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そして少女は空に立った

作者: 秋澤 えで

初めてのSF

若干百合風味

 「ねえシイナ、タピオカって知ってる?」



 同期のリアが突然私に耳慣れない言葉を投げかけた。



 「たぴおか?なにそれ。流行ってるの?」

 「あっはは、まさか!図書館で見たんだよ。ずうっと昔流行ったんだって」



 ケラケラと笑うリアの手にはなるほど一冊の本があった。新しいもの好きのリアにしては埃臭い図書館に行くなんて珍しい。それも遥か昔の文化に興味を持つなんて、明日は槍が降るかもしれない。



 「どうしたの急に。らしくもない」

 「いやさ、昨日の課題でJKの歴史を調べるのってあったじゃん?」 

 「え、そんな課題……、違うでしょ、課題は課題でも補講のでしょ。この前リア実践さぼってたし。」

 「真面目なシイナちゃんは他人にも厳しのネー。まあそれはそれとして」



 なにか課題を忘れていたのかと内心焦ったけどそんな課題は出ていないと胸を撫でおろす。リアは何かとさぼり癖がある。本人曰く要領がいいとか無駄を嫌うとか言ってるけど、本当は興味ないことをしたくないだけだ。それも実践嫌い。ジト目で見るけれどまるで堪えた風もない。



 「それで図書館のPCでJKの歴史について検索したらこの本が出てきてさ」

 「たぴおかとJK……?聞いたことないけど何かの兵器?」

 「んふふ、それがさ、飲み物なんだってさ」

 「飲み物?」



 聞いたこともない飲み物だ。今日までその飲み物が残っていないということは、多分そんなにおいしくなかったのだろう。嬉々としてリアが本をタップする。



 「画像データあるの?」

 「あるよー。昔って言っても200年位前だし、そのころのデータくらいなら残ってるっぽい。明治くらいかな?」

 「200年位前なら平成とか令和くらいでしょ」

 「さすがクラス1の秀才―、ほら、出たこれこれ」



 データの読み込みが終わりポンというキャッチ―な音と共に画像が浮かぶ。



 「……川の水とカエルの卵……?え、平成とかって衛生とかガバガバだった?水の浄化もできないほど文明レベル低かったっけ?」



 浮かび上がったのはカップに入った泥水とそれに沈む黒い丸い物体。どこかの部族の食べ物といわれた方がまだ納得できる。思わず目を疑うが、その”たぴおか”を持つ少女たちの格好は装飾は多いが身綺麗で、旧時代を感じさせる制服を着ていることから日本だということはわかる。そして背景に映り込む無駄に背の高いビルは平成や令和の様式を感じさせた。おかしいのは彼女たちが手に持っているものだけだ。



 「なんかコラージュみたい」

 「タピオカドリンクっていうんだって。ミルクティーにタピオカっていうゼリー?みたいなものを入れてるんだってさ」

 「え、私の知ってるミルクティーじゃない。ミルクティーなのに茶色なの?」



 今のミルクティーといえば専ら白色だ。にも拘わらず彼女たちが手にしているのは茶色に濁っている。こんなものを飲みたいと思う気が知れない。何よりミルクティーなんて嗜好品、私たちの年代の少女の手が届くような代物じゃない。


 「昔の紅茶って色がついてたんだよ。今の紅茶は全部透明だけど、紅茶って紅のお茶って書くでしょ?」

 「な、なるほど……、でも牛乳は?とてもじゃないけど子供の買える値段じゃないじゃない」

 「昔はそう高くなかったみたい。戦争が始まったあたりから高騰したからね。それに低脂肪乳とか代用品もあるからその辺使えばそんなに高くつかなくない?」



 私の顔をみてニンマリとするリアにばつが悪くなる。

 勉強ならクラスで一番だ。実践だって悪くはない。それに比べてリアは不真面目だし勉強嫌い。でも風俗に関しては私なんかよりずっと多くのことを知っている。

 たぶん私たちは人種が違うんだ。私は今の時代をスマートに生きる方法をとる。けれど彼女はたとえ無駄でも自分の興味があることや楽しいことをとる。

 私は私が間違っているとは思わないけれど、彼女の生き方がほんの少しだけ羨ましかった。



 「んふふ、こういう話するときだけシイナのそういう顔が見られて私は嬉しいよ。風俗史なら任せて―」

 「風俗史なんてわかんなくても生きていけるし……」

 「わかんないとタピオカミルクティーのことを泥水やらカエルの卵とか言っちゃうんだよ?こういうもう廃れたものっていっぱいあるし。わーシーナちゃんてば恥ずかし―!」

 「黙って。」



 浮かび上がった画像をスライドすると”タピオカ”の説明文が出てくる。

 キャッサバという芋からできていてモチモチとした食感。高カロリーで”ラーメン”と同じくらいのカロリーがある。ずらっと出てくる画像の一覧には一様に少女たちがタピオカドリンク片手に笑顔を向けていた。もう随分と古い画像で、ちらほらとノイズが混じるけれど、彼女たちの笑顔は眩しかった。可愛いと賛美され一世を風靡した飲み物らしいが、あいにくその可愛いには共感できそうにない。



 「タピオカミルクティーね……、」



 しかしふと気が付く。

 JKが作られたのは100年ほど前。JKと調べて平成時代や令和時代の画像がヒットするわけがないのだ。



 「ちょっと待って、これJKと関係なくない?JKの歴史について調べてたんでしょ?」

 「うん、私たちのJKとこの子たちのJKは意味が違うんだって」

 「じゃあなんのJとK?」



 時代さえ気にしなければ彼女たちも私たちと同じJKに見える。十代の年恰好、カチッとした制服は私たちとよく似ている。



 「この子たちは”女子高生”っていうんだって」

 「じょしこーせー?」

 「高等学校に通う女の子たちをそう呼んだんだって。女子のJと高校生のK。もとは売春の情報交換で使われた隠語だけど、だんだん浸透して世間一般でJKって呼ばれるようになったんだってさ」



 じょしこーせー、説明を受けて女子高生という変換ができた。女子高生ならば知っている。かつて日本にあった教育機関、高等学校に通っていた少女たちの総称だ。女子高校生、女子高生、JK。なるほど省略するのが大好きな日本人の精神は昔から変わらないらしい。



 「ふうん、女子高生でJK、ね」 

 「平和な時代だったんだねー。きっと誰でもミルクティーが飲めて、好き勝手おしゃれして、学校帰りに買い食いしてたんだよ、きっと」



 とんとん、と彼女が本をタップするとあれこれとその時代の画像がヒットしていった。当時流行ったアーティストの画像、SNSと呼ばれた自由な情報交換の場、フェス、華やかで鮮やか。何もかもお金がかかってそうで、画像に映る人たちがみんな笑顔だった。



 「うらやましい?」

 「そりゃね!楽しそうじゃん!今のJKより200年前のJKに生まれたかった」

 「……そう言うこと教官の前とか先輩のいるところで言っちゃだめだよ」 



 夢中になって当時のことを調べるリアに一抹の不安を覚える。

 まるで今のJKを全否定するみたいだったから。そんなことを誰かに聞かれたらどうなるかわからない。



 「シイナだけだよ、こういうこと言うの」

 「……うん」

 「私、嫌だよJK」



 らしくもなく、リアは小さな声でいった。



 「もうすぐみんな死んじゃうかもしれないんだよ」

 「……勝てば、生き残れるよ」



 始業5分前のベルが鳴る。

 画像を消し、本を鞄の中に入れた。

 午後からは追尾型ミサイルの実射訓練だ。



 「……いつかタピオカ、食べてみたいね」

 「……そうだね。ダメでもさ、ゼラチンとかでそれっぽいの、作ってみようよ」



 もし紛い物を作れたとしたら、私たちは画像の中の少女たちと同じように笑えるだろうか。それとも虚しさにそれをダストシュートに放り込むのか。


 自衛国防機関機動部隊訓練生、通称JK。

 私たちは来週末、全部隊全戦力、文字通りの総力戦で特攻をかける。

 終末はもうすぐそこだった。




******************************************




 この国は100年以上前から戦争が続いている。

 相手取っているのは遥か空から襲来する地球外生命体だ。かつて人々は空には天がいると信じていた。遥かな空には自分たちとは違う生き物がいるとしていた。しかしある程度化学が発展すると宇宙には生命体がいないとした。いわゆる宇宙人だとかは空想上のものとして扱っていたのだ。それが一番の間違いだったと気づいたのはもう手遅れになったあとだった。


 D-アストロロギア。

 それが彼らの総称だ。


 地球に生きる私たちとは比べ物にならないほどの技術力を持ち、圧倒的で絶対的な力で私たちを蹂躙する。ダイナマイトも毒ガスも彼らには効かず、最終兵器ともいえる核ミサイルでさえ、彼らの乗った船に傷をつける程度しかできなかった。


 戦争の始まった当時、真っ先に降伏し和議を結んだのは最大の武力と技術を持つはずの米国だった。彼らは戦争の始まる前から彼らの存在を知っていて独自の調査を進めていた。そしてそのうえで、技術や武力で彼らを上回ることができないと早々に判断を下したのだ。ある意味あの国にとっては来るべき時が来たとしか思っていないのかもしれなかった。


 彼らにD-アストロロギアという名を宛がったのも彼の国だ。当時では襲来した生命たちとが取れたのが米国だけだったというのもある。一時的に彼らの代弁者という役割をとった。


 しかしD-アストロロギアという生物はどこまでも無情だった。彼らが欲しがったのはこの地球にある環境資源、そして人的資源だった。彼らは人口の多い国におよび環境資源が豊富な国に対し従国となることを求めた。もちろん、しばらくの戦いの末、それを飲まざるを得ないことを知った。


 けれどこの国は違う。人口は少なくはなかったけれど高齢社会で働ける人口は少なく、環境資源も枯渇していた。この国の売りともいえる独自の文化や芸術の類は彼らの望むところではない。

 むしろD-アストロロギアにとって私たちは害虫であった。大したものを生まず、献上できるものもなく、限られた資源を食いつぶすだけ。

 日本だけでなく、資源の少ない先進国は総じて殲滅対象とされた。


 D-アストロロギア対策として日本で組織されたのが「自衛国防機関機動部隊訓練生」通称JKだった。

 当初こそ若い人間全員がここに所属することとなっていたが、人類存続に危機に瀕し人間の身体は大きく進化した。かつて脆かったという皮膚はつるりとした装甲に変わり、膂力、脚力は150年前の3倍に向上。

 けれど進化したのは女性だけだった。

 環境に適応し、より強く生きていくために遺伝子は母体の強化を図ったのだと、聞いている。

 今日JKに選ばれるのはいわゆる”優秀な女性”だ。

 優れた身体を持ち、優れた頭脳を持つ、選ばれた人間。

 男性は工場で日々軍備の拡充に励み、選ばれなかった女性は出産と子育てをする。



 JKの人間は皆口をそろえて言う。



 「私たちは、あなたたちは、選ばれた人間なのだから」




 「選ばれた人間だっていうのに、なんで私たちは死にに行かなくちゃいけないの!?なんで、出来損ないたちは戦うこともなくのうのうと生きていけるの!?」



 そう教官に向かって言い放った同期は次の日JKから姿を消した。

 望み通り、のうのうと生きられる場所に送られたのだという。


 その時リアは言っていた。



 「どっちの方が幸せなんだろうね。社会から見下されながら、それでも安全なところにいるのと、私たちみたいに選民思想にどっぷりつかりながら、あっさり死んでいくのとさ」



 リアは優秀だ。優れている。けれどやっぱり馬鹿だなってそういうときは思ってしまう。

 彼女の言う選民思想にどっぷりつかりながら、何もかもを見下しながら気高いふりして生きてる方がずっと気楽なのに。

 快楽主義と言うくせに、その根は悲観的で哲学的だ。生きづらくても、ただ考える。何もできなくても、思考する。たぶんそれはこの100年の間に失われてきた”風俗”と一緒なんだ。腹は膨れなくても、お金にならなくても、彼女はそれを愛していた。きっと生まれる時代を間違えていたんだろう。


 JKの基地は空にある。空に浮かぶ箱。箱の上に築かれたのが空中都市アステリポリスだ。

 アステリポリスにJK関係者は住み、そこですべてが手に入る。下々の者が住む場所へと降りる必要はない。

 アステリポリスはとても綺麗なところだ。無駄なものも装飾もなく、何もかもがフラット。つるりとしていて、ひっかりもほつれもない街。


 きっとリアはこれだから選民思想は、とか言って嫌な顔をするかもしれないけれど、私は下々へ行きたいとは微塵も思わない。アステリポリスから下はよく見える。ごちゃごちゃとしていて油と排気ガスにまみれている。あそこにいる人たちは優秀でなかった女性と環境に適応できなかった男性たちだ。まるで産業革命直後の英国のようだ。何百年も昔の衛生基準。あんな汚いところで生活するなんて私には到底考えられるない。

 たとえ自由だとしても、たとえ命の危険がないとしても、私はきっとあそこじゃ息ができない。




 アステリポリスのはずれには小さな林がある。人の精神を健全に保つためにこの鉄の空中都市に植えられた数少ない緑だ。夕方になると、彼女はいつもそこに現れる。 



 「ねえクレ先輩」 

 「どうしたのシイナ?」



 クレ先輩。朝方の空のような色をした長い髪。先輩JKたちの中の数少ない生き残り。



 「先輩は下の世界に行ったことがありますか?」



 先輩は少し楽しそうに、懐かしむように木々の隙間から見える下の世界に目を向けた。



 「あるよ、ずっと昔にね。下の世界にはいろんなものがあったわ」



 夕方の地上は暗く、赤と赤の間の影は吸い込まれそうなほどに黒かった。背の低い建物と建物の間。その間隙には選ばれなかった人間がひしめき合うように生きているのだろう。

 あの薄汚れた世界を歩くクレ先輩の姿は私には思い浮かべられなかった。きっとそれが私の顔に出ていたのだろう。先輩はクスクスと笑う。


 クレ先輩にあの暗く蠢くような世界は似合わない。たとえありえないとしても、あの薄汚い場所にいるくらいなら静かに輝く湖面に立つ姿の方がまだ目に浮かぶ。

 それほどまでに、彼女は有象無象とは混じり合わない存在だった。



 「路地裏を逃げる猫を追う子供たちがいたわ」



 猫。いつか教科書で見た地上で生きる小動物のことだ。



 「赤ん坊を片手でで抱いて、左手でもう一人の子供と手をつなぐ母親がいたわ」



 母親。見たことのない人種だが、話には聞いている。”母親”というものに私たちがなる可能性があることも。



 「作業着を着て、仲間たちと話をしながら帰路につく男たちがいたわ」



 男。性別が女性ではない人間。進化の過程で遺伝子に見捨てられた存在だ。



 「たくさんの人がいて、たくさんのものが地上にはあったわ。遠くのものはまるで見えないけど、近くのものがよく見えた。温もりも暑さも近くて、冷たさも寒さも克明だった。」

 「……先輩、クレ先輩。私にはわかりません」



 懐かしそうに、物思いにふけるように地上へと向けていた視線がようやく私に戻ってきて、少しだけ安心した。



 「地上は、下の世界はそんなにも”善いもの”なんですか?」



 この空中都市には、欠けたものがない。

 澄んだ空気、濁りない水。

 遮るものなく注がれる太陽からの恩恵。

 煌々と照る月の静けさ。

 闇に飲み込ませない輝く星。


 そのどれもが損なわれている下の世界。

 淀んだ空気、混じり合う水。

 隙間を縫うようにして落ちる日光。

 月の明かりさえ闇を深めるだけ。

 輝く星は遥か遠い。


 なのにどうして、この美しい先輩は、あんな顔をして地上を見るのか。

 私にはわからない。



 「シイナ、人が生きている。誰かのために、何かのために生きている。それだけで世界は”善いもの”なのよ」



 誰よりも選ばれた人間と呼ばれるにふさわしい彼女が、どうして心を傾けるのか。

 私には何もわからない。





*****************************





 掌の中のキューブは、ひどく軽かった。

 今日の演習で配られた兵器は掌に十分乗るほどの大きさで、ひんやりとしていた。丸いくぼみには指紋認証用の窓があり、その左右の面にはそれぞれボタンが一つずつついている。太陽にかざすと指紋認証の窓が虹色に光を反射させた。


 超小型対D-アストロロギア兵器。そう称され配られた兵器だが、要するに小型核兵器だ。

 核兵器がD-アストロロギアにあまりダメージを与えられなことはとうの昔に知られているが、それでもこの国の持つ最大にして最強の力は結局核なのである。それ以外の抵抗の仕方を、この国はもっていない。ただ恐らく、全くの無駄というわけではないのだろう。大した威力にもならないおもちゃを私たちに配るとは思えない。あるとすれば、私たちにこの兵器の本質が隠されていることだろう。



 「うげ、シイナ。なんでまだキューブ持ってるの?危ないでしょ」

 「なんでって、教官が肌身離さず持っておけっていってたし」

 「だからって本当に核を身に着ける……?わたし早々に寮のタンスにしまってきたけど」

 「抜き打ち演習でも始まって所持確認されたら困るでしょう?」



 これだから優等生は、とぼやかれるが、正直今考えた理由だった。本当のところ、何も考えていない。持っておけと言われたから持っていて、危機感をあまり感じなかったからそれに随っているだけだった。

 キューブをもって、右手の人差し指を指紋認証の窓に触れさせる。それから左右側面のボタンを同時に押す。そしたら核爆弾は起動する。

 起動時の安全ロックなどはない。私が今なんとなく、人差し指で触れ、なんとなくボタンを押せば半径1キロほどは吹き飛び、放射能に汚染されることとなる。私たちJKにこれほど危険なものを配るのは私たちがそんなヘマをしたり無駄な好奇心に駆られたりすることがないという信頼からだ。私は結果がわかっていることに対して好奇心をくすぐられたりはしないし、リアは望ましくはないが本人なりのリスク管理ができている。



 「で、どうしたの?」

 「シイナはさ、地上への降り方って知ってる?」



 声を低めて言うリアに思わず顔をしかめた。どうして彼女は兵器のリスク管理はできるのに、わざわざ別のリスクに飛び込んでいこうと思えるのか。



 「いかないよ」 

 「知ってる?って聞いただけじゃん」

 「聞いた後に行こうって言いだすのが目に見えてる」



 きらきらとした栗色の目が縋るように私を見ていた。



 「なんで?シイナはなんで地上が嫌いなの?」

 「むしろどうして地上なんか好きになれるの?あんな不衛生そうで、光が届かなそうなところ」

 「”そうなところ”」



 何が言いたいかわかってしまっていやになる。



 「それってシイナのイメージじゃん。実際に見たことあるわけでもなくて、アステリポリスから地上を見て知った気になってるだけじゃん」



 わかっている。ものを知らずして厭うことは、愚かしい。差別も侮蔑も、発展にブレーキをかける。知ることができるのであれば知るべきだ。たとえ不要なものであれ、一度知ってから切り捨てるべきだ。

 けれどそれ以上に形容しがたい嫌悪感があるのだ。あの場所へ行ってはいけないと。あそこは私のいるべき場所じゃないと。



 「知って、知ってどうするの。出撃は今週末だよ。下の世界を見に行くだけの余裕があるの?」

 「そんなのあるわけないじゃん」

 「なら、」

 「未来のこと考えられるほど、楽天的になれるわけないじゃん」

 「リ、」

 「今週末が私の、私たちの終わりだよ」



 ”終わり”その言葉は私の胸にズシリと重く沈んでいった。

 終わったその先に、私は何があるか知らない。

 人生の”始まり”を知らないように、人生の”終わり”も私たちは知らない、知れない。

 終わるその瞬間を知覚できなくても、私たちはその目前まで、緩やかに歩き迎えに行かなくてはならない。



 「気が付いたらアステリポリスにいて、気が付いたらJKに加入して、気が付いたら今週死ぬんだよ。ねえ、馬鹿馬鹿しいと思わない?私たちは何のために戦うの?国のため?その国には私たちはいないのに?大切な人の一人もいないのに?」

 「……リア、」

 「アステリポリスの管理者が必要だと思うもの以外何もかもそぎ落とされて、最小限の情報と知識だけ与えられて生かされてきた!教育されてきた!……ねえもう最後なんだよ。見たいものを見たいと思うことの何が悪いの。私は、」



 リアは今まで見たことのないほど毅然とした顔をしていた。



 「私からそぎ落とされた、私の一部になっていたものを知りたい。このつまらない街から削ぎ落された美しい無駄を見たい」



 今の彼女は、この街に、JKに相応しくない。

 この澄んだ空気にも、静かな箱の街並みにも、涼やかな風にも、今の彼女は相対していた。

 騒めくように燃え上がり、叫びだすように声を絞り出し、熱く熱く迸っていた。


 美しくない。湖面のような透明感もない。


 なのにどうしてか、私はどうしようもなく、彼女の手を取って駆けだしたくなってしまっていた。






*******************************





 鉄の空中都市アステリポリス。この街には無駄がない。静かではないものは削除され、涼やかでないものは排除された。

 にも拘わらず、この何もないはずの都市で私たちが生活できているのはすべて下の世界からの供給があるからだ。

 空に浮かぶアステリポリスだが、実際のところは下の世界とつながっている部分がいくつかあるのだ。

 たとえばそれは兵器の供給口、たとえば物資供給口、たとえばダストシュート。

 職員に紛れてしまえば、下へ降りるのはそう難しいことではない。



 「さっすがシイナ様ー……なんで供給口と出入りする職員の身なりまで把握してるの」

 「こちとら同期一の成績だからね。教官だって私が勉強のためっていえばこの街のこともJKのことも大抵教えてくれる。……ほら、ばれるから話しかけないで」



 私たちは兵器の供給口から兵器入れ替えの職員のふりをして下を目指していた。

 空に浮かぶ、と称するアステリポリスだが本当に浮いているわけでない。柱や通路が地上とつながって空中都市を空に固定しているだけなのだ。

 台車にリアの入ったコンテナを乗せ、青色のマスクと帽子で顔を隠しながらエレベーターに乗った。

 ガクン、と軽く揺れ、戦闘機で急降下するような浮遊感に襲われた。空を飛んでいるときよりましだけれど、緩やかな下降感はいつ終わりが来るのか予測が立たず、なんだか内臓の位置がずれてしまったような感覚に襲われた。おそらく、外が何も見えず、コンテナの中で体育座りしているリアはなおのことだろう。


 無限のように感じられた浮遊感は唐突に終わりを迎える。エレベーターの扉が開きコンテナを押しながら施設内を進む。建物内は正直アステリポリスと遜色ない。けれどこの建物の外に出たら、私たちはずっと見下ろしていた下の世界に踏み入れるのだ。


 心臓がどきどきと音を立てるのを聞いていた。こんな音を聞くのはきっと初めて戦闘機に一人で乗り込んだ時以来だろう。そう思うと同時に、私の心臓はずっと生命維持に必要な血液ポンプ以外の仕事をしていなかったのだと気が付いた。


 この心拍は、知らないものを知ることのできる期待からなのか、それとも忌避してやまない下の世界に足を踏み入れる嫌悪感からなのか、不慣れな私には判断がつかなかった。





*********************************





 「お、お、おおおーー!」

 「ちょっと騒がないで……!」



 コンテナを置いて、フード付きのマントを羽織った私たちは初めて地上に降り立った。なんとも言えない感嘆の声を上げるリアの手を引っ張って路地への歩き出す。通路付近にはまだJK関係者がいてもおかしくない。早々に離れるべきだった。



 「地上、地上だ……。あんなに小さくてもここにはここの世界があるんだね!」

 「……当たり前でしょ。アステリポリスのほとんどのものの供給源なんだから」



 しばらく歩いてから、空を見上げた。黒と白の箱が空には浮いていた。何年もあの場所に住んで、初めて街の裏側を見た。 

 地上から見上げた青い空はいつもよりずっと高くて、太陽はひどく遠かった。

 どこを見ても視界を遮るものばかりで、ほんの100メートルさきどころか50メートル先すら見ることができない。閉塞感と壁が迫るような圧迫感を感じる私など素知らぬように、リアは興奮しながら歩を進めていた。



 「道が狭い、っていうか道がたくさんあるね!人が二人通れる程度の幅しかない。これじゃ物資も運びにくいし戦闘機の滑走路にもできない……。ここのあたりは人間が通ることしか想定されてない場所なんだ」



 目を輝かせながら建物や道を見て回る彼女には悪いけれど、何がそんなにいいのかわからなかった。狭い道は不便そうだし、地面だってほとんど舗装されてない。歩くたびに靴に土がついた。



 「リア、フード深くかぶって。見上げると顔が見えちゃう」

 「うん、うんごめん、つい!すごいね!」



 何がすごいのかはわからない。

 けれど大衆文化であったり風俗を好んでいた彼女にはきっと見えている世界が私とは違うのだろう。いつも空から眺めていたジオラマの中に入り込んだ気分なのか、それとも憧れた小説の中に入った気分なのか。どちらにせよ、ごちゃごちゃした物置か何かに放り込まれたような気分の私とは相いれないだろう。

 ふと、何かが前を横切った。反射的に小型武器に手を伸ばすが、それは害意や敵意を持つものではなかった。



 「”猫”だ!初めて見た!」



 クレ先輩の言っていた”猫”が私たちの目の前に現れた。

 全身が毛で追われて、三角の耳がぴんと立っている。細い四つ足で背伸びするように軽やかに歩き、バランスをとるように”しっぽ”が揺れていた。



 「……”三毛猫”ってやつだね。三色の毛色してる。」

 「うわあすごい!”猫”!可愛い!もふもふ、ふわふわ!小さい!」



 小さくて、弱そう。可愛いという言葉よりも弱そうだと思ってしまった自分の考えに少しだけ嫌気がさした。

 手も足も小さくて、柔らかそうな毛は身体を守るにはとても足りなさそう。きっと簡単に死んでしまうような生き物なのだろう。



 「リア、行こう。もういいでしょ。」

 「猫ちゃん!」

 「ちょ、リア!?」



 私の気持ちなどつゆ知らず、リアは三毛猫へと走っていった。するとどこかつんと澄ましていた猫が驚いたように駆けだす。そしてそれを躊躇なく追いかけるリアにぎょっとした。地上を見るのは結構だ。けれど私たちの時間は有限。寮の門限までに戻らなければどうなるか。いやそれ以前に迷子にでもなったらどうするのか。けれど狼狽えている間にも彼女と一匹はごちゃごちゃした世界に紛れてしまいそうで、私もたまらず追いかけた。



 『路地裏を逃げる猫を追う子供たちがいたわ』



 クレ先輩の言葉を言葉を思い出した。

 私たちは今、地上に生きて、猫と戯れようとする子供たちになろうとしているのだろうか。


 遠い日光を遮るような建物の間を、私たちは縫うように走っていた。





**********************************





 ほどなくして猫はリアに捕まりその腕の中に閉じ込められていた。不真面目でもJK。その辺の小動物に身体能力が劣るはずもない。



 「いやあ可愛いねぇ猫ちゃん!もふもふのふわふわ。柔らかくて骨ばってる。なんだか太陽みたいな匂いがお腹からするし」

 「やめてそれを私に近づけないで、獣臭い」



 リアは躊躇なくそれを抱き上げ撫でまわしているが私には理解できない。地上に生きる小動物など、どんな病気や寄生虫を持っているか分かったものではない。きっとを上へ持ち帰ったとしてもすぐにあちらの技術で駆逐できようが、どこから持ってきたのかがばれればただでは済まないだろう。



 「ひどいなあシイナは。じゃあシイナは私がこの子を堪能するのを見ててよ。はぁぁぁ、この匂い癖になる。柔らかい、あったかい」

 「変態っぽい、それと触り終わったら殺菌スプレーなりなんなりしてね」

 「ミィ!」



 突然細い路地から小さな人影が飛び出してきた。反射的に首の後ろをひっつかむと妙な声を上げた。

 明るいベージュの肌、私たちの鳩尾あたりまでしかない背丈。短く刈り込まれた黒い髪。

 地上に住む”男性”の”子供”だ。



 「は、離して!」



 わたわたと手足をばたつかせる子供を地面におろした。このサイズと力なら問題なく処分できるという確信があったからだ。



 「”ミィ”ってもしかしてこの子のこと?」

 「そう!俺の家族だから返して!」

 「そっかーごめんね勝手に触っちゃって。あんまり可愛いかったからつい抱っこしたくなっちゃって」



 何の力もないくせに随分と偉そうな口を利くのだな、と思ったがリアは顔色一つ変えず抱いていた猫を子供の手渡した。ぎりぎり持てるくらいの大きさだというのに子供は大切なものを守るように抱きかかえた。



 「ねえ、ところで君一人?ここに来るまで誰ともすれ違わなかったんだけど」

 「え?父ちゃんは仕事中で、母ちゃんは家にいるよ。あと姉ちゃんもこの近くにいる」

 「よかったらお姉ちゃんにも会わせてくれない?私たちここに来たばっかで友達いないんだ」

 「ちょっとリア……!」



 至極自然にほかの人間にも接触しようとするリアを咎める。私たちはあくまで上から抜け出してここへ来ているのだ。地上の人間と接触することJKが抜け出しているとばれるのも困るし、最悪”脱走”と捉えられてしまってもおかしくないのだ。そうなれば私たちは今まで姿を消した同期のようになってしまう。

 少なくとも私は地上を見に来ただけであって逃げ出そうとしているわけではないのだから。



 「いいじゃん、いいじゃん。文化を理解するのは建物とかのものだけじゃ足りない、実際にそこで生きてる人たちと話してみないと」

 「好奇心も大概にしてよ、死にたいの?」



 リアは一瞬、きょとんとした顔をして、それから笑った。私はその顔を見て言うべきでないことを言ったことに気が付いた。



 「お姉ちゃん友達いないの?」

 「……うん、ここにはね。私たち二人ボッチなんだ」

 「そっか、じゃあ俺がお姉ちゃんたちの友達第一号だ!」



 何も気が付かない子供はニコニコしながら猫を抱え歩き出した。

 小さな歩幅は忙しなく、回る足と同じくらい口もよく回った。

 名前は”アオ”で両親と姉の4人暮らし。姉は母によく似ていて、怒ると怖いけどよく遊んでくれる。父は夜遅くまで働いているからあまり遊んでもらえないけど、もうすぐ遊んでくれるようになる。猫のミィは昨年姉と一緒に拾ってきて家族になった。”野良猫”だったミィをこっそり二人で飼っていたけど母にばれて怒られた。自分たちで面倒を見ること、途中で絶対投げ出さないことを条件に飼うことが許された。

 アオはよく喋る子供だった。けれどそう私が感じただけで子供というものはもしかしたらこんなにも喋るものなのかもしれない。



 「ねえちゃあん!ミィいたよぉ!」

 「心配しなくてもミィはうち覚えてるんだから帰ってこれるでしょ……、アオ、そっちの人たちは?」

 「友達!」



 少女の私たちを見る目は警戒していた。そして無防備に私たちを紹介する弟にも戸惑っているようだった。当然だろう。今の私たちはフード付きのマントを深々と被っていて顔が見えない。それも自分たちより大きな”大人”だ。年齢も二桁にもなればそれくらいの分別もつくだろう。



 「ごめんね、怪しくて。でも不審者じゃないから心配しないで」



 そう言ってしゃがんでフードを取って見せると少女は目を丸くした。



 「私たちは君と同じだ」



 地上に住む人間にはないつるりとした白い肌は適応した人間の象徴だ。

 アオの姉である少女は私たちと同じ肌をしていた。




 少女の名前はエリスといった。黒い髪なのは弟と同じだがアステリポリスに住む人間と同じ傷一つない装甲のような肌だ。彼女の周りに同じような見た目をしている子供はおらず寂しかった、とエリスは私たちに笑顔で話した。自分と同じものを持つ人間がいてうれしいのだと。



 「んふふ、上に行けば私たちと同じ肌の女の子たちがいっぱいいるよ」

 「上?」

 「あれ、見えるでしょ。空にある黒い箱。あれがね、私たちの住んでる街、アステリポリス。あそこには私たちみたいな強い人間が行くところなんだよ。エリスちゃんも怪我とかしたことないでしょ。」

 「ううんと、聞いたことある。あそこにはJKっていう空と戦う人たちがいるって」

 「ねえちゃん戦うの?」



 ミィと遊んでいたはずのアオが走ってきて姉を見上げた。



 「戦わないよ。私はここにいたいし」



 なんでもないようにエリスが言った。



 「……上に行きたいとは思わないの?あの場所には君と同じような人間がたくさんいて、寂しくない」

 「でも家族がいなきゃ寂しいわ。お姉さんもそうでしょ?」



 エリスの声はとても透き通っていた。あの街に今もきっといる先輩のように。

 朝日のように透き通って、湖のように澄んでいた。



 「エリス、アオ、いつまで外で遊んでるの、」

 「お母さん!」



 エプロンをつけたふくよかな女性が家々の一つから現れた。姉弟はぱあと笑顔になり、彼女の下へと走り出した。

 彼女が二人の”母親”なのだろう。

 彼女は私たちを見た瞬間目を見開き、それから口元を押さえた。



 「……リア、帰ろう。もう気は済んだでしょ、」

 「こんにちはー!二人に遊んでもらってたんです。二人ともいい子ですね!あ、不審者とかじゃないですよ?自衛国防機関機動部隊訓練生、ご存じ通称JKのリアって言います!」

 「ちょっと何考えて、」



 慌てて子供二人を家の中に連れ込んで自身も家に入り扉を閉めようとした彼女を引き留めるようにリアはその扉を片手でつかんだ。地上の人間に合わせて作られた家は私たちにとってはとても脆い。みしりと扉が嫌な音を立てた。



 「や、やめてください……!」

 「お話伺っても、いいですか?」



 らしくもない貼りつけたような笑顔でリアは扉を無理やり開けた。





 子供二人を家の中で待たせることを条件に二人の母親は私たちと、リアと話をすることに応じた。見るからに怯える自分の倍は生きていそうな地上の女性はのベンチに腰を掛けエプロンの端を握っていた。一方のリアはもう笑ってもいなくて無表情で彼女のことを見ていた。

 情けない話、私はどうしてリアがこの女性を引き留めたのかわからないでいた。二人の子供に興味を持つまではわかる。けれどどう見ても私たちに怯えている女性を無理してまで何を話すのかがわからなかった。



 「すいません、うちのが……すぐ終わると思うので。あと危害を加えたりもしないので、そんなに怯えないでください」

 「え、ええ、私ったら、ごめんなさい……、」



 狼狽える彼女から、まともな話を聞けるとは思えない。いくら私からフォローを入れても何の効果もなく、私はもうそうそうにリアが話を終えてくれるのを願った。



 「……怖がらせるようなことを、すいませんでした。でもどうしても、ここにいる人に話を聞きたかったんです。私たちには、時間がありません」



 険しい顔をして言うリアに彼女はハッとした表情をした。

 地上の人間だって、いつ総力戦が行われるかくらいは知っているはずだ。そのために物資等の補給も忙しく行われているのだ。なにより、空の戦火が地上と無関係なはずもない。たとえ前線に立ち戦わずとも、影響がないわけがないのだ。これはJK(わたしたち)の戦いではない。この国の戦いなのだから。



 「わ、わたしに話せることがあれば、」

 「……なぜ、私たちの姿を見ただけでそんなにも怯えたんですか。地上に私たちのような人種は少ないでしょうが、エリスちゃんだってそうでしょう?」

 「……あなたたちがエリスといたから。昔はエリスのような子供はJKになれる素質があればすぐに”上”に連れていたから、あなたたちがエリスを連れて行ってしまうんじゃないかって、思って。その様子じゃ、違ったみたいね。勝手に勘違いしてごめんなさい」



 その言葉を聞いてリアは身を固くしたため、私が横から口を出す。



 「いえ、私たちこそ軽率なことをして申し訳ありません。”地上”のことを聞きたくてつい声をかけてしまいました。」

 「今更あの子を連れていかれるなんて、考えられないわ。地上で生きていく道だって、今はたくさんあるもの。」

 「さっき、昔は連れていかれたって言ってましたけど、今はないんですか?」

 「ええ、もう何年も前になるけど、政府の方からそういう声掛けがなくなったの。明確に何か指針が出されたわけじゃないから、あの子は何年も人に肌が見られたりしないように気を遣っていたけど、エリス以外の”白肌”の子たちも連れていかれたり勧誘の声を掛けられることもなくなったみたいで」



 私たちのような人種は地上の人間からは”白肌”と呼ばれているらしい。私たちからすれば地上の人間たちは皆重そうな肌色をしていると感じているのだが、他人の目からわかりやすい点で呼ぶのもわからないでもない。



 「上は、悪いところではありませんよ。何でも揃っていますし、不自由したこともありません」

 「……そう、でしょうね。でも私は”母親”として、あの子が傷つきそうなところへ、命の危険にさらされるところへは連れていけません。たとえそれがどれほど名誉なことであったとしても、」



 弱弱しく、彼女は地上の人間らしく無力なものとして困ったように微笑んだ。



 「私はあの子の傍にいたいんです。あの子のことを守りたいんです」



 ”白肌”の私たちなんかよりずっと弱くて、なんの抵抗力すら持たない脆い人種なのに、自身よりずっと強いはずのエリスを守ろうとする。弱いくせに、と思ってしまうのに、一笑に付せないのはそれがきっと私には持っていないものだからだろう。


 リアは手を握り締めて俯いていた。止めるべきだったかと逡巡するが、もう遅い。



 「ねえ、リアさん」

 「……はい、」

 「今週末、でしょう?」

 「…………はい、」

 「もしあなたさえ、あなたたちさえよければなんだけど、ここにいない?あなたたち以外にもたまにいるわ、地上に降りてくる子たちが。一週間くらいなら逃げ切れるんじゃない?直前で上も忙しいでしょうし、二人を探すのにそう人員も割けないでしょう?」



 もう彼女は怯えてなんかいなかった。一人の”大人”として、子供を守る”親”として純粋に私たちのことを案じていた。自分の娘の行く末に心を砕いていたのと同じように。

 私たちに脅迫されて話をさせられているようなものなのに、彼女は私たちのことまで守ろうとしていた。


 リアは私のことを見るかと思った。彼女は困ったり迷ったりするとすぐ私のことを見る。これでいいのか、正しいのかと、不安そうに私のことを見るのだ。だから私は逃げてもいいと言うつもりだった。この女性が言うように、多分たった一人逃げ出したJKがいたところでこの緊急時に探し出して連れ戻すことも危害を加えることもない。

 けれどリアは私のことを見なかった。まっすぐ、心配そうな彼女を見て笑顔を向けた。



 「いいえ、大丈夫です。私たちは戦います。私は今まで何のために戦うかわかりませんでした。でもアオくんやエリスちゃんを見て、あの子たちのために戦おうと思えたんです。」



 強く、強く手を握り締めていた。



 「あの子たち未来のために、私はJKとして、”大人”として決して逃げません。」



 リアは、笑った。安心させようとするように、あの子たちが”母親”に向けていたように。

 温かく、優し気に笑った。





******************************************





 「本当によかったの?」



 戻ってきたアステリポリスの公園のベンチで、私はそう尋ねずにはいられなかった。

 リアは逃げてもよかった。彼女は戦いに向いていない。得意不得意ではなく、精神性が向いていない。きっと彼女は自分の興味のあることの研究や、誰かを笑顔にするようなことの方が向いているだろう。

 アオとエリスの母親は逃げて良いと言った。それも間違いなく本心で。

 決戦はもう3日後にまで迫っている。

 アステリポリスもいつもの静けさの裏でやはり多くの人間が息つく間もなく動き続けている。JKの一人くらい、逃げられるだろう。



 「よかった……これしかなかったんだよ」



 力なくうなだれるようにリアは呟いた。まるで自分に言い聞かせるように。逃げたかったはずだ。どうして自分が死ななければならないのか、自分が戦わなくてはいけないのか。いつもリアは懊悩していた。



 「リアなら逃げれたでしょう?リアは、逃げてもよかった」

 「逃げれるわけっ、ないでしょう!?」



 ぱっと立ち上がって怒鳴ったリアに息をのんだ。

 苦しそうに喘ぐようにリアは叫ぶ。



 「逃げられるわけないでしょ!?あんなの見せられたら戦うしかない、逃げられない!あんな、あんな幸せそうな”家族”がいて、誰かに”守られ”て、ほかの誰かを”大切”に思って、誰かのことを”愛”してるだなんて……!全部全部、私が持ってないものばっか!それを全部持って幸せそうで、暖かそうで!その中に自分自身がいなかったとしても、」



 かき消されそうな細い声、ため息のように震える声。



 「”守って”みたいって思っちゃうじゃん……」

 「リア……、」

 「みんな優しかった……、弱いのに、空から見下ろされてるのに、それなのに私たちに笑顔で接してくれて……あの人たちの幸せが続くなら、頑張れるかもしれないって、思わされちゃった……」



 彼女の肩に手を掛けようとして、できなかった。

 私たちは同じものを今、地上で見てきた。

 警戒心のない男の子、小さくて私たちと少しだけ似た家族思いの女の子、私たちが一度たりとも見たことのない豊かな愛を持っていた母親。

 きっとリアにとって、そのすべてが輝いていたんだ。温かくて、柔らかくて、自分が持っていないもの。



 「シイナ言ったでしょ?私たちは選ばれた人種だって。優秀で能力がある、誇り高い存在だって。今日の見て、同じこと思える?私たちは選ばれた誇り高い人間じゃない。私たちは選ばれてしまった生贄なんだよ……!」



 ぼろぼろと涙を流すリアに、否定することも肯定することもできなかった。

 それは所詮言い様だ。誇りだと捉えることも、生贄だと捉えることもできる。けれど、



 「……生贄も誇りも変わらない。どこにも行けないって知ってるなら、都合よく誇りって名前を付けていた方がいいでしょう」



 どこにも行けない逃げられない。どうせいずれ来る終わりを迎えるんだから、少しでも自分を納得させたいじゃないか。生贄だなんて思わずに虚勢でもいいから抱えていたいじゃないか。



 「ばっかじゃない!?あの人の顔見た?優しくて暖かくて、私たちのことを考えて、それで、私たちのことを”憐れんでた”!!」



 わかっていた。

 あの子たちの母親は私たちのことを憐れんでいた。

 まだ”子供”なのに戦いに行かされることを。

 あの街に閉じ込められて兵器として育てられることに。

 そして彼女は安堵していた。

 アステリポリスに自分の子供が連れていかれないことに。

 自分が子供を産んだ時期と連れていかれていた時期が違っていたことに。


 それから彼女は罪悪感を抱いて言い訳をした。

 自分たちが生きる街を守ってくれる、何も知らない”子供”たちへの罪悪感。

 せめてもの罪滅ぼしに逃げてもいいという選択肢を出した。最初から私たちが断るしかないと、恐らく知っていながら。

 私は救いの手を差し伸べて、それを断ったのはあの”子供”たちだと、自分に言い訳をするために。



 「こんな私だけどプライドがないわけじゃない。虚勢でも、誇り高い戦士のフリするしかない……そうでしょ、あんな善意の憐れみ、それでしか私は耐え方がわからないもの」



 縋りつけたら楽だろう。けれどそんなことはできない。

 は骨の髄まで染みついている。戦うことのできない弱い人間たちを、下の人間たちを守ってやらねばならない。半ば義務的なそれは、幾分かの侮蔑があった。

 弱い人間に、守られてなるものか。

 なけなしの矜持だったのだろう。



 「ねえ、なんで私たちだけ戦わなきゃいけないの?強い人種に生まれたから?なんでエリスは戦わなくていいの?生まれた世代が違うから?私は選ばれたかったわけじゃない、強くなりたかったわけじゃない」



 涙と嗚咽に消え入りそうな声は私に縋りついた。



 「私は、”ただ生きていること”を許されたかっただけなの」



 私は何も言えなかった。

 ただ滂沱する彼女の傍らに立って、以前聞いた言葉を思い出していた。



 『シイナ、人が生きている。誰かのために、何かのために生きている。それだけで世界は”善いもの”なのよ』



 その言葉が真実であるならば、戦うことでしか生きることを許されないこのアステリポリスは”善いもの”ではないのだろうか。



 涙を止められないリアを寮の部屋で送って、私は月光に照らされるアステリポリスを走っていた。






 「……先輩、」

 「どうしたのシイナ?もう消灯の時間は過ぎてるでしょう?」



 クレ先輩は今日も同じ林にいた。夕方以外に会うのは初めてだった。けれど夜の彼女も変わらず透き通るように美しかった。



 「クレ先輩、私わかりません」

 「何がわからないの、シイナ?」

 「下の世界が、どうして”善いもの”だと言えるのか。下を、見てきました。一匹の猫がいました。仲のいい幼い姉弟がいました。二人を愛する母親がいました」



 地面からの照り返しを受けた温かい空気、柔らかそうなベージュの掌、きゃらきゃらとじゃれ合う声、子供を受け止める橙色のエプロン。

 そのすべて、上にはないものだった。


 そしてリアはそれに憧れてしまった。ほしいと思ってしまった。ただの知的好奇心だっただろうに、彼女はそれを享受したいと思ってしまった。特定の誰かに心を傾けてしまった。


 何も知らなければ、幸せだったのに。

 生ぬるい優しさも、小さな命の体温も、善意からの憐れみも。どれもこれも知らなければ、手の届かないものに焦がれることもなかったのに。


 誇りあるJKでいられたはずなのに。



 「私たちを惑わせるものが、”善いもの”なんですか?」

 「……”善いもの”で、あったはずよ。それは本来あなたたちも享受できたはずのもの。柔らかで温かくて、強要されることのない世界。あなたたちから取り上げた世界」



 わかっていた。

 下の世界にあるのは、私たちから削り取られたもの。戦う上でJKとして不必要だと削ぎ落されたもの。

 私たちは何も覚えていいない。皆、気が付いた時にはアステリポリスにいて、物心ついたころにはすでにJK訓練生だった。

 調べなければ、知ろうとしなければ私たちはアステリポリスだけを見て、充足できていたはずだ。下界に一瞥くれることもなく、ただ宇宙まで広がりゆく空を見据えていたはずだ。逃げたいなどと、暖かさが欲しいなどと願うことはなかったはずだ。



 「あなたたちは最後の世代だったの」

 「ええ、私たちは最後の世代。ずっとわからなかったんです。私たちは幼いころからここにいたのに、自分より年下の子たちをアステリポリスで見たことがなかった。……もうとっくに、戦いを継続することを放棄しているんでしょう?」



 だからもう、下の世界から”白肌”の子供を連れ来ることはなくなった。けれどここで生きるJK訓練生たちを返すわけにはいかない。私たちにはとうに家族がおらず、この街以外での暮らし方を知らない。

 だから政府は私たちを最後まで戦わせることを決めた。

 私たちを最後にすることを決めたのだ。


 アオが言っていた。彼の父親は夜遅くまで働いているからあまり遊んでもらえないけど、もうすぐ遊んでくれるようになる、と。おそらく軍事工場に勤めているのだろう。そして遊んでくれるようになる、というのは軍事工場の縮小、もしくは閉鎖を意味する。彼の母親も言っていた。一週間くらいなら逃げ切れるんじゃない、と。それはつまり今回を逃げ切ればもはや追っ手は来ない。総力戦後JKを再配備することはないということだ。


 三日後に迫る私たちの最初の戦いは、私たちの最後の戦いなのだ。



 「そのうえ政府は私たちを処分しようとしてますよね。今日、キューブ型の小型核兵器が配布されました。決して肌身離さず持ち歩くよう、伝えられて」

 「……シイナも渡されたのね」

 「起動の条件は指紋承認後、ボタンを押す。……これ、私たちが戦線離脱することを前提としてませんよね?」



 私たちは戦闘機に乗って出動する。にも拘わらず渡された小型核兵器は戦闘機搭載型や飛翔型ではなく私たちが直接持つ形。つまりもし使うときがあるとすれば起動と同時にD-アストロロギアに突っ込むときくらいだ。

 JKは戦うために育てられた。すべては強者としての責任だと。空からの侵略者を排せよと。けれどもし和睦するなり降伏するなりすれば、戦うためだけに育てられた私たちは目の上のたんこぶとなる。だから最後、私たちを消費して終わらせるつもりなのだ。



 「クレ先輩、教えてください。私たちは、何を思って最後の日を迎えればいいですか?」



 戦うことを強要されたこの境遇を嘆けばいいのか。

 持っていたはずのものを悉く奪われ、兵器としてしか生きられないようにした政府を恨めばいいのか

 下で世界で身を寄せ合い生きる家族を想い、奮い立たせればいいのか。



 「クレ先輩、教えてください。先輩は何を思って死んだんですか?」



 月明かりに照らされたホログラムの先輩は寂しそうに微笑んだ。



 「私の身体、よくできてるでしょう。技術職の友人が作ってくれたの。どうして私がもう死んでるってわかったの?」



 クレ先輩は生きているようにしか見えない。自立するように動き回り、その声は大気を揺らすように聞こえていた。



 「……あなたを見て、気づいたわけじゃありません。先輩は完璧でした。けど、最終決戦の日付が決まった時、図書館で調べ物をしていたんです」

 「何を調べていたの?」

 「……今までの戦いで、生きて帰ってきた先輩たちの名簿を」



 戦うのも仕方がない、義務だ。死んでしまうのも仕方がない、戦力差だ。そう諦めていても、鳩尾から這い上がるような冷たさから、私は逃げ出したかった。頭で納得していても、とうに逃げ出すことを諦めていても、私は怯懦に飲み込まれていた。

 それから逃れたくて、私は先輩たちの名簿を見ていた。



 「殉職者名簿の中に、あなたの名前と、画像がありました」



 呉椿。それがクレ先輩の本名だった。


 100年以上前に殉職した先輩は観念したようにため息をついた。



 「嫌ね。きっとあなたは私のことを戦いから帰ってきたカッコいい先輩だと思ってくれてただろうに。がっかりでしょう?普通に殉職しただなんて」

 「……確かに私はあなたのことを生き残った先輩だと思っていました。でもそれだけが理由じゃありません。先輩は私にいろんなことを教えてくれました」



 わからない問題があった時も、友達がうまく作れなかった時も、演習でミスをした時も、クレ先輩は私にどうすればいいか教えてくれた。

 わからないと言えば先輩はいつも涼やかに微笑みながら、ヒントを私の前に示してくれるのだ。



 「私が貴方に憧れたのは、私をいつも助けてくれたからです」



 それからきっと、私が決して逃げ出そうとはしなかったのも、JKとして戦うことを選んだのも、クレ先輩のように、かっこいい人間でありたいと思ったから。



 「クレ先輩、教えてください」

 「……なあにシイナ。私にこたえられることなら」

 「私はもう死んでしまいます。あと三日したら、もう先輩に会うこともないでしょう」


 だからどうか教えてください。


 「私はあと三日、どう生きて、どう死ねばいいでしょう」



 先輩は吐息を震わせていた。そして綺麗な目から零れ落ちたしずくは地面に落ちる前に白い光となって消えていった。



 「……シイナ、私も、私もそれは知らないの」

 「…………、」

 「私は、出撃前夜までの記録から作られたAIなの。だから私はどう死んだか覚えてない、知らないの。どんな気持ちで戦闘機に乗り込んだか。どうしてアステリポリスに戻ってこれなかったのかも、知らないの」



 ざわりと、心が粟立った。

 ここに立つ先輩は、決戦前夜までしか知らないのだろう。どんな心持だったかわからない。怯えていたのか、奮起していたのか、眠れない夜を過ごしたのか、それはわからない。けれどそんな夜を過ごしたこのクレ先輩は、自分が死んでしまったことだけは、確かに知覚しているのだ。

 空に飛び立った記憶もなく、死んだ記憶もないのに、ただその後自身は死んだのだという事実を胸に抱くのは、果たしてどんな気分なのだろう。



 「……聞かせてください、私は、もう死んでしまう私はこの三日をどうしたらいいですか。先輩はどう過ごしていましたか」

 「わからない。あなたがどうしたらいいか、それはわからない。死んだ私が、こうすればよかったと後悔していたのか、それとも満足していったのか、わからない。……でも私は最後の数日を、友達と過ごしたわ。戦いのことなんか話さずに、あれを食べてみたい、ここへ行ってみたい、だなんて話してた。全部叶わないってわかってても、私たちは願いと希望を話してた」



 100年以上前の出来事、それは私の想像力ではきっと補完できない。でも彼女たちの姿を思い描くことはできた。

 少女たちが教官の耳に入らないように顔を寄せ合い、楽し気に言葉を交わす。したいこと、行きたいこと、恐怖なんて押し込めて、きらきらと美しい輝かしいものの話だけする。



 「私たち、JKだもの。泣いたりなんかしない。最後の日まで、私たちは笑ってたわ」



 唐突に、図書館でリアと共に見た画像データを思い出した。

 あのデータの中のJKたちはみんなみんな、笑ってた。花咲くように、太陽のように。生きる力と希望に溢れていた。

 きっと女子高生も、自衛国防機関機動部隊訓練生も変わらない。


 私たちは、若くて強い、JKなんだ。



 「……じゃあ私も、リアといっぱい話します。きっとあの子は、そういう話が大好きだから」

 「そう、そうしてあげて。いっぱい話して、手を握ってあげて。それだけで、私たちはちょっぴり元気になれるから」



 私たちはもう決めた。

 決して逃げることはない。ただただ最後の日を迎えることになるだろう。

 でも泣き暮らすなんてことは絶対しない。私たちは最後の日、あくまでも立ち向かっていく。


 憐れみなんて受けない、生贄だなんて呼ばせない。


 私たちは誇り高いJKとして、最後の空に立つのだから。



 「私たちは、笑っていられますか?」

 「笑っていられる。笑っていられるわ。でもね、ほんの少し不安になる、泣きたくなることもあるかもしれない。そうしたら私のところにおいで。朝まで傍にいてあげる。」

 「クレ先輩、」

 「きっと最後の夜は、眠れない夜になるだろうから」



 先輩はもう泣いていなかった。触れない手で私の白い頬を撫でて、優しく綺麗に微笑んだ。

 先輩は、最後の日の夜朝まで泣いて過ごしていたのかもしれない。

 もしかしたら、この100年以上の間、眠れない女の子たちの話し相手をしていたのかもしれない。



 「シイナ、今日はもう寝なさい。そして友達の傍にいてあげて。きっとその子も一人でたくさん考えているだろうから」

 「はい、先輩。……最後に、一つだけ聞いてもいいですか」

 「今日のシイナは聞きたがりね。私にこたえられることなら」

 「先輩はタピオカを食べたことありますか?」



 クレ先輩は綺麗な目を真ん丸にしてそれから初めておかしそうに笑った。



 「あるよ、ずっと前に一度だけ。それから友達に、カエルの卵みたいって言ったらすごく怒られたわ」



 100年前のJKは懐かしむように、友人たちの話をした。

 そして彼女は、朝日に溶けるように消えていった。





**************************************





 「ねえリア、タピオカミルクティ作ろっか」

 「え、何突然、っていうかタピオカの作り方知ってるの?」

 「教えてもらったんだ」



 目を丸くして驚いているが、その目は好奇心で輝いていた。



 「それとね、会わせたい人がいるんだ。タピオカの作り方を教えてくれた人」

 「誰それ!?すごい話してみたい!」



 最後の夜、リアと二人で先輩のところへ行こう。


 きっと私たちは眠れないだろうから。

読了ありがとうございました!

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― 新着の感想 ―
[一言] すごく、好きです。泣いてしまいました。今夜は彼女達のことを想いながら、寝たいと思います。ありがとうございました。
[一言] まさかの展開で… でも、どんどん引き込まれてしまいました 好きなSFを先生が書いてくれてとても嬉しいし、とてもいい作品で、もう一度読み返してきます! 強くて優しくて美しくて、先生の書く女の子…
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