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公園へ

うろしていても怪しいことはあるまい。

木見外公園というのは、そんなに大きな公園ではないが、別に小さくもない。ブランコに、シーソー、滑り台に、砂場。鉄棒とジャングルジムがある。小さい頃はそれだけあれば十分な遊び場だった。しかし。

「こんなサイズだったかなぁ?」

大きくなってから改めて訪れてみると、かなり印象が違う。はっきり言って大きい場所とはいえない気がする。

「あ。」

さくらを公園の端っこのベンチで見つけた。しかし、よく見ると、隣に誰かいる。オレは、そっと後ろから近づいてみる気になった。公園の出入り口は二箇所だ。しかし、それ以外の場所からでも、木の間を通っていけば、いけないことはないのだ。

まずは覗き込んだ。そして、わかった。さくらの隣にいたのは、オレの家の周りをうろうろしていた、あのオールバックの奴だった。しかし、さくらが迷惑がっているというようなことはないようだ。それよりも二人してなにやらノート型のパソコンを覗き込んでなにか話しているようだ。

しかし、ここからでは声が聞こえない。オレはそっと音を立てないように近づいていった。が。忘れていた。今日、朝からかなりの雨が降ったことを。ついでに、ちょっとした下り斜面になっていたことを。すべった。

「う、うわぁ。」

「誰?」

 するどくさくらが振り返った。

「あ。」

「あ、いや、その。」

「勇太!なにしてるのよ!」

「いや、たまたま見かけたもんだから。」

「たまたま?」

パソコンを持った男は疑わしそうに言った。

「また、後ろから脅かそうと思ったんでしょ。」

「う、まぁ、そんなところ。」

まさか、話を盗み聞きしようと思っていたとはいえない。オレはぐしょぐしょになった制服を脱いだ。

「あーあ。」

さくらが言った。

「クリーニングだな。」

 オレはため息混じりに言った。

「んー。そろそろ衣変えだし、ちょうどといえば、そうかもね。」

「ところで、あんた誰?」

オレはパソコンを持っている男に聞いた。

「僕は……。」

「ああ、サクラの知り合いよ。犬のね。」

「前もそう言っていたけど本当か?」

「証拠を見せよう。」

男はパソコンを見せた。そこには。

「じいさま!に、サクラじゃないか。まだ生きていた頃のか?」

「そうです。」

「なんで、なんであんたが、これ持ってるんだ?」

「僕が撮った写真だ。それをパソコンに入れているので。」

「なんで……。」

「サクラを捨てたのは僕だった。僕が高校生の頃に、友人から子犬をもらって家に帰ったら、急に母親がアレルギーになって、それで。ずっと誰かが拾ってくれるのをこの公園の隅で見ていました。そしたら、このじいさんが孫と一緒に来たんだ。たぶん小学校入学前かなぁ。その孫が見つけて、拾っていってくれた。僕は何度目かの散歩の時にじいさんに声をかけたんだ。サクラのことを聞きたくて。そしたら、会わせてあげようって。なんどか、ここで話したんだ。」

「その孫って、もしかしてオレ?」

「そうみたいですね。」

「やっぱり。……本当にサクラの知り合いだったのか。」

「信じてなかったの?」

さくらが頬を膨らませた。

「いや、だって。家まで来るから。」

「あ、すいません。この間、サクラの墓へ行ったら女の子が掃除していたから。それで。」

「墓の場所まで知っているの?」

オレは目を丸くした。

「ええ。いつだったか、一緒に歩いているときに、散歩コースの気の多いところで、じいさんがここに墓を立てたいんだって言っていたことがあるから。それで。」

「だけど、小学生の頃まではオレも一緒に散歩していたぞ。一度も会ったことなんかないじゃないか。」

「ありますよ、二回くらい。」

「え。」

「覚えてないんだ?」

「普通は小学生の前にことなんてはっきりとは覚えていませんよ。あなたじゃないんですから。」

「え、オレが小学校前って時に、高校生ってことはいま、30くらい?」

「越えましたよ。」

 男性はしみじみと言った。

「だけど、サクラが死んだのはもっと前なのに。」

「日本にいなかったんです。墓を見つけて、やっと知って。じいさんが亡くなったことも、最近知ったんですよ。」

「そっか。じいさまの墓には行った?」

「ええ。人間のさくらさんの案内で。あ、こんな時間。じゃ、僕はこれで。さくらさん、また今度に。」

「はい。」

男はさくらににこやかに微笑んで、ついでにオレに会釈だけして帰っていった。

「あー、まだ雨が降りそうだねぇ。」

空を見上げて、さくらが言った。

「そうだなぁ……。」

「帰ろ。」

「うん。ところで、さくら。」

「なに?」

「いつあんな奴と知り合いになったんだ?じいさまの知り合いならオレにも教えてくれてもいいじゃないか。」

「だって、家で食事以外で勇太が居間にいたことなんてある?」

そういわれてみると、なんだか、自分の部屋にばかりいた気がする。

「ないかも。」

「かもじゃなくて、ない。」

「そうか?」

「そうだよ。」

どうやらその言い合いもオレの負けのような気がしてきている。


携帯が音を鳴らして鳴った。

「はい。あ、いえ。彼女と話はしましたが、邪魔が入りまして。ええ。大丈夫です。ごまかしましたから。はい、はい、ええ。それじゃ。」

 オールバックの男はにんまりと笑った。


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