私と彼女
「私、自分の損得でしか動かないから。」
何度も聞いた彼女の言葉。
なのに君はいつも────.....
「別に、ただ気が向いただけ。」
────...いつも、助けてくれる。
♧
男女共学のとある学校で出会った。
彼女は文武両道、頭脳明晰、眉目秀麗、...とまぁとにかく完璧な人物だった。
ある時まで同じクラスでも、なんの接点もなかった。
私に人生初の彼氏が出来た時。
正直に申して、押されたからとりあえず...で付き合った相手であった。
どうしていいか分からず、なんとかしてくれそう と咄嗟に思い、彼女を連れて教室を出た。
「...なに、いきなり。」
彼女は戸惑っていた。
「あのさ、...昨日彼氏できたんだけど、どうしていいか分からなくて...」
名前も覚えておらず、そして初対面と言っていいくらいの関係。
もし私があの時彼女と同じ立場であれば、面倒事に関わりたくないし、ましてや初対面に助けて なんて言われても断ったであろう。
なのに彼女は、
「...携帯かして。」
ただ一言そう言った。
私はその言葉通り携帯を差し出した。
「いや、ロック開けてチャット開いて。」
いや、流石に...とは思った。
けど、彼女なら何とかしてくれる という期待を捨てきれずにいた私は言葉通りの行動をした。
彼女にロックを開けた携帯を渡した。
ただ短く ありがと。 と口にして彼女はしばしの間携帯とにらめっこしていた。
しばらく沈黙が続いた。
「チャット送っていい?」
沈黙を破ったのは彼女だった。
いいよ と短く私は答えた。
そして打ち込まれた文章を確認して。と言われたので確認してみた。
「君の前の文を読んで、君の口調を真似てみた。どう?そっくり?」
ほぼ完璧に近いくらい私の口調そのものだった。
「え、すご...」
心から出た言葉だった。
彼女はふっと笑ってこう言った。
「君を助けたらなんか利益ありそうだと思ったからしただけ。私は自分に利のある方しか選ばない利益主義の人だから気をつけて。」
彼女は初対面から、私と一線を引いた。