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EGOISM。  作者: RYK
4/5

崩壊Ⅱ

「嫌いなら、嫌いって言ってよ!!」




Sに向かって私は叫んだ。




Sは心底嫌そうなムカついたような顔をした。


初めて見た。Sの顔があんなにも感情を表現しているのを。




♣︎




私はやっと、Sに話しかけることに成功した。



「話したいことがある。」




Sは頷くだけで、小説から目を離さなかった。




「今すぐがいい。」



Sが私の言葉を聞いて動きを止めた。




音を立てて本を閉じ、机にそれを置いて私へアイコンタクトをした。


私の後ろをSがついてきた。




「なに、話したいことって。」




Sは相変わらず無表情で冷たい。



普段と何ら変わらない態度だったはずなのに

その時の私にはひどく冷たく感じた。




「そんなに、私のこと嫌いなの。」





「は?いつ嫌いなんて言ったよ。」




Sは首を傾げ、訳が分からん と言わんばかりに眉の形を変えていた。




「私のこと嫌いなら、もっと傷つければいいじゃん。」



「いやだからさぁ、...」



「...い、.......ら、.....ってよ.....、。」



「ん?聞き取れない、何?」



Sは耳を傾けた。




私は息を吸いこみ、叫んだ。





「嫌いなら、嫌いって言ってよ!!」



冒頭へ戻った。






Sは顔を歪めていた。





感情をあらわにし、憎きものを見ているような目。




いつもの綺麗なSの茶色の目が濁っていた。




「...あぁ、わかった。.....私は今のお前が心の底から大嫌いだ。」




Sに言い放たれて、気づいた。




口にしてはならないことを言った。




「お前の望み通り、さよならだ。」



いつもよりも心做しか冷たく見える表情。




氷と言うよりはもう絶対零度と言った方があっているだろう。


それほどまでに冷たく見えた。




あの冷ややかな目を私は忘れることはないだろう。





Sは私から離れ一足先に教室へと戻っていった。




♣︎




「M!大丈夫だった??」



私が教室に戻ると、いち早く声かけてくれたのはSのことを相談していた“委員長”こと“Y(ワイ)”。




背の高くて美人なY。

Sと同様に大切な友達。




「Y...、S怒らせた。」



「あー...そっか、私がSにMのこと聞けたらいいんだけどね…」



YはSを嫌ってる訳では無い。



ただ話しかけていいかがわからないらしい。




「ううん、大丈夫だよ。」




多分何も思ってないはず。




だって、もう本を読み進めているからさ。





「Sは何も思ってないと思うよ。」




私は精一杯笑った。








それから1ヶ月。



何も無かった。





避けられたり とかそんなことは無かった。




ただ存在がないかのように、知らないと言うように生活していた。




それはSも同じだった。




お互いがお互いを無視する。そんな生活が続いた。







しかし、私は自分勝手だが耐えきれなくなった。



ついに私は勇気を振り絞って、Sに話しかけた。




「S、話がある。」



「私はない。」




見向きもされなかった。



初めての拒絶をされた。




“お前が望むなら私もそうしよう。”



そう言っていたSはもういない。





「お願い、話を...」



「二度言わせるな。お前と話すことなど何も無い。」




遮られた。




自分から拒絶しておいて、自分勝手に仲直りを...なんて、虫が良すぎたのだ。




「頼むから、聞いて...」



「黙れ。自分勝手にも程がある。」




“一度離れた心は二度とくっつくことなどない。”




いつか見たような、そんな言葉が頭を流れた。






私は今日、大切なひとを失った。






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