サンスクルート号(注1)の最後の飛行
(注1)恒星間輸送船団(注2)ブランクルート(注3)所属の武装宇宙船(注4)。船長はグレッド・サン・スルエンターニャ(注5)
(注2)銀河を恒星系から別恒星系へと移動し物資(注6)を運ぶ民間団体の総称
(注3)アレックス・ブラン(注7)を社長とする中規模(注8)輸送船会社(注9)
(注4)宇宙海賊(注10)からの暴威に対抗すべく一般武装を配備している宇宙船
(注5)地球人。男性。24歳の美丈夫。ブランクルート社の命名規則により彼の船はスルエンターニャクルート号となるはずだったが、あまりにも名前が長いため乗組員(注11)から変更を要求された。
(注6)水・食料・レアメタル(注12)などを輸送する
(注7)地球人。男性。28才の才気あふれる若社長
(注8)全従業員が50人以上200人以下の民間組織のこと
(注9)和気あいあいというよりは、怒号の飛び交う場所だが、笑顔と下品なジョークの絶えない会社である
(注10)輸送船等から違法に物資を略奪する(注13)違法武装集団(注14)の総称
(注11)主要乗組員はエリーゼ(注15)、ウェル(注16)、ドラファス(注17)の三名
(注12)主にレイザーメタル、グローメタルなどを扱う
(注13)特にレアメタルは狙われやすく(注18)、輸送には護衛艦が欠かせない
(注14)宇宙航空法98条に基づく武装申請を行っていない武装宇宙船を有する集団のこと
(注15)エリーゼ・モルゼル。地球人。女性。
(注16)ウェルトラム・ウェルトリート。ブルゲスト星人。皆ウェルとしか呼ばない
(注17)アラブレーリャ星人。本名が地球人に発音出来ない。本名の辛うじて聞き取れる部分を取ってドラファスと呼ばれている
(注18)その日もいつも通りの(注19)レアメタルの輸送で、サンスクルート号はその護衛であった。
(注19)エリーゼは自慢の爪の手入れをし(注20)、「つまらねー仕事だよ」とウェルがぼやき(注21)、「船のケツ追いかけるくれーなら、女のケツ追っかけていてーんだがなア」とドラファスが肩をすくめ(注22)、「仕事だ、文句を言うな」とグレッドがレーダーを眺めながら二人を諌めていた(注23)。
(注20)エリーゼは爪を美しく飾ることに命を燃やしている
(注21)ブルゲスト星人はとにかくぼやき屋ばかりで、皆このようなことを言う
(注22)16歳という多感な時期にブランクルート社に入社したため、セクハラ親父のアレックス・ブランに影響された
(注23)ちょうどその時に、レーダーに所属不明(注24)の宇宙船が複数映り込んだ(注25)
(注24)宇宙航空法54条に基づき、所属を明らかにする情報を観測レーダーで読み取れるようにする必要がある
(注25)「戦闘配備」とグレッドが言うよりも早く(注26)、総員が戦闘配置に着いた(注27)
(注26)優秀な乗組員は自身のするべきことを常に分かっている
(注27)ウェルは砲手席(注28)へ。ドラファスとエリーゼは手動操縦席(注29)へ乗り込み、発進準備を整えた(注30)
(注28)サンスクルート号には主砲バルベルキア(注31)が搭載されている
(注29)戦闘用オートマチック運転システムは非常に高価なため、サンスクルート号には搭載されていない
(注30)ちょうど準備を終えた時、ブランクルート号による無差別信号が発信された。『こちら恒星間輸送船団ブランクルート。事前申告経路を輸送中。進路妨害をやめ経路を開けよ』(注32)
(注31)主砲原理は『バルベルキア解体新書』を参照
(注32)同じく無差別信号による返答は、男の声で『積荷をトラッシュすりゃ命は取らねえ。置いていけ』(注33)と言った(注34)
(注33)宇宙海賊というものはいつでもこのような物言いをする
(注34)「エリーゼ、ドラファス、行けるか」「いつでも行けるわ」「あたぼうよ」「発進準備、3,2,1,GO!」宇宙海賊の交戦意思を確認し(注35)、サンスクルート号は速度を上げた(注36)
(注35)宇宙航行法103条に基づく正当防衛の成立条件
(注36)「さあ、楽しいダンスの時間よ!」(注37)「さっきの言葉訂正するぜ!ケツ追っかける女の種類も選びてえわ!」(注22)
(注37)エリーゼは戦闘開始時(注38)にこのような言葉をよく言う
(注38)「ったく、少しは砲手の撃ちやすい運転しろよな!」(注21)ウェルがぼやきながら砲撃を行い、大型戦艦を撃ち抜いていく(注39)
(注39)『小賢しい旧式艦(注40)ごときが……くらえ!』(注33)(注41)
(注40)手動戦闘システムは一部ではアンティーク扱いを受ける
(注41)宇宙海賊の無差別信号とともに、謎の光(注42)が敵の戦艦から灯る(注43)
(注42)おそらく最新式のテイザー光線だと思われる(注44)
(注43)サンスクルート号に光線が当たり、敵宇宙海賊艦隊を巻き込み、大きな爆発が起こった(注45)
(注44)どのように宇宙海賊がこれを入手したかは不明
(注45)主艦ブランクルート号のレーダーから、サンスクルート号を示す光が消えた(注46)
(注46)『さあ!護衛はいなくなった!(注47)ああなりたくなければ積荷を置いていけ!』(注33)(注48)
(注47)宇宙海賊も主艦以外は生死不明の状況であったが、海賊はそのようなことは気にしない
(注48)二射目の光がブランクルート号を捉えた(注49)
(注49)誰もが(注50)サンスクルート号の生存と、積荷を諦めた(注51)
(注50)アレックス・ブラン(注3)ですら、諦めた
(注51)その時背後から(注52)の砲撃が敵主艦のエンジンを撃ち抜いた(注53)
(注52)爆炎の向こう側から現れ、通信にグレッドの声(注54)が響いた(注55)
(注53)エリーゼとドラファスの天才的な操縦により、サンスクルート号は大破を免れていた(注26)
(注54)『こちらサンスクルート号、こちらサンスクルート号。識別トークンがやられた(注56)。緊急に近隣宇宙港でメンテナンスが必要だ。ったく。クソッタレの宇宙海賊が』
(注55)ブランクルート号にその声が響き、艦内で歓声が上がった
(注56)識別トークン更新時には艦名も更新すること(注57)が定められている(注58)
(注57)宇宙航空法52条
(注58)サンスクルート号はメンテナンスの後、サンスクルート2号に改められた(注59)
(注59)なので、サンスクルート号の航行は、これで最後となる(注60)
(注60)以後はサンスクルート2号が航行する(注61)
(注61)おしまい
(†)ペア作家高鳥瑞穂の執筆担当
代表作は『「そんなの、ムリです!」 ~ソロアサシンやってたらトップランカーに誘われました~』(‡)
(‡)詳細は以下を参照
https://ncode.syosetu.com/n6734gj/