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すみません。今回早速赤ちゃん出てきません。たまにこんな時もあります。
タイトル詐欺じゃないです!次は出ます!たぶん……。
あっという間だった夏休みを終えて、最初にやってくるのは体育祭だ。
最近では5月にする所も増えてきてるみたいだけど、うちは昔から変わらず10月第1土曜日。近隣からの見学も多くなかなかの盛り上がりを見せる為、毎年生徒も気合が入っている……らしい。
まぁ、俺みたいにやる気の無い生徒も勿論いる訳だが。
ホームルームの時間を使って出場種目を決めているんだけど、みんな結構真剣でやや引き気味なんだが……。
運動、別に嫌いじゃないけど、大人数でワイワイってのがどうも……なぁ。
ボッチ気味の俺にはなんとなく居心地が悪いんだよ。
借り物競争とかでお茶を濁そう……、なんて考えてぼぅっとしてたら、いつのまにか春の体力測定の記録が引っ張り出されていたらしい。
おい、担任。
個人情報保護はどうなった。
「ユキ、足速いじゃん。100と200どっちが良い?」
司会してた隆太に声をかけられ顔が引きつる。
出るのは決定なのか?拒否権は……、うん。なさそうだな。周りの目が痛い。
「……100でよろしく」
「了解。あと、リレーと応援団な。先輩に見目良いの入れとけって言われててさ」
軽〜い調子でサクサクと勝手に名前が書き込まれていき、思わず机とお友達になってしまった俺は悪くないとおもう。
ちくしょう。
体力測定、手をぬいとけば良かった。
大成と昼食かけて競争なんてしたのが悪かった。つまり、賭けを持ちかけてきた大成のせいだな。後で八つ当たりしとこう。
大成が聞いてたら理不尽だと叫びまくりそうなことを考えながら、どうにか気持ちを立て直す。
あぁ、面倒くさい。
いささか不貞腐れてたらホームルームが終わった後、困り顔の隆太が近寄ってきた。
「そんな嫌そうな顔してんなよ。お祭りなんだから、一緒に楽しもうぜ」
「……うるさい、裏切り者。せっかく学級委員長なんて権力持ってんだから、俺の記録くらい隠匿しとけよ。俺はパン食い競争でもでてノンビリする予定だったのに」
机に突っ伏したままブツブツ言えば、ぽんぽんと頭が撫でられ苦笑が降ってきた。
「みんな見てんだから隠匿とか無理だろ。良いじゃん、こんなのは参加したほうが楽しいって」
お気楽な言葉にため息しか出てこない。
「100歩譲って走るのは良いとして、応援団はマジ勘弁して欲しいんだけど」
本気で憂鬱そうな顔してたみたいで、隆太が首をかしげる。
「うちの体育祭縦割りじゃん。1年じゃどんな無茶振りされるか分からん。下手したら、俺は暴れるぞ?」
中学の時、無理矢理女装させられそうになって大立ち回りしたのは黒歴史だ。
「大丈夫だよ。総大将の先輩、昔からの知り合いだけど無茶言うような人じゃないし。絶対、楽しいからさ」
にっこりと言い切られ、しぶしぶ頷いた。
まぁ、騙されてやろう。
「じゃ、早速放課後集まりあるから、帰るなよ〜」
が、続けて降ってきた言葉に、俺は再び撃沈するのだった(泣)
放課後。
応援団の集まりに引っ張って行かれた教室には結構な人数が集まっていた。
1クラス4人の6クラス分+有志の衣装作成班の代表者だそうだ(1学年6組まであり、それを1、2組赤、3、4組青、5、6組白で分けられてるんだ)
昼食後の最初にある応援合戦は体育祭の目玉の一つらしく、毎年それ用の予算が組まれる程らしい。力の入れ方凄いな。
「やっぱり引っ張り出されたんだ」
説明されつつも1の多さに呆然としていると、ポンと肩を叩かれた。
「大成、お前もいたんだ」
見知った顔に思わずホッとして肩にだきつく。
「わお、熱烈だね〜。人気者の大成君が応援団に引っ張り出されないわけが無いっしょ?」
「……自分で人気者、とか。普通は痛い人だかんな?」
思わず半眼でつぶやけば、ニヤッと笑われた。
「ところが、俺が言うと単なる事実確認なんだよな〜」
ドヤ顔がむかついたので、思わず手が出ました。後悔はしてません。
「ユキ、みぞおちは反則……」
うずくまってうめいている馬鹿は放っておこう。周りにいる奴らの顔が引きつってる気もするけど、多分気のせいだろう。
「よーし、みんな集まってんな〜。適当な席つけ〜」
いつの間にか上級生っぽい人達が入ってきて黒板の前で手を叩いた。
みんなが手近な席に着いたところで、教壇の前に立った3年が挨拶をする。
「今回、青組団長を任された七瀬だ。当然、目指すは優勝あるのみ、なので、みんな協力よろしく。2、3年は大体は覚えてると思うが、1年もいることだし、改めて体育祭までの流れを説明するぞ」
堂々とした態度によく通る声。
体格は大きいが、表情がどことなく柔らかなため、威圧感はあまり無い。
親しみやすい兄貴って感じだな。
しかし、上に立つ人間って顔も整ってるのが基本なのか?
団長もだが、その周りを固めている幹部メンバーも趣は違うがみんなイケメンだ。
まさか、顔で選んで無いよな?
そんなバカなことを考えてたらいつの間にか説明と幹部メンバーの紹介まで終わっていた。
ま、後で大成か隆太に確認しとけば良いか。
大きく伸びをして固まった背筋をほぐすと、後ろの席を振り返る。
「帰ろうぜ、大成」
「ユキ、絶対話聞いてなかっただろう」
「ん?なんか必要な情報あったんなら教えて」
否定もせずに返せば苦笑いされる。その横で同じく笑っていた隆太が、あって顔をして固まった。
訝しく思う前に、ぽん、と誰かの手が頭に置かれた。
「駄目だろう、ちゃんと話聞か無いと。ペナルティ1な」
そうして聞こえてきた声は、さっきまで散々聞いていたもので。
ぎこちなく振り返れば、面白そうに笑っている七瀬先輩+α(すまん、名前聞いてなかった)の姿。
ヤバい?
先輩方、おもちゃ見つけた子供みたいな顔になってますよ?
どうやら、早速目をつけられたみたいだ。
思わず乾いた笑いが漏れた俺は悪く無い、と思う。
………たぶん。
読んでくださりありがとうございました。
パシられる未来が見えますねぇ。
お話はキチンと聞かんといかんのです(笑)