校長 再び
〜校長再び〜
オレが登校するまでに雨はすっかり上がっていたが、折りたたみの傘だけはさくらに持たされた。オレはこの一ヶ月ですっかりさくらと一緒に登校するのにも慣れた。もう婚約者がどうだとか、噂する者もいない。東さんは体調が万全ではないからと、メールを近藤さんに送って休んでいた。
そして、終わりのチャイムとともに、さくらは先に帰る。オレは、今日は部活がないから追いかけて、一緒に帰ろうとしていたが、靴を履いて外に出たとたんに校長先生に引き止められた。
「遠藤君。」
「はい。」
「ちょっといいかな?」
「はぁ。」
正面きってダメとはいえまい。オレはまた校舎内に戻ることになった。何度来ても校長室は緊張する。
「あのね、君の婚約者のことなんだ。」
「さくらですか?」
「そう。……その、結婚は卒業してからかな?」
「えーと。」
どう説明しろというのだろう。
「わかりません。」
その返事に校長はギョッとしたようだった。
「え、じゃ、卒業前に結婚するのかい?」
「い、いえ、それはありませんよ。」
「あ、ああ、そう。」
あきらかに校長はほっとしたようだった。
「あの、なんでさくらのこと、そんなに気にするんですか?」
「ん?ああ、いや。ちょっとね。あ、じゃ、結婚の話は別に進んでないんだね?」
「ええ、いまのところは。」
「そうか。わざわざ引き止めて悪かったね。気をつけて帰ってくれたまえ。」
「あ、はい……。」
オレは首をかしげながら、校長室を出て行った。なんで校長はあんなにさくらのことを気にするのだろう?




