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ビバリウム(仮題)  作者: peadhavu
水棲生物編
3/4

A3 集団下校

育葉(いくよう)島。

人口五千人程度の小さな島。

島の真ん中にそびえる霊峰に分けられ、二つの町がある。

私のいる町は反対側より広く、港町として発展した。反対側の町は小さいが工業が発展している。


私の名前は出利葉繭(いでりはまゆ)。中学二年。

小学校と中学校で合わせても百人もいない町。東部の人の中で、私が一番最年長で、小学生低学年の子たちと一緒に集団下校していた。他にも中学生の人たちはいるのだが、今日は半日で帰れたので、そのまま商店街にあるゲームセンターに遊びにでも行ったのであろう。薄情ではあるが、別段仲のいい友達もいるでもなく、小学生に頼られるお姉さんという立場の方が自分の性には合っていた。しかし――

「さすがに自転車はほしい……かも」

私は自転車を持っていない。小学生と集団登下校している私には、みんなと足並みをそろえる必要があるからだ。炎天下の中、子供たちの足並みにそろえて帰る田んぼの農道は、地獄のような気温と湿度になっていた。日陰という日陰もなく、常に熱線にさらされる。小学生たちは学校の取り決めで各自水筒を持っていたが、中学生は任意なので特段用意しない。

元気な小学生たちははしゃぎながら、田んぼの生き物を捕まえたり、あぜ道の草をちぎって投げたりして遊んでいた。適度に水分補給をしながら。そんな様子を見ながら、私はうらやましいのを我慢していた。お姉さんですから。

「みんな、あんまり離れないでね。早く帰らないと熱中症になるよ」

はーい、と元気に返事しながら、遊ぶのをやめない。まあ、元気ならそれでいいよ……もう。


ヘトヘトになりながら、もう少しで雑木林の通りに入る。やった――そう思った時。

「繭ねーちゃん、あれ何?」

田んぼの向こう、蜃気楼の先に、ピョンピョンと跳ねるものが見える。蜃気楼が見せる幻か、と思ったが、私の予感が悪い方向に当たってしまった。

「水棲生物、だわ――みんな走って!!!」

私は小学生たちに雑木林の方へ向かうように指示した。有象無象のちびっ子は私の怒声にただ事ではないと気づいたのか、一目散に走り出した。


――水棲生物。

最近、この島の海に現れるようになった生き物。その凶暴な知性と、殺傷能力のある身体構造により、この港町はまともに漁ができなくなるほどに陥った。なぜなら、水棲生物はほとんどが肉食で、……人を食うのだ。

ただ、今は海とは大分離れていて、安全なはずだ。水棲生物が、海から離れて「狩り」をするなど聞いたことがない。私も、見間違いだと思うことにしたのだが。

(あいつは――水棲生物だぞ)

私の相棒――“しっぽ”が、そう囁いてきた。

(嘘でしょ……ここは海からかなり離れてるのよ)

(どうだろう。水場を経由すれば、上流にも上がってこれるのかもしれん。これはかなりの知性体と思われる)

(どうしたらいい、ここは見晴らしがよすぎる)

私はその前に暑さで死にそうで、考えることもままならなくなっていた。

(それはあなたが決めること)


――こいつ……。


私は暑さで死にそうなのに。

(私がどうこう言ったとして、守られた試しがあるか?)

……ごもっとも。


「あー、わかりましたとも! 戦う。戦いますよ!?」


私は背中に担いだ通学鞄から、ライフルを取り出した。

見た目はボルトアクションライフルのような、シンプルな作りの銃。でも私の改造を施した、特殊な銃。

スカートの中から白いケーブル……もとい、“しっぽ”を接続した。

「よし」

エンジン全開。体中に“しっぽの力”がみなぎるのを感じる。

しかし同時に、体中に熱がこもる。廃熱が追いつかない。脱水症状のせいか、目眩は最高潮。戦える状態じゃない。

……えっ、もしかして、しっぽ、こうなるの見えてた?

(今すぐ水を飲め、水分補給しろ)

私はしっぽの言葉を確認することもできず、意識が飛んだ。


――この後、内気なクラスメイト、星野に助けられ、た? のである。


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