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よろしくお願いします。


体育祭が始まる前に、前もしたと思うけどざっくりチーム分けについて説明。

我が校は1学年6クラスあり、それを学年毎縦割りで3チーム、赤青白にわけ対抗戦になる。

つまり、1年なんて使いっ走りの下っ端って感じなんだ。


もっとも、応援団に入れば他の係りはしなくても良くなるので自分の競技以外は自陣のテントで結構ゆっくり出来る。

いや、応援はするんだけどさ。


で、何が言いたいかというと。


開会式が終わって自陣のテントに戻った途端、背後からちっこいものが飛びついてきた。

ていっとばかりに背中に張り付いた小さな手の感触に覚えがありすぎて一瞬ヒヤリとする。

まさか『跳んで』きてないよな?!


「あうっ!あだだだぁ!」

「ヤッホー。来ちゃった」

ハルの声に被せるように響く姉貴の声に、肩から力が抜ける。

どうやら姉貴が背中に張り付かせたらしい。人騒がせな!


こんな風に、家族と戯れる時間も取りやすいのだ。



「お早いおつきで」

背中から前の方にハルを抱き直すと、ご機嫌笑顔が炸裂してた。

うん。今日も安定の可愛さ。

紺地に白いセーラーカラーのシャツがよく似合っている。


「もっちろん。入場からバッチリ撮ってるからね〜」

胸を張って宣言する姉貴に頭を抱えたくなる。そういえば今気づいたけど、和海さん本職じゃん。父さん、何気軽に頼んでんだよ……。


「今日のハルは水兵さんかぁ〜。よく似合ってるなぁ」

現実逃避とばかりにハルに話しかけると嬉しそうに顔をペチペチされた。

「あっだっ、あうぁ〜、あなぁな」

一生懸命お喋りしているハルに癒されていると、ヒョイっと肩口から大成が顔を覗かせた。


「よう、ハル。ご機嫌だな〜」

途端にハルの顔がイヤそうにしかめられた。

どうも、何回か会ううちに敵認定したらしく、大成の顔を見る度にこんな顔をするようになったんだ。

ま、人見知りして嫌がるハルを突き回したり、無理に抱き上げたりしてたらこうなったんで、完全に大成の自業自得だ。


「なんだよ〜。そんな顔すると抱っこするぞ〜」

自分に向かって伸ばされる手にイヤイヤと首を横に振りながらぎゅーと強くしがみ付いてくる。

「大成、あんまりやると本気で嫌われるぞ?」

呆れ顔で忠告すれば、テヘペロな顔をしてみせる。

男子高校生がやってもひたすらキモいんだが。


「いや〜、嫌がる様子が可愛くってつい」

ハルにとってはいい迷惑な理由をあっけらかんと言い放つあたり、こいつは馬鹿なのか実は大物なのか迷いたくなる。

まぁ、8割がた単なるお馬鹿だろうけど。




「可愛いの連れてるな〜。親戚?」

突然、七瀬先輩が声をかけてきた。

さっきまで居なかったのに、どこから湧いて出たんだ?

「はい。甥っ子です」

とりあえず返事するも、ハルの顔から完全に表情が消えてる。

人見知りモード発動したな。


「ふ〜ん。後ろの方がお姉さん?そっくりだな」

突如話をふられた姉貴は如才なく頭を下げている。けど、なんだ?目が、警戒してる?

「ユキくん、あまり騒がせても悪いし、そろそろ戻るわね。ハル、おいで」

手を差し伸べられても、人見知りモードのハルは微動だにせず、ただキュッと俺を掴む手に力がこもった。


「送ってくよ。先輩、ちょっと失礼します」

会釈をして姉貴を促せば、どこかほっとした顔でコッチ、と踵を返す。

「先輩、苦手?」

隣りに並びながら何となく尋ねると、なんとも言えない微妙な顔をした。


「う〜ん、何となく、ねぇ」

珍しく歯切れが悪い姉貴に首をかしげる。

「ちょっと強引でふざけるけど、面倒見が良くて統率力ある人なんだけどな」

「あう?」

俺の真似をして首を傾げるハル、可愛い。

身内だけだと表情豊かなのになぁ。


「ま、今後私と関わることはないし、気にしないで。あそこ、テント張ってるから!」

指差されたところには、木陰に簡易テントが張ってあり、青いビニールシートが敷かれている上には折りたたみの椅子まで置いてある。


「うわぁ〜、頑張ったなぁ」

思わず苦笑が漏れるのはしょうがない。

救いはそこら辺には、同じようなテント組が固まっていることだろう。


「居心地いいわよ?」

母親がこっちに気づいて手を振ってくるのに返しながら姉貴が笑った。

「これならハルも遊べるし、快適よね〜?」

「あい」


ハルが楽ならそれでいっか、なんて思ってる俺は多分終わってるんだろう。

後悔はしないけどな!









読んでくださりありがとうございました。

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