兄たちの調べ
〜兄たちの調べ〜
翌日。
兄たちはばぁさまの「来ないと、遺産はビタ一文もやらないよ!」という、脅しとばぁさまの迫力に負けて、やってきた。
「いなくなったぁ?」
兄たちも知らなかったようで、驚いたように言った。
「え、でも自分でいなくなったなら、出て行っただけだろ?」
「連絡もよこさないでよ?」
「あんたたち、さくらについて知っていることを言いな!」
ばぁさまに脅されてか、兄たちしぶしぶと話をしだした。
「わかったよ。」
その言葉に、みんなの視線が一気に勇一に注がれた。さすがに少々たじろいだようだ。
「まぁな。一応、三男とはいえ嫁に来る相手のことを調べないわけにはいかないかなと。ちょっとね。」
「今までに食べた夕食の共通点を考えろって言っていたよな?」
「ああ。」
「結局なんだったのさ?」
勇一はがっかりしたように言った。
「なんだ、わからなかったのか?いいか、全部、誰が食べるか決まっていない手作りの料理ばかりだ。」
どうも、勇太には理解しきれていないようだ。
「手作りっていうのはわかるけど、誰が食べるか決まっていないっていうのは?」
「いいか、カレーや煮物は一つの鍋で作るものだろう?人がスライスしたような刺身なんか食べたことがあるか?唐揚げだってなんだって、たくさん作った中から自分の食べる分を選べる。」
「……それがなに?」
変わりに勇次が言った。
「つまり、そこに毒はないって証明になるだろ。」
勇太は聞きなれない言葉を聞いたせいか、目を丸くした。
「どく?そんなものあるわけないじゃないか。」
「お前はな。彼女には可能性がある。」
「え?なんで彼女が毒を入れられることがあるのさ?」
「もちろんされたことがもうすでにあるからだ。」
「誰に?」
「あの子の兄弟にだ。俺はあの子に玄関まで遅らせたときに、その話をした。聞いてみると、あの子は毒に反応するキットまで持っていたよ。ついでに、解毒剤までな。」
勇一はため息をついた。
「だけど誰がそんなことするのさ?」
「彼女の兄弟たちだ。」
母親が急に言った。
「だけど、ずっと一緒にお料理をつくっていて兄弟なんて一度も話題に出てきたことなんてなかったわ。お母様……。」
「あたしだって、聞いたことないよ。」
「そりゃそうさ。本当の兄弟じゃない。あれ、父さん!」
兄の言葉に振り向くと、たしかに、そこには、父さんと柊がいた。
「お父さん!」
「やぁ。さくらちゃんがいなくなったって、いうから。慌てて、仕事を何とか、片付けてきたよ。」
父さんはさすがに疲れたのか、どさっと、ソファに腰をおろした。
「お前たち、どこまで調べたの?さっさと続きの話をなさい!」
ばぁさまの追求におそるおそる、兄たちは、話し出した。
「たぶん、海藤氏は知っていると思うんだけど、海藤氏はじいさんから依頼を受けて、相続の一部を受け取るに当たって確かに内密に調べたみたいだ。さくらには男性二人と女性一人の兄弟がいるけど、血のつながりはないんで、遺産はさくら以外には行かないということをじいさんと取り決めたそうだ。」
「血がつながってない?」
「兄弟どころか親ともつながってないんだ。」
勇次が言った。
「どういう意味だい?」
ばぁさまは少し心配そうに聞いた。
「さくらは子供のころから天才だったようで特別なプログラムのもと、育て上げられたんだ。それを見込んで今の家族、リーマン氏が養女として引き取った。」
「本当の親は?」
母親が聞いた。
「母親は死亡し、父親は蒸発。彼女は施設にいたんだ。リーマン氏に引き取られたさくらは会社の一つを任せてもらえるほどの才女だった。」
「会社?」
母親は目を丸くした。
「会社といっても小さな規模のものじゃない。当然子供がトップにいたら問題になる。彼女は裏方に回っていたが実質動かしているのは彼女だ。ところで、リーマン氏はもううちのじいさんより年を取っていてかなりよぼよぼだ。そんななか、最近になってとんでもないことを言い出した。」
「なに?」
「遺産だ。」
「あたり。自分の遺産を四人の子供たちに分けると言い出した。」
「そら、もめるだろうなぁ。」
「実際、一人は死にかけて病院にいる。長女に当たる子だ。爆弾が車につまれていたらしい。意識があるが、かなりの重傷だ。」
「なんで、そんなことに……。」
「遺産を巡って兄弟で殺しあいってことか?」
「そうだ。ばれた場合、リーマン氏は遺産を渡さないと堂々と言っているからこっそりやっているんだ。過激なのは長男のキムだな。」
「キム?」
ばぁさまもオレと同じことを思ったのか、聞いた。
「日本人じゃないのかい?」
「全員バラバラだよ。えっと、さくらが一番下で日本人。姉のフランシスはフランス人。長男は中国人だし、次男はイギリス人だ。親である、リーマン氏はアメリカ人だったかな。」
勇次が言った。
「じゃ、さくらも危ないんじゃないか。」
「だから日本に来たのさ。お前の婚約者として。」
「え、意味がわからないわ?」
母親は困ったように言った。
「急に、会社の社長が、外国に長期でかけますなんていったら、会社が危ないんじゃないかと、社員は疑う。そんなのことになったら会社は混乱を起こし、つぶれてしまう。だから、花嫁修業を理由にして、日本に隠れていたんだ。」
「そぉ……なんだ。だけど、なんで、オレなのさ?兄さんたちだっていいじゃないか。なんで、オレの嫁なのさ?」
「俺達はもう社会人だろう。父さんの後を継ぐ可能性が高い。そんな企業の人間同士が婚約になんてなったら、テレビが喜ぶ。ここにいますって、言っているようなものじゃないか。」
あっさりと、勇一が言う。
「その点、お前はまだ未成年だ。顔も出ないし、三男だからテレビも来ない。まだ経営にもかかわってないからな。」
勇次は笑いながら言った。




