■七月八日 温泉お色気仲居修行 起 撮影
♠♠♠科學戦隊レオタン テレビシリーズ
♠♠♠第二話 温泉お色気仲居修行 起
ボクの名前は、儚内薄荷。
元は、邪神『恐怖の大王』様の巫女だったんだ。
でも、色々あって、科學戦隊レオタンの隊員『お色気ピンク』になっちゃった。
ボクが、考えなしのアホの子だから、こんなことになっちゃったんだけどね。
科學戦隊のメンバー五人を紹介をしておくね。
まず、ボクが、イヤイヤながら『お色気ピンク』。
オトコノコなのに、ピンク色のセーラーレオタードなんか、着させられている。
スカーレットレッドの男子体操レオタード+長パンを着用しているのが、『筋肉ダルマ』さん。
科學戦隊のリーダーである『爆炎レッド』だ。
マリンブルーの男子体操レオタード+長パンを着用しているのが、『ガチムチ』さん。
科學戦隊のサブリーダーである『氷結ブルー』だ。
クロムイエローの男子体操レオタード+短パンを着用しているのが、『筋ピク』さん。
科學戦隊の『雷撃イエロー』だ。
エメラルドグリーンの男子体操レオタード+短パンを着用している『筋ショタ』くん。
科學戦隊の『旋風グリーン』さんだ。
『筋ショタ』くんって、顔はイイけど、頭オカシイと思う。
だって、男のくせに、オトコノコのボクに、会っていきなり、プロポーズしたんだよ。
☆
フェロモン諸島の巨門島で、ボクたち五人は、わけも分からないまま、各自カラーの戦闘車両に乗り込んだ。
『爆炎レッド』用のR戦闘車両、『氷結ブルー』用のB戦闘車両、『雷撃イエロー』用のY戦闘車両、『旋風グリーン』用のG戦闘車両、そして『お色気ピンク』用のP戦闘車両は、当該カラーで塗り分けられているので、一目瞭然だ。
ボクたち五人は、それぞれの戦闘車両を、バルーニング飛行させて、巨門島を飛び立った。
ボクは、生まれてこのかた、フェロモン諸島を出たことがなかったし、戦闘車両どころか、木炭車の運転すらしたことがなかった。
ところが、それでも問題なく、戦闘車両を操ることができた。
戦闘車両に搭載されている神力エンジンは、搭乗者の聖力もしくは魔力と同期する。
これにより、搭乗者と認められた者は、予備知識などなくとも、戦闘車両を操ることができる。
それだけでなく、戦闘車両は、巨門島から飛び立ったボクたち五人に、向かうべき先まで教えてくれた。
戦闘車両を格納し保守・管理する『科學戦隊基地』なるものが、このポコペン大陸中央部に、存在するのだそうだ。
戦闘車両は、ほぼ自動運転で、ボクたち五人をそこまで、導いてくれた。
☆
『科學戦隊基地』には、当然のように、多くの人が働いていた。
みんな、鹿鳴館學園の科學戦隊育成科から抜擢された生徒なのだそうだ。
誰もが、一年以上空席となっていた正隊員五名が決定したことを喜んでくれた。
ボクたち五人には、歴代正隊員が使用してきた一室が与えられた。
この各室と、基地最上部の管制室には、正隊員専用の、チューブと呼ばれるすべり台がある。
これは各戦闘車両のドックにまで繋がっている。
チューブに入ると、各戦闘車両のコクピットへと降り立つ仕組みだ。
ボクの前の、先代『お色気ピンク』さんが、スゴイ人だったらしい。
白桃撓和さんっていうんだけど、最新型の戦闘車両は、この人が、ほぼ一人で造りあげたんだって。
この戦闘車両ってさ、何と、変形合体して、巨大ロボットになるんだって――。
驚いちゃった。
撓和さんって、『あの世界』から、召喚されたんだそうだ。
若くしてロボット工學を究めた才媛で、召喚前の『あの世界』において、飛び級により、すでに大學卒業資格を得ていた。
『この世界』にやってきて、独力で技術革新を成し遂げた。
その最新型戦闘車両は、なんと五台で変形合体し、巨大ロボットとなる。
それまで、『この世界』には、ロボットという概念すら無かった。
それは、あまりに隔絶した技術であり、撓和さんが行方不明となっている現在、戦闘車両の維持管理すら、おぼつかない状態なのだそうだ。
しかも、撓和さんは、天から二物を与えられた、コケテッシュな美人さんだった。
豊満なGカップの巨乳を揺らし、形の良いお尻を振って歩く。
まさに、理想の『お色気ピンク』だったそうだ。
ボクに与えられた部屋は、先代の撓和さんが使っていた頃のまんまだそうだ。
撓和さんは、突然失踪し、行方不明になったんだって。
だから、いつ戻ってもいいように、部屋に残されたものは、そのまま、誰も触ってなかった。
クローゼットを開けてみた。
なんかね、目眩がした。
バスト、ウエスト、ヒップラインを強調した、イケイケのボディコン。
肩パッド入りのジャケット。
どれもビビッドな原色か、ヒョウ柄やゼブラ柄だ。
下着がスゴイ。
黒や紫の、布地が少ししかないようなのばかり。
下はTバックで、上はGサイズのハーフカップだ。
きっと、天が、撓和さんに、二物を与えたんだよね。
ボク、ちんちくりんで、何にもできない自分と比べて、ホント、イヤになっちゃった。
衣服以外の撓和さんの私物は、ほとんど残っていなかった。
失踪時に、処分したか、持って行くかしたんだと思う。
私物らしいものと言えば、壁に貼られた一枚のポスターだけだ。
『ジャングル風呂地帯 白湯温泉旅館』と書かれている。
古びた木造建築の前に、真っ白な温泉の露天風呂があって、肩から上を出した裸の女性が、後ろ姿で浸かっている、白黒写真のポスターだ。
☆
着いた翌日から、正隊員五人への教育と訓練が始まった。
教育については、戦闘車両と、これを動かす神力エンジンに関するものが中心だ。
これは科學戦隊内の極秘テクノロジーであり、神力を用いた秘匿契約を天津神と結んだうえでの学習となった。
旧型の戦闘車両は、木炭エンジンで動いていた。
木炭と呼ばれてはいるが、実のところ魔木炭であり、それなりの出魔力は得られる。
だが、その程度では、戦闘車両の地上走行までが、せいぜいだ。
戦闘車両のバルーニング飛行、変形合体、そして巨大ロボットの駆動に必要な力は、得られないのだ。
当初、撓和さんは、『あの世界』において、石炭、石油、天然ガスと呼ばれる化石燃料を探し求めた。
だが、どうやら『この世界』の化石燃料は、既に枯渇しているらしかった。
いかなる経緯で化石燃料が枯渇したのかは不明だ。
だけど、そんな経緯は、撓和さんにとって、どうでも良いことだ。
問題は、化石燃料がなければ、ロボット駆動に必要な大出力を得ることかが難しいということだ。
撓和さんは、「ちょっと待て」と、魔木炭に最注目した。
撓和さんが元いた『あの世界』の木炭エンジンは、ひどく使い勝手が悪いものだった。
だが、この世界の魔木炭エンジンには、大型車両を動かすほどのパワーがある。
更には、蒸気機関車や、ポンポン船まで動かしている。
この世界の動物は、日々、聖力を吸収して、体内を循環させ魔力を排出している。
一方、この世界の植物は、逆に、日々、魔力を吸収し、聖力を排出している。
そして、植物の中に吸収蓄積され、排出されることなく伐採された魔力が、魔木炭となるのだ。
更に、魔木炭の製造工程も注目に値する。
この魔木を伐採して、積み上げ、藁と土で密封し、不完全燃焼させると、魔木炭ができる。
つまり、魔力を不完全燃焼させると、より濃度の高い魔力が得られるのだ。
ここで、もし、魔力を供給するのが、そもそも魔力の高い人間であれば、燃焼などさせなくとも、より濃度の高い魔力を送り込み続けることができるのではないか?
必要となるのは、一方通行で、人から魔力を吸収し、蓄積し、エンジンのシリンダー内へと送り込み続けることのできる『注力機』だ。
高濃度の魔力を、シリンダー内に注力し、これを、ピストンで圧縮する。
すると、混沌爆発が起こり、急激な膨張でピストンが跳ね戻る。
このピストンの往復運動を、コンロッドとクランクシャフトで回転軸に出力する。
この注力、圧縮、膨張、排出のサイクルを繰り返すことでエンジンが駆動するのだ。
それは、見事に作動した。
同時に、この機構内に送り込める者について、二つのことが明らかになった。
ひとつは、送り込む力は、魔力だけでなく、聖力であっても構わない、ということ。
力を、力のまま行使しようとすると、魔力や聖力によって、結果が変わる。
ところが、混沌爆発は、魔力であっても聖力であっても引き起こせる。
いったん混沌爆発さえ起こってしまえば、その先の仕組みは同等となる。
つまり、このエンジンは、魔力であっても聖力であっても駆動する。
よって、撓和さんは、これを、『神力エンジン』と名付けた。
もうひとつは、この『神力エンジン』に力を供給し、操縦できるのは、一部の限られたものだけだということただ。
魔力や聖力については、様々な個体差があることは、広く知られている。
神力の駒を反転させる力の強い、弱い。
駒を反転させる速度の速い、遅い。
駒を反転させる範囲の広い、狭い。
駒で描く文様の精緻さ、粗雑さ、等々。
そして、『神力エンジン』を操れるのは、神力の駒を反転させる力が強く、駒を反転させる速度が速く、駒を反転させる範囲を精密に狭めて集中させることのできる者だけだった。
撓和さんが、『神力エンジン』を造り出せたのは、開発者である撓和さん自身が、偶然にもこの条件を満たしていたからだった。
総括すると、『神力エンジン』は画期的な出力機構であったが、二つの問題を抱えていた。
ひとつは、操縦者を選ぶこと。
そして、もうひとつは、高エネルギーと引き換えに『混沌』が発生してしまうことだ。
一旦発生してしまった『混沌』を魔力や聖力に戻すことはできない。
だが、『混沌』なんてものは、動植物の生命活動の中で、日々僅かづつ発生しているものだ。
エンジンで、多少の『混沌』を発生させたとして、どれほどの問題があるというのか。
かくして、『神力エンジン』が完成し、この技術を用いた新型戦闘車両は、見事に変形合体し、巨大ロボット化をも果した。
☆
こうして、ボクは、戦闘車両操作に必要となる理論を、詰め込まれた。
同時に、他の四人とともに、ハードな実践訓練を繰り返してもいた。
戦闘車両の操作は、それなりに出来ていると思う。
他の四人と、連携して動くこともできる。
問題は、変形合体だ。
もう何日も、変形合体の訓練ばかり繰り返しているけど、これが、何回チャレンジしても、ちゃんと出来ない。
そのせいで、ボクは疲れ果て、みんなは頭を抱えている。
変形合体は、男の子のロマンで、科學戦隊番組に欠かせない山場だそうだ。
科學戦隊基地の研究員の中には、次のような見解を述べる者もいた。
他の四人が聖力を使って神力エンジンを駆動させているのに対し、ボクが魔力を使っていることが、合体を阻害しているのではないかというのだ。
でも、この考えは、他の研究者たちから、即座に否定された。
そもそも、神力エンジンは、操縦者の力が、聖力であろうと魔力であろうと関係なく操作できる。
シリンダー内で混沌爆発さえ引き起こせば、後は、神力として駆動する。
従って、何の問題もないはずなのだ。
ボクは、自分が戦闘車両の変身合体ができない原因について、思い当たることがひとつある。
だけど、そのことを、誰にも言えずにいる。
恥ずかし過ぎて、とてもじゃないけど言い出せない。
だって、ボクは、変形合体ができないのは、ボクに『お色気』が足りないからではないかと懸念している。
合体時、ボクのP戦闘車両はロボットの頭部から背骨と骨盤までの部分に変形する。
ここに、他の四人が、各ビークルを四肢に変形させて、合体してくる。
『爆炎レッド』用のR戦闘車両が、右股関節から、右脚。
『氷結ブルー』用のB戦闘車両が、左股関節から、左脚。
『雷撃イエロー』用のY戦闘車両が、左肩から左手。
『旋風グリーン』用のG戦闘車両が、右肩から右手だ。
ボクは、この合体が、恐くてたまらない。
何だか、男四人から、襲われてるみたいだ。
合体の瞬間なんて、身体中に激痛を感じてしまう。
ロボットが合体しているだけなんだから、痛みなんてあり得ないのに――。
同じ男性と、それに、四人といちどきに合体することなんて……などという、ホント、愚にもつかない思いに囚われてしまう。
男四人の側からしても、ボクみたいなのと、合体したからって、嬉しくもなんにもないはずだ。
四人とも、きっと、こんなボクのこと、気持ち悪いって思ってる。
で、行き着いた先が、『ボクには、誰かを引きつけ魅了する、お色気が足りない』なんていう結論だ。
ボクは、毎夜、居残りで、ピンクの戦闘車両に籠もって、イメージトレーニングを繰り返していた。
祈るような気持ちだった。
――撓和先輩、ボク、先輩みたいに頭良くないし、
アホの子なのは、どうしようもないと思ってます。
だけど、合体ロボットを動かすために、お色気が必要なんです。
どうか、ボクに、お色気を分けてください。
ダメですか?
ボク、男だから、ダメですか?
思いあまって、コクピット内にある操作盤を、ドンと叩いた。
すると、どこからか、名刺が一枚、飛び出してきた。
角の丸い、ピンク色の名刺だ。
ジャングル風呂地帯 白湯温泉旅館
女将 白桃 撓和
その名刺の下には、こう手書きされていた。
『次代の『お色気ピンク』ちゃん、人生に行き詰まったら、仲居の修行にいらっしゃい』
~~~ 薄荷ちゃんの、ひとこと次回予告 ~~~
■七月九日~二二日 温泉合宿大作戦 承 撮影
いよいよ、皇立鹿鳴館學園各部活動の夏合宿が、始まった。
場所は、南のジャングル風呂地帯。
そう、男性読者様お待ちかねの、あれだよ。
『お約束』の『温泉+水着回』、スタートだよ。




