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アイ コンタクト  作者: チャウチャウ坂
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第十七話

「無事だよ。それよりフォーメーション"荷物持ち"だ!さっきみたいにアイツを捕まえるんだ!」

金色のランドセルを背負った男は鈿音の方を指差した。


鈿音は急いで校庭に出た。5時限目が始まっていて、子どもたちは男女に別れソフトボールをしていた。


ソフトボールのマウンドの方を白いノースリーブと白衣が追いかけっこしていた。

偶然かどうか、白衣の火電にバッターが打ったボールが直撃した。火電は腹を抑えてその場にへたり込んだ。結構な距離が2人の間にあったので、鈿音は聞かれる心配もなく思い切り笑った。


しかし、ソフトボール中にも関わらず、その試合を放棄して全員が鈿音の方を向いた。嫌な予感がして、鈿音も振り向くと大量のランドセルが鈿音を捕まえようと迫ってきた。背負う紐を必死にパタパタと動かす様は応援したくなるが、鈿音は急いで学校の出口を目指す。


校門のところまで辿り着き南京錠を開けようとするも、ピッキング道具が見つからない。素良の方で能力を使っているのか、鈿音に渡されたピッキング道具は無くなっていたのだった。


鈿音は金色のランドセルを背負った男にバレないように音楽室に戻りたかったが、正面突破をする覚悟を決めた。


鈿音は頭をかがめて腕を組んでランドセルに向かって思い切りタックルした。ランドセルは一列になっていたが、人間よりも軽いためどんどん吹っ飛ばされていく。追いかけてきているランドセルも、その紐をどうにか引っ掛けようとして失敗していた。どうやら、律儀にフォーメーションというのを守っているらしい。


(このランドセル…操られているというより、意志がある?)


鈿音が校内に戻ろうと玄関に入ったときにすぐ近くのソフトボールのコート内から声がした。


「どんどん打ち込んでいくよ!ボールは友達!友達なら、ぼくと一緒に戦ってくれるはず!」


ノースリーブの男は、千本ノックの要領でどんどんとボールを火電に向けて打った。驚くべきコントロール力だと賞賛すべき、全てのボールが頭を抱えて必死に防御する火電に当たった。火電は腕で覆っている顔から目をチラリと出して様子を伺った。

火電は迷いなくぷるウォのアイコンにふれる。


「手に握っているのは金属バットだね?木製のバットにしとくべきだったね。」


すぐにバットから白い火があがり、ノースリーブの男の手に火が移った。


「ヌギャア!!」


ノースリーブの男はバットを離し、火を消そうとグラウンドの芝生に手をはたきつけた。

小学生が近くの水道からホースでノースリーブの男とバットめがけて水をかけた。

火傷で真っ赤にただれた手にノースリーブの男は自分の唾をかけ、ソフトボール部が使っているであろうテーピングを手に巻き付けて校内に走って行った。


ノースリーブの男は鈿音と鉢合わせ、同じように玄関で足止めを食らった。下駄箱を囲むように横一例でランドセルが並んでいた。


「ボールは友達!ボールは友達!友達は困ったときに助け合う!」


突如、玄関の横にある教室から台座のない地球儀が転がり出てくる。

「地球儀の金具が古くなってたのかな?んん?

おい!これは何だ?生徒のランドセルをこんな風に辺鄙に並べて!大の大人のくせにランドセルを背負っているなんて怪しいぞ!それも変わった色だが…生徒のじゃないだろうな!確認する!渡しなさい!」


教員が、金のランドセルに手を触れようとした時、鈿音とノースリーブの男を下駄箱に閉じ込めていたランドセルも、鈿音を追ってきたランドセルも全てその教員を取り押さえた。


隙ができたので2人は目的のところへと駆けていった。


『待てー!』

火電と金色のランドセルを背負った男の声が重なって響いた。


階段を駆け上がっていると後ろから声がした。


「今だ!ランドセル達よお辞儀をするのだ!」


階段の3階の入り口で待機して浮かんでいるランドセルが一斉にお辞儀をした。もちろん留め具は開いており、そこから学校のプリントやら教科書やらが流れでてきた。鈿音は紙に足をすくわれて、階段の踊り場まで滑り落ちた。


「よし!追い詰めたぞ。コイツに覆い被され。」


足元には、音楽の教科書が落ちていた。近づいてくるランドセルにヤケになった鈿音は、そのピアノのページを開く。ピアノの仕組みを説明したイラストを金色のランドセルの男に向けて、アイコンをタップした。


教科書から黒いインクが飛び出して、金色のランドセルを背負った男の目に直撃した。 


「ヌァぁ!インクが目に!沁みるぅ!目が目がぁ〜」


ランドセルたちはまたも金色のランドセルに寄りつき、鈿音はもうひとつ上の階にある音楽室に辿り着いた。


抱え込める限りのランドセルを持って急いで金色のランドセルを背負った男がいる方に向かう。


階段を見れば、金色のランドセルを背負った男がまだ3階の踊り場でインクで黒ずんだ目を服で拭いていた。目をつむりながらも鈿音が降りてきた音に反応して話しかける。その顔はまるでパンダのようだった。


「バカめ!戻ってきたな?捕まえろ!」


鈿音は少しもためらわずに鍵盤ハーモニカを抱えて踊り場の方へ発射した。


「ひゃうー!今度はイタァイ。」


金色のランドセルを背負った男に鍵盤が直撃した一方で、背負われている金色のランドセルは他のランドセルが盾になって無傷だった。


(やっぱりそうだわ。ランドセルたちが大切にしているのはアイツじゃなくて、金色のランドセルの方なんだわ。)


鈿音はランドセルが散らばり、鈿音自身も動き易いように広い場所を目指す。


そう――体育館へ。

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