プロローグ
綺麗な青空が目に写り、救急車とパトカーの音が聞こえる。
「おい!救急車はまだか!?」
「大丈夫ですからね。もうちょっとの辛抱です」
うーん、もう手遅れだと思うけどなー。もうこれ死ぬだろ。走馬灯じゃなくて心残りが見えてきたけど。走馬灯見たかったわ。
私の親、高校生の時にデキ婚したんだよね。お母さんが十六で、お父さんが十八の時。何高校生でヤッてんの。避妊位しろよ。って何回も思った。まあちゃんと生活出来てるから別に良いけどさ。これからが本当心配だよ。私が居なくなったらあの家どうなんの。
そういえば、私が人生で初めて貰った手紙、果たし状だったんだよね。フルボッコにしちゃった石崎さん、大丈夫だったかなぁ。
「みーちゃん大丈夫!?死なないでっ……!」
私の手を握って泣きじゃくる親友の声に、我に返った。
そして、事の発端を思い出した。
簡単に言うと、私は包丁で腹部辺りを刺されたのだ。
昨日私達が大好きな歌い手グループのライブがあって、ライブ翌日の今日、そのままホテルに泊まった地方民の親友と遊んでたんだよね。
そしたら黒パーカーの女の人がいきなり、「あんたさえ居なければっ……!」とか何とか言って、凄ぇ美人な女の人に向かって走っていった訳ですよ。包丁構えて。
あ、やっべ。って思う間もなくその美人さんの元に走ってったら、刺されちゃいました。てへぺろ。あ、可愛くない?そーですか。
ちなみにパーカーさんは凄い呆然として、その後いきなり震えだした。パーカーさんはこう思っただろう。「やべぇ、関係無い人殺っちゃった……」その様子ならもう誰かに危害を加える事は無いと見た。とりま安心。
いや本当ごめんね。無関係な皆様にトラウマ植え付けちゃって。あそこの男の子なんか泣いてるよ。今日の夢が確定しちゃったわ。マジでごめん。
不意に、私の視界に親友が写りこんだ。
そうだこの子、滅茶苦茶可愛いのに滅茶苦茶腐女子なんだよね。でも可愛いんだよね。優しいし。
そーいやこの子の彼氏さんも百合オタだったっけ。ごっついイケメンなのに。
イケメンで思い出したけど、私の弟も顔は良い癖に二次元オタク&厨二病だったわ。本当、誰に似たんだろ。あ、私だったわ。
弟が彼女作るの見る前に死ぬとかマジで心残り過ぎる。樹の好みのタイプも知りたかったのに。つかあいつ彼女出来るかな?この間なんて私に「これオススメだから姉貴もやってみて!」って乙女ゲー押し付けてきたし。
……あ、あれまだ返してなかった。
やべえどうしよう先週やっと全ルート制覇したから返そうと思ってたのにすっかり忘れてた。仕方ない、あやに頼もう。
「あ、や……」
「みーちゃん!?どうしたのっ!?」
「弟に借りた乙女ゲー……全クリしたからっ……返し、といて……」
私の前世の記憶はここまでだ。