく気にしていない様子で頷いてくれた。

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