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学園都市

 ふらふらと歩いていたら、看板があった。日本語ではないのに、何故か私には読めた。


「ケイト……守ってくれてるの?」


 そうとしか考えられなかった。国語は好きだけど英語が壊滅的な自分が、異世界の言葉を解読できるなんて有り得ないのだから。同時に、だから命を狙われてるのかと納得する。異世界の人間ですらこんな恩恵にあずかれるなら、悪用したいと思う人間は多かろう。


 でも私なんかにこんな力使って大丈夫なのかな。故郷に呼び戻される前には苛めっ子達までやっつけてくれて……命を狙われてるのに、余力はあるんだろうか? 一人だからか、思考が悪いほう、悪いほうへと転がる。慌てて頭をふって前向きになる。


 ケイトを信じる。死体を見るまでは……うう想像しただけで泣きそう……諦めるものか。


 でもここが、この世界がケイトの世界なのかすらはっきりしてないのが辛い。もし当たりだったとしても、確実に遠いところにいるだろうから、現在地を把握しないと。それに助けるにしたって何の策もなく突っ込む訳にもいかないし……つまりは情報がほしい!


 だから学園都市とか大当たりじゃない! よおし調べるぞ――!




「申し訳ありません。証明書を持っていない方にはお貸しできない決まりとなっております」


 図書館っぽいところに行ったら、事実上、門前払いだった。司書の人が入ろうとした私に身分証明書の提示を求めた。


「今手元に無いんですけど、見るだけでも駄目ですか?」


 に対する答えが先ほどのもの。柔らかに言っているけど、証明書がないなら帰れ、だよね。


「失礼しました……」

「またのご利用をお待ちしております」


 思ってないだろ!


 図書館を出て見回すと、ここの制服なのか皆一様にローブっぽい服を着ていた。それに比べて私は、レトくんのかつてのお家でくすね……頂いた服で浮いているのなんの。ロスと一緒に入った部屋が衣装部屋だったらしく、着たきりすずめの私はとっさに貰っていった。地味なのを選びました、なんて言い訳にもならない。悪いとは思ってる。思ってるんだけどこっちも必死なんだよ。異性に異臭でも指摘されたら死ねる。あと、逃亡に変装は必須だし。


 ああでも何人かは旅の人なのか、制服じゃない人もいる。……何の救いにもならない。ああいう人にだってこの世界の戸籍はあるんだろうに私は……。これからどうしたら。


 ぼんやり道行く人々を眺めていると、目の前で男の人が財布? らしきものを落としていった。慌てて手にとって見ると、証明書らしきものが見えた。


『これを使えば施設が利用できるんじゃないか』


 悪魔が囁く。けど……。


「あの、すみません。これ落としましたよ」


 泥棒した後でさらに窃盗するほど落ちぶれたくはなかった。


「え? ……!!」


 ちょっともさい感じの、眼鏡をかけた男の人だった。素材は悪くなさそうなその人は、私を見るなり驚愕に目を大きく開けた。え? 何?


「は、花……」

「鼻? に何かついてます?」


 ちょっとこれは意外。そういえば身だしなみなんて最低限しか気を使ってないよ。最近ドタバタしてたし。


「あ、いえ、その! 財布、ありがとう」

「?? はいどうぞ。無くさないで良かったですね」

「……」


 彼の顔が心なしか赤い。それになんかモジモジしてる。財布が戻ったのに去ろうとしない。しきりにこっちを見たり逸らしたりと繰り返している。


 あーこれはあれですね。人間一回でも異性に告白されると余裕ができるし見識が広がる。こいつ惚れたな。


 ……恨むなら趣味の悪さを恨むがいい。私はケイト以外はどうでもいい人間なの。何も気づかない振りしてにこにこしていると、向こうから食いついた。


「き、君の名前、聞いてもいいかな」

「はい、チサっていいます。貴方は?」

「ぼ、僕はマイスル。マイスル・ティリティ。あ、あの、お礼にこれから食事でも……」


 お金持ってなかったんです。ありがと!

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