表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
最後の嘘  作者: pon
25/34

君との出会い side蓮

「あっつ……」



真夏、俺は着なれないスーツを着て公園で冷たいジュースを飲んだ。


面接の時間まではまだ余裕がある。


腕時計で時間を確認して、炎天下の中時間を潰す。


ふと、向かいの噴水に面したベンチに、俺と同じような就活スーツを着た女の子を見つけた。

彼女もきっと、時間を潰しているのだろう。

もしかして、同じ会社かな。


となると、ライバルだ。


お互い頑張ろーぜ、と心のなかで呟いて、俺は飲み終わったペットボトルをゴミ箱に捨てた。


会社に向かい、受付で面接に来たことを告げると、3階のA4会議室にいくよう指示された。


エレベーターを待っていると、後ろに人がたった。

社員さんだと申し訳ないので、少し横にずれて振り返ると、さっきの女の子だった。


やっぱり、同じ会社だったか。


一次面接は集団面接だ。

この時間にいるってことは、同じグループかもしれない。


予想は的中して、彼女は俺と同じグループだった。



「大島綾です。よろしくお願いします」



にこやかに、でも決して厚かましくない程度に彼女は微笑んだ。


自己PRで、「座右の銘は、有言実行です」と自信満々に言っているのを聞いて、思わず笑いそうになった。

「不言実行」ならともかく、有言実行なんて、当たり前すぎる。

面接官も苦笑いしている。


緊張して間違えたのかな、とその時は思っていた。


これが、俺と綾の初めての出会い。



◇◇



いくつも面接を受けるうちに、綾と何度か顔を合わせるようになった。

たぶん、狙っている業種が同じなんだろう。

向こうも俺を見つけると、あっ、という顔をする。


こんな形で顔見知りができるなんて、思っても見なかった。


内定はいくつか取れたが、より条件のいい会社に入りたくて、俺は就活を続けていた。

内定が取れてしまえば、綾を見てもライバルとは思わない。

むしろ、集団面接のたびに、「座右の銘は有言実行です」と自信満々に答える綾を応援していた。


面接で一緒になるのが何度か続いたある日、俺は面接後に綾に声をかけてみた。


「何度か一緒になってるよね。

俺は、京極蓮。君は?」


「大島綾です。もう、内定取れました?」


「うん。おかげさまで何社か。綾ちゃんは?」


「私はまだ一社だけなので、もうちょっと頑張ってみようと思って」


「せっかくだし、情報共有も含めて、LINE交換しない?」



普段の俺なら、絶対に言わないことだった。

でも、綾には警戒心0で、むしろもっと親しくなりたいと思っていた。

きっとこの頃にはもう、綾のことが好きだったんだと思う。


綾もまったく警戒しないで、LINEの交換に応じてくれた。


それからは、毎日のようにお互いの面接の手応えや、エントリーシートの書き方なんかの情報を交換していた。



『私、もう就活やめる。1番入りたかった会社から内定出たから』


『そっか。俺ももうやめようかな。少しでも条件のいいとこ、と思ってたけど、最近内定出た会社が、結構条件良かったし』


『じゃあ、もう就活で会うこともなくなるね』



そのメッセージに、胸がツキンと痛んだ。



『お互いの就活成功を祝って、飲みに行かない?』



このまま離れるのが嫌で、無理やり捻り出した言葉だった。



『いいね!どこにする?京極さん家の最寄り駅どこ?』



思いもよらず、綾が乗り気になってくれたので、俺は舞い上がった。


すぐに、待ち合わせ場所と時間を決めて、『じゃあ当日』とメッセージのやり取りは終わった。


俺は、偶然じゃなく待ち合わせて綾と会えるのが、楽しみで仕方なかった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ