君との出会い side蓮
「あっつ……」
真夏、俺は着なれないスーツを着て公園で冷たいジュースを飲んだ。
面接の時間まではまだ余裕がある。
腕時計で時間を確認して、炎天下の中時間を潰す。
ふと、向かいの噴水に面したベンチに、俺と同じような就活スーツを着た女の子を見つけた。
彼女もきっと、時間を潰しているのだろう。
もしかして、同じ会社かな。
となると、ライバルだ。
お互い頑張ろーぜ、と心のなかで呟いて、俺は飲み終わったペットボトルをゴミ箱に捨てた。
会社に向かい、受付で面接に来たことを告げると、3階のA4会議室にいくよう指示された。
エレベーターを待っていると、後ろに人がたった。
社員さんだと申し訳ないので、少し横にずれて振り返ると、さっきの女の子だった。
やっぱり、同じ会社だったか。
一次面接は集団面接だ。
この時間にいるってことは、同じグループかもしれない。
予想は的中して、彼女は俺と同じグループだった。
「大島綾です。よろしくお願いします」
にこやかに、でも決して厚かましくない程度に彼女は微笑んだ。
自己PRで、「座右の銘は、有言実行です」と自信満々に言っているのを聞いて、思わず笑いそうになった。
「不言実行」ならともかく、有言実行なんて、当たり前すぎる。
面接官も苦笑いしている。
緊張して間違えたのかな、とその時は思っていた。
これが、俺と綾の初めての出会い。
◇◇
いくつも面接を受けるうちに、綾と何度か顔を合わせるようになった。
たぶん、狙っている業種が同じなんだろう。
向こうも俺を見つけると、あっ、という顔をする。
こんな形で顔見知りができるなんて、思っても見なかった。
内定はいくつか取れたが、より条件のいい会社に入りたくて、俺は就活を続けていた。
内定が取れてしまえば、綾を見てもライバルとは思わない。
むしろ、集団面接のたびに、「座右の銘は有言実行です」と自信満々に答える綾を応援していた。
面接で一緒になるのが何度か続いたある日、俺は面接後に綾に声をかけてみた。
「何度か一緒になってるよね。
俺は、京極蓮。君は?」
「大島綾です。もう、内定取れました?」
「うん。おかげさまで何社か。綾ちゃんは?」
「私はまだ一社だけなので、もうちょっと頑張ってみようと思って」
「せっかくだし、情報共有も含めて、LINE交換しない?」
普段の俺なら、絶対に言わないことだった。
でも、綾には警戒心0で、むしろもっと親しくなりたいと思っていた。
きっとこの頃にはもう、綾のことが好きだったんだと思う。
綾もまったく警戒しないで、LINEの交換に応じてくれた。
それからは、毎日のようにお互いの面接の手応えや、エントリーシートの書き方なんかの情報を交換していた。
『私、もう就活やめる。1番入りたかった会社から内定出たから』
『そっか。俺ももうやめようかな。少しでも条件のいいとこ、と思ってたけど、最近内定出た会社が、結構条件良かったし』
『じゃあ、もう就活で会うこともなくなるね』
そのメッセージに、胸がツキンと痛んだ。
『お互いの就活成功を祝って、飲みに行かない?』
このまま離れるのが嫌で、無理やり捻り出した言葉だった。
『いいね!どこにする?京極さん家の最寄り駅どこ?』
思いもよらず、綾が乗り気になってくれたので、俺は舞い上がった。
すぐに、待ち合わせ場所と時間を決めて、『じゃあ当日』とメッセージのやり取りは終わった。
俺は、偶然じゃなく待ち合わせて綾と会えるのが、楽しみで仕方なかった。




