私と彼女Ⅱ
どこか一線を引いている彼女の過去を知るものは同じ学校に進学していなかった。
誰とも群れず、話さず、無表情でただ静かに自分の教室で自分の席に座っていた。
彼女はどこか“話しかけるなオーラ”を出していた。
だから誰も近寄ろうとも、話しかけようともしなかった。
あとからそれを聞いてみれば
「そんなオーラを出した覚えがない。」
とすっぱり断言された。
「ねぇ、あのさ、...まだ別れられないんだけど...」
小説を読んでた彼女の前に向き合うように座りコソッと話をする。
「別れさせてあげる なんて一言も言ってない。私はただあの時のできる限りのことをしただけ。」
迷いのない綺麗な透き通る茶色の目が私を捉える。
確かにそうだ。 と納得してしまった。
「お願い、助けて。」
私は悲願した。名も知らぬ相手に、利益主義をモットーとしてる相手に、...利益は与えないけど助けて と願った。
彼女は冷めた目をしていた。
凍るような鋭い目付き。
彼女は小さくため息を吐いた。
「...やれるだけやるし、善処する。君、名前は?」
「M。」
「Mか、私はS。気をつけてね。私は自分の損得でしか動かないから。」
彼女は人と目を合わせることが少ない。
いつも少し俯き気味か、別の方向を向いている。
♣︎
「やっぱり、復縁したい...」
私はつくづくわがままだと思う。
あれから結局なかなか別れることが出来ず、ズルズルと3ヶ月続いてしまい、情がわいてしまった。
そして彼氏は、Sに相談していることが気に入らない。と言い出した。
もともとSは彼氏とあまり仲が良くなかった。
彼氏がSに お前のことが気に入らない。 と言ったところ、
「奇遇だね。私もそう思ってたんだよ。」
と笑顔で返されたらしい。
そしてSの性格も独特のためあまり人から受け入れられることがなかった。
しかし味方とすれば、心強い以外の何者でもない。
「私はMの彼氏をあまり好きとしないが、お前が好きだというのなら私は動こう。」
そしてSは努力はしてくれたのだが叶わず、3スクロール分の長い長い長文を送られ、3ヶ月で幕を閉じた。
そしてその話をするために、放課後遊びに連れていってくれた。
「お前が諦めるのなら、私も諦める。」
どこか遠くを見ながら、そう言った。
「ねぇ、Sはそばに居てくれるよね?」
嘆くように言った。
きっとSにとってめんどくさいことこの上ないくらいだっただろう。
「知らん。Mが側にいるんなら変わらず私もそばに居るだろう。」
全てはお前次第だ。 とSは呆れながらに答えた。
♧
「好きな人ができた。」
私はSに相談を持ちかけた。
「そうか。良かったな。」
Sはそれだけ言った。
目線は変わらず小説に向いている。
「何も思わないの?早いとか軽いとか。」
別れて1週間と言ったところか。
元々気になっていた人のことを好きだと気づいた。
そしてそれをSに相談していた。
「別に何も。そもそもお前の人生だし、好きに生きたらいいと思う。」
冷たく突き放すような感じで答えるS。
「誰だか気にならないの?」
ちらりと一瞬こちらを見て、再び小説に目を戻し答えた。
「別に。お前を見てればわかる。」
人間観察は得意だ。 とSは言っていた。
「ねぇ、つまんない。」
私はめげずに話しかけた。
「なにか話しててどうぞ。話はちゃんと聞いてるから。」
小説に釘付けのまま応対してくれるS。
「告白はしないのか?」
なに話そうかなー と考えていたら突然降ってきた声。
「悩んでる。」
戸惑いながらも答えた私に返ってきたのは
「伝えずに一生後悔するのと、伝えてたとえ振られても後悔せず進んでいくの どっちがいい?」
私は動きを止めた。
否、止まった。
「後悔しない方...か、.....伝える方かな。」
「もう答え出てんじゃん。頑張れよ。」
私は再度思ったことがある。
やはりSは優しいと。