2 異世界
(ここは、どこじゃ?)
真田昌幸は九度山で、64年の生涯を閉じた。
しかし昌幸が目を開けるとそこは見知らぬ天井だった。
(ん?わし、死なんかったかの?)
昌幸は自分の回りの状況を把握しようとし、顔を横に向けた。
(回りは白い布で囲われておるの…)
昌幸は自分がどのような状況なのか全く理解できなかった。そのため昌幸は起き上がって確認しようとした。
だが、起き上がれない。
(うむ?なぜじゃ?)
昌幸はどうにか立とうと手や足をバタバタさせるが、一向に立てる気配が無い。
(立てんのう…まぁ、もう歳で体も衰えておるしの…)
そんなことを考えていると、部屋のドアをノックする音が聞こえた。そしてそのままドアが、開かれ一人のメイド服の女性が、静かに入ってきた。
そして、その女性は部屋の中央に置かれている籠を見ると、昌幸が暴れているのに気づいた。
そして、慌てて昌幸の方へと近づいていき、籠の中を覗きこんだ。
昌幸も急に目の前に知らない人の顔が出て来て驚いた。
(うお!?な、このおなごは誰じゃ!)
昌幸を見て、女性は微笑みながら口を開いた。
「坊っちゃま。起きられましたか?元気があるのは良いですけれども、あまり暴れられますと心配してしまいますよ」
昌幸はこの女性に何を言われているのか理解できず、一瞬呆けていた。しかし直ぐ様ここはどこなのか、お前は誰なのか聞こうと声をあげた。
「あぁあぁ!あう、あう?あう、あう!?」
(喋れぬ!?なぜわしは赤子のような喋りしか…………ん?うん?赤子のような?)
昌幸は恐る恐る自らの手を見た。
(な、なんじゃこれはぁ~~!まるで赤子のような手では無いか!ん?……ま、まさか、わしは赤子に……いやいや!そんな事あり得ぬだろ!)