カラオケにて
放課後。
オレと仲のいい三人組が声をかけてきた。さっき席を替わった木村もそのうちの一人だ。
「遠藤、カラオケ行かないかー。」
「あー、婚約者がいるからダメかぁ?」
田中も言った。もちろん本気で言っているわけではないが、冷やかされて、なんとなくむっと来た。
「行くよ。」
田中が誘った。
「あ、さくらちゃんもどう?」
しかし、彼女は首を振った。
「ううん、歌える歌もないし、用があるから。じゃあね、勇太。」
さくらは手を振って、去っていった。
「じゃあねぇかぁ。可愛いな。」
「うんうん、遠藤にはもったいない。」
「あのな。」
オレは抗議したが、そんなことは聞いちゃいない。
「笑顔がいいんだよ。」
「そう?」
「そうだよって、亜紀……。」
木村の彼女が後ろにいた。
「へぇ、ああいう子が好きなんだぁー。へぇ。」
「いや、あの、もちろん、亜紀のほうが可愛いよ。」
「ふんっ。」
「あ、亜紀……。」
木村は慌てて、彼女の後を追いかけていった。
「あーあ、怒らせた。」
「そりゃ、怒るよな。」
「だろうな。とりあえず、玄関で待ち合わせだから行こう。あ、近藤たちもカラオケ行かないか?」
くるりと振り向くと、東とその友だちの近藤が立っていた。田中は、この近藤さんに気があるようだった。
「行く?」
「いこうか。」
女同士で結論が出たらしい。
カラオケには仲直りしたのか、木村たちと田中、東さんに近藤さんで、全部で六人で行くことになった。
カラオケにて。
まだ、オレの婚約の話は続いていた。部屋に入るなり、木村が言い出した。
「それにしても、急な話だよなぁ。高校生で結婚なんて。」
「俺なんてなんにも考えてないけどね。」
「オレだって!急に聞かされたんだ。」
とにかく、東に聞こえるように、誤解されないように、一生懸命に事の顛末を話した。
「でも、結婚するんでしょ?」
亜紀が言う。こいつは、オレと小学校の時からの付き合いのせいか、ずけずけものを言う。
「知り合ったばっかりで、できるか!つーか、しねぇよ!」
「やっぱり、家が大きいから政略結婚とかじゃないのか?」
「ええ?」
俺は怪訝な顔をした。
「家は兄さんたちが継ぐんだよ?政略結婚するなら兄さんたちだろうが。だいたい、いまどき、そんなものあるか?」
「あら、ドラマだとあるわよ。」
近藤が言う。
「オレの場合は現実に起こっているの。」
「ねぇ、あの子、一緒に住んでいるのよね?」
「あ、ああ。」
「そうなの?」
亜紀が目を丸くした。
「ばあさまが勝手に家に入れたんだよ。」
「あのこ、ちょっと言葉に癖があるけど、どこから来たの?」
東が唐突に言った。
「さぁ?」
「ええ!?知らないの?」
亜紀はますます目を丸くして言った。
「え、いや、聞いたけど、答えてくれなかった。」
「あやしぃー。」
マイクを使って響く声のままで、田中が言った。
「なんだよ、なにがだよ!」
「身分隠して花嫁修業かなぁ。」
近藤はなにやら夢を見るかのように言った。
「よし、俺、これ歌う!」
急に田中は数字をいれて、最近のドラマの主題歌を歌いだした。なんとなく、今の話がオレの頭の中でぐるぐる回っていた。政略結婚……。




