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鏡の迷路はハルにはかなり不思議な空間だったみたいだ。

まぁ、四方八方に自分が居るし、たまに変な姿に変形してるしな。

今も、縦長になった自分を不思議そうに眺めて動かなくなってる。

鏡をペチペチと叩いて確認しても、後ろには誰もいないぞ、ハル?


しかし、角を1つ曲がるたびにこの調子じゃいつになったらゴールに着くのか。

だけど、夢中になってるのを遮るのも無粋だよなぁ。


てか、可愛いから邪魔したく無い。

不思議そうに首をかしげる様子なんてもうっ!

思わずムービーで記録を残した俺は間違っていないはずだ。


て、訳で。

おそらくゴール済みのみんなには、もう少し待ってもらおう。

ラインおくっといた方が良いかな?


ノンビリとハルの後ろを着いて歩きながらそんな事を考えていた時、当然その子達は現れたように見えた。





「やっと見つけた。ここ、鏡のせいか気配が乱れて捕まえにくいね」

コテン、と困ったように首を傾げる少年は酷く色素が薄いのか光の加減では金色にも見えそうな茶色の髪と赤茶の瞳の持ち主だった。

陽に当たったことがあるのかと思える程色がしろく、まるで女の子の様に愛らしい顔立ちをしている。


「まぁ、お陰で他の奴等と離れたみたいだし、結果オーライじゃん」

そう言ってニヤリと笑うのは、いかにもガキ大将的な少年。

こっちは片割れとは対象的に髪も瞳も真っ黒だ。意志の強そうな瞳はまるでお気に入りの玩具を見つけたかのようにキラキラと輝いている。


四方が鏡で囲まれたこの迷路は色んな面が反射して、直接ではムリでもかなり遠くの場所にいる人影も写り込んだりする。

つまり、他の人間が近づいて来たら気づきやすいはず、なんだ。

だけど、そんな気配もなく、この少年達は唐突に後ろに現れた。

それは、つまり。


咄嗟にハルをシッカリと抱き込む。

「………君達は誰だい?」

尋ねた声は低く、警戒をあらわにしていた。

それに、少年達は少し目を見開き、なんだか傷ついたような顔をした。


「そんなに怖い顔すんなよ。俺達はただ、迎えに来ただけなんだからさ」

黒い少年の方が、困ったように言うと手を広げた。

「迎えって、どこに?」

「僕達のいた所。本当はそっちの赤ちゃんだけで良いんだけど、出来ればお兄さんにも来て欲しいんだ!」

茶色い方の少年が、勢い良く叫ぶ。

「僕達、赤ちゃんのお世話なんて分からないし、きっと泣かせちゃうから。だから、お兄さんも一緒に来て?」

必死のお願い、なんだろうな?

赤茶色の瞳が潤んでいる。

けど、やろうとしている事は間違いなく人攫いだ。

素直に頷くのも変だろう。


ハルを抱っこしたままジリジリと後ろにさがって退路を探す。けど、ここは迷路の中で、運が悪いことに俺の後ろの通路は行き止まりなんだよな……。

少年達の背後にある通路か斜め横のにとりあえず飛び込むか……。さて、どうしようかな?


「言っとくけど、俺テレポーテーション使えるから、半端に走ったってすぐ捕まえるぜ?」

どこか得意げな黒い少年の言葉に「あ、そっか」と思いつく。

欲しいのがハルなら、まぁ、手はあるかな。


「分かったよ。お手上げだ」

ハルを片手に抱いてホールドアップ。

抵抗の意思がない事を示せば、少年達が近づいてくる。

その素直さにこの子達が、まだ本当に子供なんだと分かり少し胸が痛むけど。

しょうがないよな。俺が1番大事なのは、ハルなんだし。


「なぁ、俺テレポーテーションなんてしたことないからさ、心の準備くれよ」

片手をシッカリと繋がれながらそう言うと怪訝そうな顔をされた。


現れた時2人は手をつないでいた。

で、今も俺とそうするって事は、共に跳ぶには対象に触れていることが条件なんだろう。

後、少年達だけで来たって事は、運べる人数も制限あるのかな?


「そう。カウントして。3からで良いよ」

そう言ってにっこりと笑って見せれば、「しょうがないなぁ」と偉そうに言いながら素直にカウントしてくれる。


「3、2、1、ゴ「ハル、パパだ!」

たぶん「go!」と言おうとした瞬間、叫ぶ。

自分の体が不思議な感覚に包まれ、ぶれる視界の中で腕の中から消えるハルと驚きに目を見開く少年達の顔が見えた。


うん。嘘つきでごめんな。

心の中で謝りながら、体の内側が捻れるような奇妙な感覚に、俺は意識を手放した。



読んでくださり、ありがとうございました。

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