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よろしくお願いします。
遂に治癒まで出来ちゃったよ。
これって、よくわかんないけど凄いことじゃないのか?
「あう?」
大成と思わず顔を見合わせていると、ハルがキョトンと首を傾げた。
褒めてくれないの?と言わんばかりの表情に我に返る。
「治してくれてありがとうな〜。もう、痛くないよ」
お礼と共に頭を撫でてやると、嬉しそうにニコニコ笑っている。
うん。無邪気で可愛い。
可愛いけど、この力、姉さんたちは把握してるのか?
なんか、聞くのが怖いのはなんでだろ。
そもそも、ハルって他にどんなことができるんだろう?
「………なぁ、気づかなかったふりでスルーって」
「いや、ダメだろ。一応確認。ホウレンソウ大事」
バッサリと大成に切り捨てられ項垂れる。
ですよね〜。
「まぁ、座ろうぜ」
「いや、俺ん家だから」
大成に突っ込みつつ、ソファーに座りこめば、隣の部屋からふわふわと積み木の箱が飛んできた。
「あだぅ〜」
ハルがキラキラの顔で見上げてくる。遊びたいんだな。
誘われるまま、積み木のところまで行くと箱を開けた。
「ハル、手でやろうな〜」
「あい」
最近、細かいコントロールが上手くなってきて、積み木積むのもESP使おうとするんだよなぁ。
手先が不器用になりそうで不安に駆られる今日この頃。
ハルの手に積み木を握らせて促すのが日課になりつつある。
真剣な顔で積み木をひとつ、ふたつと積み重ねていく。
3つ目を積んだところでひと息。
「すごいな〜、ハル。上手、上手」
すかさず褒めて頭をなでれば、にぱっと満面の笑みが返ってくる。
うん。
褒めるの大事。
人間、失敗を責められるより、成功を褒められた方が絶対成長するよな。
4つ目を握りそうっと載せようとして、バランスを崩したハルは積み木に手をぶつけてしまった。
ガシャガシャと崩れた積み木に下唇を突き出し、悔しそうな顔。
泣くかな?と思ったけど、ハルはどうにかこらえて、もう一度1から積み出した。
1つ、2つ、さっきは一休みした3つ目を積んで、今度はそのまま続けるみたい。
知らず、見守るコッチの拳にまで力が入る。
頑張れ、ハル!
そうして。
ハルは無事に4つ目の積み木を乗せて見せた。
誇らしげなドヤ顔でこっちを仰ぎ見るハルに満面の笑みで親指を立ててみせる。
「すごいな、ハル!新記録じゃん!」
「あっきゃぁ〜う!」
嬉しそうに奇声をあげつつ、膝に飛びついてくるハルを抱きとめる。
その時、伸ばした足が積み木に当たって折角積み上げた塔は、一瞬のうちに崩れてしまった。
「………だ」
その瞬間のハルの呆然とした顔に反射的に吹き出しそうになり、どうにか飲み込む。
いや、だって。赤ちゃんってあんな表情するんだな、って!呆然っていうか、愕然っていうか……。
目がまん丸になって口がぱかっと開いて、だけど出てきた声が「………だ」って。
凄く小さな声で「………だ」って!
一瞬の沈黙の後、ソファーからこっちを見ていた大成が吹き出した。
「こら、大成!」
「だって、ハルっ………、ハルがっ」
慌てて諌めるも、一度ほころんだ笑の決壊は止まらなかったらしく。
笑い転げる大成に、ハルの顔がみるみる歪んでいった。
「うえぇぇ〜〜〜ん!!」
大音量で泣き出すと共に、積み木が勢いよく大成目掛けて飛んでいく。
「イテッ!痛いって。ハル、悪かった!笑った俺が悪かったからヤメッ!」
次々と飛んでくる積み木に頭を庇いながら慌てて謝罪するも、頑張りを笑われたハルの気が治まるはずもなく。
「うあぁぁぁ〜〜ん」
「ま、ソフト積み木だし、そんな痛くないだろ。自業自得だ。甘んじて受けろ」
「ユキの人でなし〜!」
「えぇぇぇ〜〜ん!!」
肩を竦める俺に頭を庇いつつ叫ぶ大成。
泣き叫ぶハルと乱舞するカラフルな積み木たち。
「………なにしてんの、あんたたち」
それは、呆れた顔の姉貴がやって来るまで続いたのだった。
ちゃんちゃん。
子供の失敗を笑うなど言語道断。
例えおかしくてもぐっと我慢です。
まぁ、小さい子の愕然とした顔、可愛くて笑っちゃいたくなる気持ちは分かるんですけどね。
大成は正に自業自得って事で。
読んでくださりありがとうございました。




