表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/23

学校生活

  〜学校生活〜


翌日。オレはさくらと一緒に家を出た。さくらは定期を買ったらしい。

「買ったんだ。」

「うん。買ってくれた。」

「へぇ。」

オレはそのまま、行きかけて……。

「まて、買ってもらった?誰に?」

「校長先生。」

「校長?うちの学校の?」

「うん。なんで、校長が?」

オレは思わず、あたりを見回した。まるでそこにいるかのように。

「寝坊したんだって。」

「ね、寝坊?」

「うん。普段はいないって言ってた。」

「あ、あっそ。」

 ほっとして、電車に乗り込んだ。定期代は返さないといけないだろうなぁと考えていた。面倒を見るということは、定期代金も出さないといけないんだろうか?

「お。二人で登校か?」

電車に乗るなり、木村に会った。

「あれ?今日、亜紀は?」

「ああ、あいつは今日は部活。」

「部活?ってなに?」

さくらが聞いた。

「陸上だよ。」

「陸上?」

「そう、走るの。長距離の選手なんだ。」

「へぇ。」

オレはなんだか、さくらの言った言葉になにか違和感を感じていた。さくらは部活の内容を聞いたのではなく、部活とは何かを聞いたのではないだろうか?オレは慌てて、首を振った。こいつのことなんか、考えている場合じゃない。次の駅で、東さんが乗ってくる。

その次の駅。東と近藤が乗ってきた。

「あら、今日は一緒なのね。」

「おはよう、理江。」

「あ、いや、たまたま、方向が一緒だし。」

オレは慌てて、言ったがあまり気にしていないようで、東はさくらに聞いた。

「昨日は一人できたの?よく道がわかったね。」

「ううん。校長先生と一緒に来たの。」

「校長と?電車で?」

「あー、なんか、寝坊したらしいよ。校長でも、寝坊することなんてあるんだな。」

「あるんだ。」

 木村も驚いたように言った。

「寝坊?……そう。」

なんだか、怪訝な顔をしたまま学校につくまで、東は黙り込んでいた。聞いたことがないが、そんなに校長の寝坊がおかしなことだろうか?

オレの頭にははてなマークが浮かんでいた。


 電車を降りてからの学校までの道のりが、こんなにも長いものだとは。あっちこっちからヒソヒソと聞こえてくるのだ。

「婚約だって。」

「え、あの人が?」

「結婚?もう?」

「誰が?」

 木村にも聞こえているのか、言った。

「おまえ、人気者だなぁ。」

「こういうのは人気者って言わないんだよ。まったく。」

ちょっとオレは後ろを振り向いてみたが、さくらと東さんはまったく気にせずに、しゃべりながら歩いていた。オレも安心してそのまま歩きつづけ ていた。

 クラスにつくと、席は隣同士。早く席替えにならないものだろうか。オレはなんとなく、ため息をついた。

 一時間目の授業でさくらが、きれいな英語を話すことがわかった。

「どっか外国にでもいたのか?」

 さくらはそれには答えずにただちょっと微笑んだ。

「ひみつー。ふふふ、本当に知りたい?」

「いや、いい。」

 なんとなくその笑顔に負けたような気がしそうで断った。

 二時間目の授業でさくらが、数学がすいすいとける事がわかった。

「得意なのか?」

「うーん。普通?」

 その普通のレベルでも解けないオレって一体……。


 昼休み。トイレから出てきた、オレは東さんに会った。

「や、やぁ。」

 我ながらこんな台詞しか出てこない自分が情けない。

「ちょっと、話があるんだけど。」

 その言葉だけで、オレの心拍数はかなり高いものになっていた。

「さくらさんのことで。」

 ちょっとがっかりしたが、やきもちでも焼いてくれているのだろうか?廊下の隅まで行くと、聞いた。

「なに、話って。」

「あのね、朝、彼女は昨日、寝坊した校長先生と一緒にきたって言っていたでしょう?」

「うん。」

「でも、うちの校長先生って、学校からすぐのところに住んでいるのよ。」

「そうなの?……え、じゃ、電車になんて乗らないのか?」

「そうなのよ。なんで、わざわざ、電車に乗ったのかしら?」

「……さぁ?一緒に来たのが校長じゃないのかもな。」

「でも、クラスまでつれてきたのは、たしかに校長先生だったわ。」

「ああ、そういえば。でも、そんなに気にすることでもないんじゃない?」

 オレは明るく言ったが、東さんはなにやら考え込んでいるようだった。

「……そうねぇ。」

 彼女はそう言って、クラスへと戻っていったが、どうも、表情は晴れなかった。そんなに気になるようなことだろうか?


 教室に戻ると、田中はさくらを部活に誘っていた。

「コンピューター部にこない?」 

「陸上部でもいいよ。」

 亜紀が言う。

「放課後のグラウンドで青春の汗を流す!いいでしょ。」

「いいかぁ?」

「田中君は、インドア派だからねぇ。」

さくらはそれを聞きながら、にこやかに微笑んでいた。

「あ、勇太。いまねぇ、部活の話をしていたの。」

「あっそ。」

 オレはガタゴト音と立てながら座った。

「勇太は何をやっているの?」

「放送部。」

「なにするの?」

「放送。」

 オレはそっけなく言った。

「そんな説明があるか!放送部はね、食事中に曲を流したり、伝達事項を流したり、呼び出しをしたりするんだ。体育祭や文化祭の司会進行なんかもやるんだよ。ちなみに、俺は野球部だけど。マネージャー募集しているよ。」

「へぇ。理江は?」

「え、ああ、私も放送部よ。」

「そっか。」

 オレは東さんを追いかけて放送部に入ったのだ。

「お、妻として一緒の部活に入るか?」

 木村はにやにや笑いながら言った。

「おい……。」

「ううん。」

 さくらは首を振った。

「放課後は用があるから。」

「何?塾?」

「ううん、うめちゃんに料理教わるの。」

「うめちゃん?」

「オレのばあさま。」

「ああ、そっか、一緒に住んでるんだっけ。」

 亜紀から聞いたのか、木村は知っているようだった。

「お、同棲か?」

 田中がからかった。

「同居だ、同居!」

 オレは慌てて、東さんのほうをうかがったが、彼女はなにやらまだ考え込んでいるようだった。さくらがこっちを見ているのにも気がつかずに。


 放課後。オレは東さんと二人で無言のまま歩いていた。さくらは先に帰るとさっさと帰っていった。さっきまでは何人か仲間がいたが、だんだんといなくなっていくのだ。駅につくとやっとオレは声をかけた。

「まだ、考えているの?」

「え?」

「校長のこと。」

「え、あ、うん。それもあるんだけど、他にもあるの。」

「なに?」

「ほら、今日、部活の話をしていたでしょう?」

「うん。」

「そのとき、最初にさくらちゃん、部活っていう言葉の意味がよくわかってなかったみたい。あの子、部活がない、外国から来たのかしら?」

それならあんなに英語を綺麗に話せるのも頷ける。しかし、オレは思い出していた。

「でも、あの子が持ってきた荷物の中に、本があったんだけど、フランス語だったよ?」

「フランス?」

「オレは、中をみてもわからないけど、本人がそう言っていた。」

「フランス……。」

「あ、あのさ、明日校長に会いに行くんだ。なんか、定期代を出してもらってもらったみたいだし。オレ、そのときにでも聞いてくるからさ。なんなに考えることないよ。」

「……うん。」

 電車が来た。その音にかき消されて、東が何を言ったのか聞き取ることはできなかった。

「答えてくれるかしら……。」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ