沈船に贈る
朽つる鋼はつららのごとくなり
その上にて死に行きた者等は如何なる者等ぞ
幾重の死が折り重なりたるこの海の水底で
出会いし我が身は如何にも小さく
この大鋼塊を沈めたモノに対しては
余りに矮小なり
映るものの居なくなった鏡が
その下に抱いた金庫と共に残りたるその希望
その金庫は護るものを失えり
人は皆忘れしや
沈まぬものはないことを
諸君は矮小なり
離れ行くその沈船に
幾重の死が折り重なりたるこの海の水底で
贈れるのは言葉のみなり
人の栄華は虚しき
我は矮小なり