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第二章(7)

 カルラとの事があってから、いつもの日配品を買っていた店の対応が変わった。あれだけ大きな声で言われたら、興味のなかった人の耳にも届く。


「すまないが……災厄の魔女に物を売るのは、ちょっと……」

「お金なら持ってるの、あります。せめて卵だけでも……」


 “すまない”。

 その言葉を何度聞いても、納得などできなかった。


「それなら、今日を最後にします。もう二度と来ませんから……お願いします、一個だけでも……ください……売ってください。フランに、食べさせたいんです……お願いします……」

 口が渇く。拒絶されている事実……怖かった。絞り出した声は震えていた。

 それでも顔をしかめて頑なに売ってくれない。


「……わたしが触れたお金を受け取るのが嫌なら……ここに置きます。一昼夜、土に埋めて、それから水で洗えば……」

 店主は一瞬だけ眉を寄せたが、すぐに視線をそらした。


「……フランのことは気の毒に思っている。これまで世話にもなった。 だが――」

 そこで言葉が途切れた。それだけで、すべてを悟った。


「わたしが、災厄の魔女だからだ……」

 せめて卵一個だけでも欲しかった。頭を下げて店を出れば、即、扉が閉められて鍵のかかる音が聞こえた。


 状況は、翌日以降さらに悪化した。『災厄の魔女』という噂は、中に広まっており、ルーナが触れたものには災いが宿る、家に持ち込めば不幸になる、彼女が立ち寄った店は商売が傾く――。そんな根も葉もない噂で、ルーナの姿を見つけると人々は顔をそらした。声をかけても、まるで聞こえていないかのように、誰ひとり返事をしてくれなかった。見向きもしてくれなかった。


 フランが元気な頃から世話になっていた穀物店の店主も、客の相手をしている最中だったのに、ルーナの姿を見かけただけで客の応対をやめ表の扉を閉めた。


 別の店を見つけて、閉店間際に駆け込んでも、「今ある商品はすべて予約分だ」と、短く言われた。竹串一本すら、売ってはもらえなかった。


 町のすべてが、ルーナに背を向けた。まるで、最初から“いないもの”のように。


アクセス・感想・お星様などなど、ありがとうございます。

励みになっています。


最後までお付き合いください。


星影くもみ☁️



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