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引越しと登校


「あー、ここにおいて。」

荷物はそんなに多いことなく、やってきた。

「手伝ってやれ。」

父さんの命令でオレはしぶしぶ荷物を出すのを手伝っていたのだが……。なんだか、本が多い。

「何語?」

「それは、フランス。」

「全部?」

「ううん。あれこれ入ってる。」

なにやら、洋書が多い。

「どこにいたの?」

桜はそれには答えず、聞いた。

「それより、勇太郎とサクラの写真ない?犬のよ。」

「え、探せばあるんじゃないかなぁ。」

「欲しい。」

「わかった、探してくる。」

オレは、それを口実に部屋から出て行った。本だらけのじいさまの部屋はなんとなく威圧感を感じる。写真はすぐにあった。しかし、オレはぎりぎりまで持って行こうとはしなかった。

「勇太、写真は?」

聞かれて、やっと渡した。

「これ。」

「ありがとう。」

さくらは、それをすぐに写真立てに入れて、机の上に飾った。なにやら、チャイムが鳴った。しばらくすると、母親が箱を持って、やってきた。

「さくらさん、これ、制服。」

「ありがとう、由里さん。」

「制服?」

「そう、勇太郎と一緒の学校に行くの。」

「えーーーーー。」

オレはありったけのいやな顔をして見せた。しかし、さくらはそんなことはお構いなしに言った。

「明日から一緒に行こう。」

そう、葬式と、この騒ぎだけでゴールデンウィークは終わった。


「送っていけ。」

父の命令で、一緒に家を出たが、切符の買い方がわからないようで、オレは定期を使って先に行った。面倒を見ろとまでは言われていない。

学校についたオレは、あっちこっちから、慰めの言葉をもらった。

「大変だったな。」

「葬式、すごかったな。」

「大丈夫か?」

「ご愁傷様。」

そんな中で。

「遠藤君。」

声だけでわかった。東 理江さんだ。オレはひそかに、彼女に思いを寄せている。

「ああ、ひさしぶり。元気だった?」

「うん。遠藤君も大変だったね。」

「まぁ、ねぇ。」

「おらー、席につけー。」

担任がやってきた。

「今日は転入生を紹介する……はずだったんだが、ちょっと来てなくてな。」

クラスがざわついた。

コンコン 

ドアがノックされて、ドアが開くと、そこには見知らぬ男性がいた。

「校長先生、あ、君が?」

なにやら、ドアをはさんで話している。オレは、校長はあんな顔だったのかと改めて考えていた。始業式などで顔を見ているはずだが、あんなに近くで見たことはない。

「あ、勇太!」

 さくらはオレを見つけるなり、うれしそうに手を振った。オレは慌てて、知らないふりをしたが、遅かった。

「なんだ、遠藤、知り合いか。じゃ、木村、席を移動してくれ。」

「はい。」

 木村はそのままさくらが座る場所に移動した。

「彼女は、さくらさんです。じゃ、出席とるぞー。」

 出席をとり終わると、担任は言った。

「おい、遠藤、彼女の校舎案内頼むぞ。」

 返事を待たずに、担任は出て行った。出席をとり終わると、一時間目との間に、生徒がわっとやってきた。ほとんどは野次馬だ。オレのことはほっといて、彼女にばかり男どもは声をかけていた。

「遠藤と知り合いなの?」

「どこから来たの?」

「苗字は?」

 あれこれ飛んでくる質問にさくらは無言で笑っていた。

「遠藤と、どういう関係なわけー?」誰かが聞いた。

「婚約者よ。」

「馬鹿!」

 オレは慌てて、止めたが遅かった。

「えーーーーー。婚約者ぁ!?」

 オレは慌てて、東さんの方を見つめたが、彼女はぷいっと顔を背けてしまった。とにかく、野次は止まらず、ああでもない、こうでもないとうるさい。ぶちっと何かが切れたオレは大声で言った。

「うるさい!じいさんの命令なだけだ!好きでもなんでもない!」

 自分で言うのもなんだが、温厚なオレが怒鳴ったせいかクラスは静かになった。

「はーい、一時間目始めますよー。あら、どうしたの?」

 ちょっとんとした一時間目の先生の言葉にクラスメイトたちはようやく、自分の席へと移って行った。


 昼休み。

「勇太、案内して。」

 さくらはさっきの言葉がなんでもなかったように、オレに言った。

「勝手に回れよ。」

「あ、じゃ、僕が案内しますよ?」

「オレも。」

 次々に声がかかる中、さくらはきっぱりと言った。

「勇太以外の男性とは二人では出歩かない。」

 オレは呆然として、さくらをみると、彼女はにっこりと笑った。

「俺たち、全員なら?」

 男の一人が言った。

「じゃ、私が案内してあげる。」

「東さん。」

 そこには、たしかに、東さんがいた。

「うん。ありがとう。お名前は?」

「東 理江。」

「理江さんだね、私、さくら。行こう。聞きたいことがあって……。」

 なにやら女同士、にこやかに出かけていった。

「に、してもさぁ、可愛いな。」

「なぁー。」

 男子たちはにやにやし、女の子たちはなにやらこそこそ話している。

「女子トイレはここよ。」

「あー、ありがとう、これだけは聞きたかった。あ、グランドが見える!」

 ぱたぱたと走っていく、後ろ姿をゆっくりと追いかけて、追いつくと、理江はそっと聞いた。

「さくらさんはどこから来たの?」

「ん?勇太の家から。」

 理江は目を丸くした。

「え、一緒に住んでいるの?」

「うん。勇太のパパとママ、あと、うめちゃんと。」

「うめちゃん?」

「パパのママ。」

「ああ、おばあさんね。」

「そう。」

「え、いつから住んでいるの?」

「勇太郎がいなくなってから。」

「おじいさんね……勇太郎っていうのね。」

「うん。」

「それじゃあ……。」

 キーンコーンカーンコーン。

「あ、チャイム。戻ろー。」

 さくらはぱたぱたと走っていった。それをゆっくりと理江は追いかけていった。


 弁当の時間も東が声をかけてきて、さくらは彼女たちのグループに収まることになったようだった。オレと一緒じゃないと食べないなんて言い出さなくてよかった。メンバーは、東と近藤だ。

 弁当は、母さんが作った。いままでは一人分だったけど、二人分なら作ってもいいと、作ってくれたが、はっきりいって、足りない。どっちにしろ、パンを買いに行く手間は省けなかった。


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