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『魔術師の杖』表紙語り  作者: 粉雪『魔術師の杖』コミックス2巻12月14日発売!


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5.3巻の制作

「ライアスとミストレイの表紙が見たいです」


 3巻は初めて読者さんから要望が寄せられた。


 販売サイトにレビューを書かれる方はいても、編集部へ直メッセージを送る方は少ない。


 けれど編集部に『直』が、いちばん効果が高い。


 販売サイト側から出版社へ情報提供はないし、担当者もレビューをいちいち見ない。


 酷評を食らうとダメージを受けるため、見ないと決めている作家さんもいる。


 それに電子書籍はいろんなサイトで読めるため、全部を見て回るのも難しい。


 そんな訳で、担当者や作家がレビューを読むかというと、人によるとしか言いようがない。


 本当に何かを伝えたい人は直で来る。


「〇〇を表紙にして」

「〇〇をもっと登場させてほしい」

「人物紹介があると、誰が誰かわかりやすい」

「コミカライズが見たい」

「キャラクターや書影のポストカードがあるといい」


 重ねて言うが、何か要望があるときは編集部に直!


 作家がアイディアを出して、なかなか取り合ってもらえないことでも、読者さんの要望なら検討される可能性が高い。


 すぐに実現しなくても、頭の片隅にちょっと置いてくれる。


 初の要望。


 当然、私もよろづ先生も張り切った。


 と・こ・ろ・が。


 初心者あるある。本文を読んでもライアスが何を着ていたのか、まったく描写していなかった。全然気にしてなかった作者がここにいる!


 ライアスファンから怒られるのも当然で、反省しつつ衣装や状況などを相談して決めた。


 話の流れからいって、ライアスを表紙にするなら3巻しかなく、彼のいろんな表情を見せたかった。


 だから表紙、挿絵2枚とも、彼を描いてもらうことにした。


「最初のイメージはミスリルの甲冑だったんですけど……画面映えを考えたら、濃紺の騎士服がカッコいいでしょうか」


「そうですね……騎士服でいきましょう」


 実はよろづ先生の推しはライアスで、りりしい姿絵を描いて下さっている。どうみても鎧に気合が入っている。


 3巻の表紙では騎士服を採用したものの、鎧姿もいつか描いて頂こうと、それからずっと考えていた。


 ようやく描いてもらう機会を作れたのは9巻の挿絵で、ライアスがドラゴンの前で勇ましく旗を振る。


 本当に長編を上梓し続けるというのは大変で、自分でもよく粘ったと思う。

挿絵(By みてみん)

 なろうでは最初、ドラゴンに乗るライアスとライガに乗るネリアが並び、別々に飛んでいた。


 1巻でネリアが王都入りする場面と、印象をダブらせたくて、夕暮れの王都上空を飛ぶ蒼竜ミストレイにふたりで乗せた。


「あの場面を1巻の挿絵で見たかった」という、読者さんの願いにも応えたかった。


 表紙となる絵に合わせて文章を組み立て、改稿作業を進める。


 絵が完成する頃には、すでに校了間近となっている。校了直前に修正するのは難しいから、齟齬がないよう慎重に打ち合わせを重ねた。


 よろづ先生から確認される。


「ドラゴンはワイバーン型?それとも四つ足に翼?」


「ワイバーン型で。錬金術師の話です。生物学的に正しい形でお願いします。ミストレイの色ですが、設定では紺に近い青と考えていました。けれど夕暮れなら浅めの色がいいですか?」


 私からも色味の相談。すぐによろづ先生から返答がある。


「……そうですね。明るめのミストブルーが映えると思います」


 ミストレイの色は浅めの青となった。


 続いては物語の重要な小道具の色や形も、ひとつひとつ決めていく。私はネットで検索した、リンゴの花の写真を送る。


「ネリモラの名前や植生は、ネモフィラから来ています。造形は五弁花で桜の花にも似ていますが、芯に近い部分には赤みがあり、可憐さのなかに力強さも感じさせます」


 打ち合わせをしつつ、私は丘いっぱいを覆うネリモラの花を想像した。世界を創るってそういうことだった。

挿絵(By みてみん)

 できあがった表紙は暮れなずむ空に、光の加減で色あいを変えていくシャングリラの街並み……微妙なグラデーションがみごとだった。


 あいまいな中間色を用いつつも濁った感じもならず、沈む太陽に照らされたふたりの周囲を、魔素の光が舞うように飛ぶ。


 ライアスの表情は柔らかく、服も明るい色調にまとめたネリアは、表情も可愛らしい。


 そしてエクグラシア上空を吹く風も感じられる。


 夜と昼では服にあたる光も変わり、目に映る色も変化する。


 よろづ先生には昼間や逆光、夕暮れ、海中、シャンデリアの光、月光、かがり火とオーロラ、花火……と、さまざまな光源でイラストを描いて頂いている。


 それができる色彩感覚がマジで凄い。


 よろづ先生は光の表現が多彩で、素材の質感すらも描きだせるイラストレーターさんだった。


 これが印刷されるのは四六版と呼ばれる、小さな四角い紙だということを忘れそうになる。


 この表紙でようやく、蒼竜ミストレイが公開された。


 よろづ先生のキャラデザに大興奮した。表紙では頭だけだったけれど、6巻や9巻の挿絵でもしっかり描いて頂いている。


 想像上の生物が描けるのは、すごい力量だと思う。


 挿絵①はライアスとレオポルドが真剣な表情で、剣を交える迫力あるシーンにした。


 ラフではレオポルドは髪を結んでおらず、こちらは小説に合わせて直してもらった。


 挿絵②は……どういう風に切りとるか、どのアングルでとらえるか、何を見せたいか、ふたりの髪形はどうするか……と、何度も打ち合わせた。


「ネリアの背中を見せたいです!」


 そう主張したのに、ドレスのデザインを見せてもらってまた悩む。


「か、かわいい……ドレスもちゃんと見せたい……ううう」


 どうせなら3Dプリンターでフィギュア化したい。


 よろづ先生のデザインはラフでも素敵なので、公開できないかお願いしていたけれど、それが許されたのは7巻になってから。


 お姫様みたいなネリアを、自分ひとりだけが見るのは、すごくもったいなかった。


 小説はどうしても、「全部は見せられない」というジレンマがつきまとう。


 コミカライズでドラゴンや竜騎士たちに絵がついて、どれほどうれしかったかは言うまでもない。


 悩んでいたのを汲んで下さったのか、よろづ先生は3巻発売記念イラストで、前から見たネリアを描いて下さった。

挿絵(By みてみん)

ライアスは騎士服もかっこいい!

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