第三章 邂逅 ―ふたたび―
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この回は、あの夜の死神目線です
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「……はー……」
死神は深く、大きくため息を吐いた。
――なんなんだ? ここの奴らは。
彼女が、ここまで酷い扱いを受ける理由が、どこにある?誰も彼もが、まるで当然のように彼女を傷つけて……あれが、人間のやることか?
今しがた見た映像の中――幼いルーナは、弾けるような笑顔をしていた。花のように、光のように、眩しかった。
けれど今、目の前で横たわっている彼女は――頬はこけ、髪は艶もなく乱れていて、唇は乾き、血の気を失っている。
あの笑顔のルーナに、会ってみたい。どんな声で笑うのか、聞いてみたい。そう思った瞬間、彼は左手に持っていた鎌を手放した。縮んでシャランと音を立てて、首元の鎖にカチリと繋がった。
空いた手を、ルーナの上に差し出し、手のひらを上に向けて、額に触れている指から、そっと己の精気を流し込んだ。
やがて、空中に――小指の爪ほどの、小さな魂の粒が浮かび上がった。濁っている球にフッと息を吹きかけてから、ルーナのかさついた唇の隙間に押し込んだ。球は、すうっと彼女の中へと吸い込まれて消えた。
「……よし。これでいい」
パチン、と指を鳴らして、自分と同じ色のローブを取り出してルーナを包み、抱き上げた。
あまりの軽さに驚きつつ、雨の降る外へ出て、上空高く飛び上がった。
その瞬間だった。
――ドガァン!
雷が、建物のすぐ近くの木を打ち抜いた。空が破けたような轟音が響き、稲光が昼のように辺りを照らした。雷に撃たれた幹は真っ二つに裂け、その片方がルーナの家へと倒れ込む。火花が散り、衝撃は地面を揺るがせた。
その揺らぎが濡れた地面を崩した。地響きを轟かせながら地面は割れて、辺りの木々もそこにあった家も何もかもを土砂が飲み込んだ。
家の跡には何も無くなっていた。ルーナの過去も、記憶も、居場所も。
すべてが消えた。
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星影くもみ☁️