プロローグ
※『残酷な描写あり』は念の為、です。シビアな内容を取り扱う予定です。不快な思いをされた方がいらっしゃったら、大変申し訳ありません。
※R15は小学生以下には不適切な言葉が出てきそうなので、念の為に付けました。
日常の中の、何気ない一つ一つのこと。
一秒、一分、一時間、一日……すべての瞬間で『何か』が起きていて、それは時にとても小さく些細なことであったり、あるいは、とても大きな事件であったりする。
人は生きている限りそんな様々な事を積み重ね、今に至るのだ。
存在したのは、喜びや光だけではない。
痛みも、闇も、涙も、孤独も、心を引き裂き踏みにじるようなことでさえ。
過去にあったことは、どれ一つとして、『今』を作るのには欠かせないことなのだ。
そう。
俺の過去も、彼女の過去も。
その道を歩んできた二人が出会ったのは、その道を歩んできたからこそ、だ。
何か一つでも違っていたら、きっと、何も始まらなかった。
ほんの少し何かがずれていたら、俺はただの客で、彼女はただの店員で。
それで、終わり。
俺は彼女を知らないままで、彼女も俺を知らないままで。
――俺も彼女も、順風満帆な人生じゃなかった。
傍から見れば、憐れまれるような人生かもしれない。
幸せ溢れる生い立ち、ではないのだろう。
だが、俺が俺だから、彼女が彼女だから、全てが始まった。
俺と彼女が出逢えたからこそ。
これまで生きてきたことの全てにちゃんと意味があるんじゃないか。
――そう、思えた。