崩壊Ⅲ
彼女、Sの周りには誰もいなかった。
いつもいつも1人でただ本を読んでいた。
どんな本を読んでるのか 聞く度に本は変わっていた。
恋愛、ファンタジー、ミステリー、時代もの.....と様々だった。
何が面白いのかを聞くと
「世界が広がる感覚が好き。」
そう言っていたのを、思い出した。
♣︎
簡潔にいえば、私の世界は狭まった。
Sという名の私とまるっきり考えの違う、別視点からの世界が消えた。
道を外れかければ正し、私の出来ないことを彼女はいとも簡単にやってのけてくれた。
そんな恩人に対して、私は酷いことをした。
そして酷いことをしたのにまだ醜く縋ろうとした。
そして私はSを失ったまま、次の問題へと身を進めて行ってしまった。
♣︎
SはちゅんだけにとどまらずPと仲良くし始めた。
Pは元は仲のいい友達だったが、あまりにもPの性格が悪く思えてしまい結局離れてしまった。
そんな苦手意識のあるPと仲良くされてしまったら、...
って、私は何を...。
これが独占欲というやつなら、きっと私は独占欲の塊だろう。
「S...」
私はSとPの仲が壊れることを願っていた。
♧
転機は起きた。
Yから聞いた。
「SがPに約束をすっぽかされた」
という話を。
Sは約束を破るのも破られるのも嫌い、
しかも今回はPの方から約束したにも関わらず、Pは約束をすっぽかしたらしい。
さらに、SはPにチャットもSNSコミュニティも、ブロックされたらしく、かなり機嫌を悪くしていた。
「S、」
YがSに話しかけた。
「なに?」
「SはPのことどう思ってるの?」
Yも私の聞けないことをちゃんと、しかも本人に聞いてくれる。
私にとってかけがえのない人だ。
「それを聞いてどうするの?」
理由は返ってこなかった。
「え、いや、別にどうも...」
「じゃあ、知らなくていいと思う。」
そう言い残し、Sは教室を離れた。
Yはそのまま教室を出るまでSを見つめていた。
そしてこっちにやってきた。
「何も聞けなかった。あの態度はないよね。」
Sはきっとその話が周りに言いふらされることを予想していたのだろう。
「まぁ仕方ないよ。」
また機会がある。 そう言って私は他力本願な自分に気づかないまま、時を進めた。
♣︎
その日もSはいつもの事ながら一人でいた。
「S、」
私はSを呼んだ。
もちろん、聞こえる声で。
Sはシカトをした。
これは予想済みであった。
「S、そのままでいいから聞いて。」
小説を読んでいるSに向かって語りかけた。
「Sには、いつも助けてもらってた。私はそれを当たり前だと思って過ごしてきた。自分勝手にも程があるよね。馬鹿だと思う。...
当たり前にしててくれてありがとう。私はすごく幸せだった。
.....もし、よかったらなんだけど、また、戻れないかな?私、Sがいないとどうもダメみたいでさ…ダメ、かな?」
私の思いを込めた。
叶ってくれって思いながら、...願いながら、言った。
「そうだね、...」
Sから初めての反応があった、
「!じゃあ、これからも...!!」
「無理かな。」
.....え?...無理?
「え?」
てっきり戻れると、もうそろそろいい頃合だと思って話しかけたはずなのに?.....無理...?
「お前さ、何もわかってないよね。」
Sが小説を閉じて席から立ち上がった。
そして久々に私を見てくれた。
絶対零度の瞳で、私を見た。
「“自分勝手にも程があるよね。”?だっけ?...馬鹿らしい。わかってんならやめろ。
何が“戻れないかな?”だよ。なに、戻れるとでも思ったの?」
彼女の瞳は冷めたまま、凍りついたまま揺るがない。
光すらも映してない。
「世の中なんでもうまく行くと思うなよ。」
彼女は言い終わると同時に静かに席についた。
まるで何事も無かったかのように。
何も見なかったかのように。
何もかも忘れたかのように。
私はまた突き放された。
涙すら出なかった。