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幸人君家はほのぼの仲良し家族♪
やって来ました。体育祭当日、の、朝。
え?途中過程は無いのかって?
あったとも、色々な。イロイロ………。
思い出したら遠い目をしてしまいたくなる日々、は、あえて語りたく無い。
てか、思い出したく無い。
なんで一般生徒の俺が、委員達の尻を蹴り飛ばす様にして働いてたんだ?
単純な発注ミスからはじまり、悪ふざけを組み込もうとする面々を説教し……。
てか、教師。仕事しろ。
「学生主体がうちの伝統」なんて旗印を盾に放置し無いでくれ。
いかん。
取り乱した。
そんなこんなを乗り越えての当日だ。
感慨もひとしおというものだろう。
だと、言うのに……。
「お母さま、お弁当の量が多く無いですか?」
朝起きたら既に起き出した母親がセッセと唐揚げを揚げていた。
其処までは、まぁ良い。唐揚げは大好物だ。
ただ、なんで重箱がテーブルの上に鎮座されてるんでしょう。
しかも、そのうち2つには既にぎっしりとご飯物が。
「多く無いわよ?だって5人分だもの。あ、大成くん所、他に誰か応援来るのかしら?もう少し持ってったほうが良い?」
良い笑顔で返された。
イヤイヤ、チョットマッテクダサイ。
「まさか、見にくる気なの?」
恐る恐る聞けば、不思議そうな顔をされた。
「行くわよ?別に家族見学禁止されて無いでしょ?」
高校生にもなって、体育祭に家族が来るとか、なんの罰ゲームだよ!?
しかも弁当持ち。
無いでしょ?無いよな?!
「ユキ〜、父さん休日出勤入っちゃって行け無いけど頑張れよ?和海君にビデオカメラは託したからな〜」
ダイニングテーブルは重箱に占拠されていたため、リビングのほうで朝食を食べていた父さんが、非常に残念そうな表情で口を挟んでくる。
仕事入らなきゃ来る気だったの?父さん?
そして、もしかしなくても姉貴夫婦までくるのか!?しかも、カメラ付き?
面白そうに笑う大成の幻覚が見える。
なんで、こんな日に朝から精神力ガリガリに削られなきゃいけないんだ。
思わずリビングに倒れこんだ俺を父さんが不思議そうな顔で覗き込んでくる。
「なんだ?まだ、眠いのか?ホラ、コーヒーのんでシャキッとしろ」
渡してくれるマグカップは嬉しいけど、なんか違うよ、父さん。
のろのろと起き上がりコーヒーを飲みつつ目をやれば嬉しそうな父母の姿。
ま、姉貴の時は波乱万丈すぎてこんな平和な楽しみ滅多になかったしな……。
高校時代はストーカーとの戦いだったみたいだし。
(しょうがない。親孝行と思って諦めよう)
用意されていたサンドイッチを摘みながら、ため息とともに自分を納得させた俺は、衝撃のあまり1つ失念してたんだ。
姉貴夫婦が来るってことは、当然、爆弾も付いて来るってことを。
「じゃ、おばさん達来るんだ。やった。昼飯が豪華になった」
朝のやり取りを迎えに来た大成に愚痴れば、小躍りして喜ばれた。
昼飯、混ざる気満々なんだな……。
まぁ、母さんもそのつもりだったみたいだけど。
「高校にもなって家族総出で応援に来られる俺の立場に憐れみは無いのか……」
思わずボヤけば肩を叩かれた。
「ま、愛されてる証拠じゃん。それに、他の視線なんて気にならないくらい大変だろうし」
ニンマリ意味深な言葉にくびをかしげる。
「別に、大変では無いけど?前準備は巻き込まれたけど、始まっちゃえば、俺にできることなんて無いし。自分の出場競技以外は、基本応援してるだけだぞ?」
「何言ってんだよ?家族総出って事は、ハル君も来るんだろ?」
大成の言葉に、歩いていた足がとまる。
「姉貴達が来るって事は……そうだよ。ハルも当前来るわけで。俺を見つけたハルがそばに来たがら無いわけがなくて……」
ブツブツと呟く俺の横で、大成が呆れた顔をしている。
「大変じゃ無いか!」
「気づいてないお前にむしろビックリだよ」
叫んだ俺に少し離れつつ大成の言葉なんて、焦る俺の耳には当然入っていなかった。
さぁ、ドキドキの体育祭の始まりだ。
読んでくださり、ありがとうございました。