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友人Aの彼女の話

友人Aのバーテンダーの彼女の話3

作者: 華鳳


Aは少し項垂れながら、ロックの焼酎の氷に口を当てた。


「こないだあなたが夜中に出かけた時にさー」

と、AはAの彼女の口調の真似をしながら話始めた。


僕は、夜中に彼女を置いてどこに行っていたんだ思った。



Aの彼女は、Aの部屋でテレビを見ながらうたた寝をしていたそうだ。

深夜の2時頃だったか、部屋の電気は消えており、テレビの光だけがチカチカと部屋を照らしていた。玄関のドアをガチャガチャする音で、Aの彼女は目が覚めた。

目を凝らすと、ドアノブが動いている。


Aの彼女は、まだ夢うつつの中


『ああ、Aが帰って来たのか』


と思ったそうだ。


そして、ドアはガチャリと開いた。


ドアの前に立つ男は、Aではなかった。


『誰?ヤバい知らない男だ』


と臨戦態勢をとろうと思った時、もう体が動かなくなっていた。


男はどんどんAの彼女に近づいて来る。


『殺されるかもしれない』


Aの彼女はもがこうとするが、全く動かない。声も『う……あ……』と言葉にならない。

男は、顔が見えるくらいまで近づいて来た。その男の顔は、能面の様に無表情で焦点も合っていなかったそうだ。

Aの彼女は、恐怖の中、その男が何かを持っている事に気づいた。


『あれは、黒い……毛の塊……?』


Aの彼女は男の出で立ちと、その何だか分からない物体に震えが止まらなかったそうだ。


そして男はその黒い毛の塊の様なものを、Aの彼女の顔に押し付けてきた。


『うわ、あわわわわ』


それは、毛が柔らかく、材質も柔らかい肉の様だった。


『あ!猫だ』


Aの彼女は、無表情の知らない男に、黒猫を押し付けられていたのだ。


『やめて、やめて』


と声にならない叫びを訴え、そしてそこで意識がなくなったらしい。



「カッパの次は猫かよ」


と僕はその時思わずAに突っ込んでしまった。


朝に目を覚ましたAの彼女は、部屋を見て驚愕したそうだ。

Aの彼女の周りには、黒い毛が散乱していたのだ。


Aの彼女は、「最悪だわ」と思いながら毛を片付け、その後Aに別れを告げた。


「『訪問者が多過ぎて、私には無理』だってよ」


Aはニヤニヤしながら、彼女の口調で言った。


「ちょっと飲み過ぎたから、帰るわ」


と言ってAは席を立ち、カウンターにお金を置いて店を後にした。

Aの後ろ姿は相変わらず丸く、サンダルを引き摺りながら出ていった。


僕はあと少し残ったビールと、タバコを吸いながら一息ついた。


ああ、またAについて何も聞けなかったな。今度で良いか。



そして僕も家路に着いた。





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