表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
最後の嘘  作者: pon
33/34

君にお別れを side蓮

次回、最終話です

すっ、と握っていた手が離れる気がして目を覚ますと、綾が帰るところだった。



「また明日くるから」



その言葉だけでも十分嬉しいのに、綾は俺にそっと触れるだけのキスをして帰っていった。


たいてい、綾が帰ってから武士先輩がお見舞いに来てくれていた。

綾には会わせたくないから、時間がずれていてよかった。



その日は、妙に気分が良くて、病気なんて治ったんじゃないかと思うくらいだった。


それから、思い出した。

綾は、武士先輩と結婚したことも。


意識はクリアで、開いている窓から入ってくる空気に花の香りが混ざっていることすら感じた。


いつも通り綾が面会に来てくれて、俺は武士先輩がヤキモチ焼かないかと心配したけど、綾は「大丈夫」と自信満々で答えた。



「やっぱり、武士先輩に託したのは正解だったな」


「そうかもしれないね」


「綾。俺にもしものことがあったら、引き出しに入ってる手帳を見て。

そこに、俺の気持ちが全部入ってるから」


「もしもにしたって、縁起の悪いこと言わないで」


「今伝えないと、もう伝えられない気がして」


「蓮……」



どうしてか、綾に会うのはこれが最後のような気がしていた。

綾は、涙を浮かべた。



「ごめん。泣かせるつもりじゃなかったんだ」


「じゃあ、そんなこと言わないでよ」



俺は綾の手をギュッと握った。

本当は頭を撫でてやりたがってけど、それだけの力はなかった。



「綾。お見舞いに来てくれて、ありがとう。

俺は綾にあんなひどい仕打ちをしたのに、そんな俺のお見舞いに来てくれて、本当にありがとう」


今のうちに、気持ちを全部伝えておきたかった。



「ひどい仕打ちだなんて思ってないよ。だってあれは、全部蓮の優しさじゃない」



あんなことをしたのに、綾は許してくれる。

付き合ってる頃から、綾のそんな懐の深いところが好きだった。



「でも、泣かせた」


「泣いたけど、その後のフォローは完璧だったじゃない」



綾が怒っていないことは、俺をとても安心させた。

俺の選択に間違いはなかったと、改めて思った。



「そっか。そうかもな。

ごめん綾、ちょっと、眠いかも」



身体がフワリと浮き上がる感覚がした。

眠りに入る直前の、あの幸せな感覚。



「今日はずっと起きてたから疲れたんだよ。寝たほうがいいよ」



いつものようにそっとキスをされて、俺は穏やかに眠りについた。


とても気持ちよくて、ふわふわと身体がどんどん上に上がっていくみたいだ。


綾。

最後まで俺のそばにいてくれてありがとう。

目が覚めたら、改めてお礼を言おう。

そして、もう一度愛を告げよう。


綾、愛してる。

この世の何よりも、誰よりも。

君と出会えたことは、俺の人生の中で最高にハッピーなことだった。

君に出会えた、そのことだけで、俺の人生には意味があったんだと思える。

惰性で生きていた俺に、生きる楽しさを教えてくれた。


俺が生まれてから今日までのことが映画を見ているように映し出されて、ああ、これが走馬灯っていうやつなんだな、と思った。


じゃあ、俺はもう目覚めないのか。


もう少しだけ、綾と話したかったな。


俺が死んでも、いつでもそばにいるって、伝えたかったな。


最後の瞬間まで愛してたって、伝えたかったな。


ああ、でも。

最期の瞬間が綾のキスで、幸せだった。

ありがとう。

ありがとう、綾。


いつかまた生まれ変わったら、君と結婚して、温かな家庭を作りたい。

そして、おじいちゃんになったら、今日みたいにキスをして見送って。


また君と出会える日が来るのを、ずっと、待ってるから。


綾。

愛してる。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ