神様と一緒。
ノリで書いただけなので続くか続かないかは私にもわかりません。
『信じる者は救われる』。
神への信心を忘れなければ、必ず救いが訪れるでしょうという魔法の言葉。
だがそんなもん、俺に言わせればただの世迷い言だ。
信心を忘れなければ、不治の病が治るのか?
神への敬意を忘れなければ、唐突に訪れる理不尽な死を回避することが出来るのか?
違う。
神は何も救わない。
16年のこの人生、確信を持って断言できる。
「大丈夫ですか!?声が聞こえますか!?」
だって今まさに死にかけてるんだからなこんちくしょう。
いつだってそうだ。
神様って奴は一番助けて欲しい時に助けちゃくれない。
学校から帰る途中で居眠り運転のトラックが交差点に突っ込んで。
近所のガキが1人で横断歩道を渡ってて。
反射的にそのガキ庇ってトラックに撥ねられた。
いつだって神様って奴は俺に泥を引っ被らせやがる。
アスファルトの上に仰向けで倒れる俺を救急隊員が呼びかけてくるけど、もう返事なんて出来やしねぇ。
ああ、駄目だ、瞼が重い。
俺はもう死ぬのだろう。
思えば碌な目に遭わない人生だった。
クソッタレ。あの世で神様って奴の面ァ拝める機会があるんなら、その顔面にしこたまぶん殴ってやる。
『……キキキ、じゃあ言葉通り、ぶん殴って貰おうか』
意識がブレーカーを落とす寸前、そんな言葉を聞いた気がした。
「脈拍、呼吸、共に正常。怪我も腕の骨折以外に数カ所の裂傷だけ。正に奇跡だね」
「……はぁ、そっすか」
診療室でレントゲン写真を眺める女医さんに曖昧な返事をしながら、俺は無事だった右手で頬を掻く。
トラックに撥ねられた俺が次に目を覚ましたのは、三途の川の上でも賽の河原でもなく病院のベッドの上だった。
事故の直後、俺は病院に運び込まれ、一ヶ月近く昏睡状態だった。
当たりどころが良かったのか、左腕を骨折したものの、臓器や脳は奇跡的に無傷で済んだ。しかも折れた左腕も驚異的な回復力で繋がりかけているらしい。
俺が庇ったガキも無事だったそうだ。
どうやら俺は『また』くたばり損なったらしい。
「『鏡勾刀』くん。丈夫に産んでくれたご両親に感謝することだ」
『ついでにオレ様にもな』
「………………ども」
女医さんの言葉に適当に返事をする。
………タイトスカートから覗く太腿とガーターをチラ見しながら。
「ん?…おや、隔世遺伝かな?」
「あ?何がっすか?」
「君のお祖父さんも私の脚に釘付けだったのでね。尤も、お祖父さんの方は遠慮無く鼻の下を伸ばしていたが」
「………あのエロジジィ」
『お前もな、エロガキ。キキキキッ』
いい年こいて助平心を隠そうともしない耄碌妖怪の姿が容易に想像できた。
あのジジィは一遍殴る。
「まあ見られて減るものじゃあ無し、私は構わないがね。それに、君のような青少年に見られるのなら、私もまだまだ捨てたものではないのだろう」
女医さんはどうやら男旱の真っ只中に居るらしい。
美人でスタイルもいいのにもったいない。
「立候補してくれてもいいんだよ?」
「………あー…とりあえず返事は保留で」
『なーんだ、ヘタレてんな。男ならどーんと受け止めろよ』
「それは残念。まあ君を口説き落とすのは後日に回すとして、あと数日は検査入院してもらうから、とりあえず今晩はゆっくりと休んでおくことだ」
「どもっす」
女医さんの謎の熱視線にどこか薄ら寒いものを感じながら、俺は診療室を後にした。
「………で、テメェはなんなんだ」
『あー!やっぱり無視してやがったのか!?』
病室に戻って俺が口火を切ると、『そいつ』は敢えて無視されていたことに憤慨した。
ぱっと見た感じ赤鬼のマスコットみたいなソイツは、頭に乗っけた木冠を振り乱しながら赤い肌を更に真っ赤にして金色の瞳で俺を睨みつける。
「………事故のショックでトチ狂っちまったか、俺?」
『命の恩神を幻覚扱いすんじゃねー!』
命の恩人?
こいつの言葉が本当なら、俺はこいつに助けられたって事か?
ってかこいつ、『オンジン』のニュアンスがおかしくなかったか?
「そのちみっこい体でどうやって俺を助けたんだ」
『ちみっこくねぇ!オマエを生かすために神力の大半を注いだ所為でこんな風になっちまったんだ!本来オレ様は八頭身逆三角形の超絶イケメン様なんだよ!』
ふんどし姿のマスコットは俺の言葉に更に憤慨するが、こいつの説明の八割が理解できなかったので何に対して怒っているのかよくわからない。
「シンリキってなんだよ?」
『文字通り『神の力』だ。オマエの素質がオレ様の予想を超えていたからな。お陰でこっちは一向に神力の回復がおっつかねぇ』
「………神?お前が?」
俺の疑問にマスコットがエッヘンとふんぞり返った。
『おうともよ。オレ様は建速須佐之男命といって、それはそれはありがたーい神様だ!トクベツに『スサノオ様』と呼ぶ栄誉をくれてやる!』
「…………………」
スサノオとかいうマスコットは俺の懐疑の視線に気付くこと無くふんぞり返ったまま、ふんすと鼻を鳴らす。
これは始まり。
俺とスサノオ、そして八百万の神々との戦いの日々の始まりだった。
スサノオがなんか某N天堂のZルダの伝説の黄昏のお姫様っぽくなった謎