第二話;同じ者
「ジン、残りなさい。」ディークの顔は意も言わせぬ顔だった。
「なんだと?」ジンはその見幕さに不信を抱いた。
「サボった罰だ、先生の話を聞きなさい。」
「ちぇっ・・・。」舌打ちをしながらジンはディークを睨んだ。その顔は怖がっているということなど微塵も感じない勇ましい姿だった。けして、戦いに行くということではないが何故か闘争心があたりの空間の権利を握っていた。それに気付くのはルージィアだけだった。ジンはディークの後をついていく間も、頭、首、背中、その三ヶ所を順序良く上から下へ嘗め回すかのように見て、背中まで言った後反対から下から上を嘗め回すかのように見た。そして、ふと気付くとディークは立ち止まりドアを開けた。そこは会議室だった。説教する場所がなかったのか殺風景な場所だった。この部屋は、どんなに声を張り上げたとしても誰の耳にも入らないし視界にも入らない奥の部屋だ。たぶん、その理由で会議室だったのかも知れない。
(説教か・・?たく、めんどうなこった・・・。)
会議室に通されたジンは一通り会議室を眺めた。
「ジン・・・。」深刻そうな面持ちで微かな声で言葉を発した。
「なんだ?」ジンは軽々気付かなかったように弾む声で言葉を放った。
「君の・・・・君の両親の事なんだが・・・
*
「クソ教師のバカヤロー。」
ジンは、丘の上で叫んでいた(叫ばなくちゃストレス解消にならないからな・・・。)
『君の両親は、事実上亡くなっていると記されてある。』
『は・・・・、なんだよ・・・いきなり・・・。』
『真実は、確かめなくてはわからないだろう。』
『なんで、ディークが知ってんだよ?!』
『ふざけやがって・・・・』
『ジン!』
『うぜーんだよ!クソ教師!』
「はぁ・・・・。」いろいろ知ってしまったこと輪吐き出すように溜息をついていた。正直な所
ジンは、迷っていた。(『いつか違う世界に旅にでる。』とか、言って・・・。なんなんだよ!俺はこんなに根性のないやつか?)ジンは、また木陰にいた。座る様子もなくただ立っていた。
「ちくしょうー!」木を握りこぶしで何度も叩いた。どう見ても怒りがあらわになっていた。
「なにがよ?」ルージィアはそっと後ろから声を掛けた。優しい声だったがジンの顔は闇に沈んでいた。「あ・・・ルージィア。」ジンは顔を隠し目をそらす。ルージィアはそんなジンを見て心の記憶に沈んでいた。
「知ってたんだ・・・ジンの両親のこと・・・。」と、重い口を開けた。表情は暗く声は微かに震えている。「ふーん。」陽気な声を取り戻そうとジンは軽く流す言葉で答えた。
「何よ!その言い方。」そのいいかげんな態度に怒りが込み上げてきた。
「俺より先に知ってたんだろうが・・・あのクソ教師と同じだな・・・。」捨て台詞のように吐いた。「先生は!・・・なんでもない・・・。」口ごもり言おうとしなかった。
「いいんだよ、親が死んでいただろうと、旅にでることに変わりはねー。」ジンはまだ捨て台詞のように吐いた。(うそだ・・。今は、まだ迷っているに・・・。)ジンは、自分の言葉に嫌気がさしていた。「じゃあ・・・!」いきなり明るい声が飛び交った。
「ん?」ジンは思わず拍子抜けしたように問い返した。
「私も・・・私も旅するよ。ジンと一緒に・・・。」目を上目遣いにして返答を待っていた。
「やだね。」さっぱりした口調で答えた。正直そういわれて嬉しいはずだ。しかし、陣はちゃんと考えていた。
(だけど、巻き込んでしまっていいのだろうか?違う世界には、魔物が出ると聞いている・・・俺、守れんのかな?こいつを・・・)
「監視役として行かせてもらうよ!」後ろに手を組み陽気な声で言い返す。
「やだ。お前となんて旅できるかよ。」本当の気持ちを隠し反対をした。
「もう知らないんだから!バカ。」とうとう、怒り出した。ルージィアはとても気性が荒かった。そして、その愛くるしい頬を背を向けて膨らませていた。
「お前には、本当の両親がいるだろう?」ジンは少し落ち着きを戻しちゃんとした意見を述べた。
「へ?」ルージィアはこういうときこそ怒って声を張り上げると思っていたに違いない。しかし、
「だから、大切にしろよ・・・」ジンは優しく微笑んだ。
「ジン・・・・」ルージィアはジンが遠い存在に見えたらしい。後を追いかけるように一歩進み出た。「ちょっと、散歩してくる。」ジンは木の陰から離れ道を歩いた。ルージィアはジンの背中めがけ「ジン!」と叫んだ・・・。
*
(クソッ・・・嫉妬か?両親のいるやつに嫉妬している自分が弱弱しくて嫌いだ。やっぱり、旅にでるぞ。俺の親だって死んだって決まった訳じゃないんだ。でも、自分のために旅に出る。親なんて関係ね―・・・・。
もう、誰にも止められねー。)
それにしても、どうでんのかな?この町は封印されてんだよな。此処から出たやつはまだいないって聞くし・・・。
「ジンか・・・。どうしたぁ?」
突然男の声がした。その声をしたほうを向くと太陽が眩しく黒い影だった。しかし、何秒かたってから太陽が雲にかかり、その人物の顔がやっと見ることが出来た。が、クソ教師ディーク。
「ディーク・・・もう俺に構わないでくれ。」
本当に俺は構わないで欲しくなかった。それは、こいつが嫌いなだけでなく嫉妬心でもなくて。
今は、ルージィアのことが気に掛かっていた。それに、良い考えが浮かんでこなくて苛立っていてつい八つ当たりをしてしまいそうだったからだ。
「ジン、君は本当に旅に出るんだね?」
「ああ。わりぃーかーぁ?」
と、その場を後にしようと立ち上がった瞬間。
「僕・・・知ってるんだ・・・・。」
「あぁん?なんだよっ!はっきりいえよ!」
ジンの、怒りのボルテージは100%をゆうに越えていた。
「この、封印された町から出る方法を・・・」