予想外の事実
短めです
定期検診の日。
お腹の子は順調に大きくなってるし、私の体調も問題ない。
いつものようにエコー写真をもらって、会計待ちをしてる時、予想外の人を見かけた。
蓮の、お母さん。
いつか見た武士さんと同じように、受付で面会者ストラップをつけて、エレベーターホールへ向かう。
思わず後を追いかけそうになって、立ち止まった。
もう、蓮とはとっくに別れてるのに、今更声をかけてどうするつもり?
それにしても……
お母さんは大きな紙袋をぶら下げていた。
友達の御見舞いとかじゃなく、身内の洗濯物を持ってきたみたいに……
待って。
もしかして、お見舞いの相手は……
入院してるのは……
そして、武士さんが毎日お見舞いに通ってる人って……
でも確認する術はない。
受付で聞いたって教えてくれるわけがないし、何階の何科に入院しているのかもわからない。
確かめる方法はただ一つ。
私はビーフシチューを作りながら、武士さんの帰りを待った。
武士さんは、珍しく心ここにあらずな感じだ。
「ねぇ、武士さん」
「んー?どうした?」
私は深く息を吸った。
「武士さんが毎日お見舞いに行ってるのって、蓮、だよね?」
武士さんはバッと私を見た。
その反応だけで、私の予想が当たっていることがわかった。
「今日、蓮のお母さんが面会に行くところを見たの。
教えて。蓮はどこが悪いの?
なんで、武士さんは蓮のお見舞いに通ってるの?」
武士さんは息を呑んで私の言葉を聞いて、それから諦めたように息を吐き出した。
「言い訳に聞こえるかもしれないけど、そろそろ綾にも伝えなきゃって思ってたんだ」
私は、静かに武士さんの言葉の続きを待つ。
「蓮くんは、末期ガンで入院してる。
もう、痛みを点滴だけじゃ抑えきれなくなって、今日からモルヒネを使い始めてる。
だから、すこしでも蓮くんの意識がハッキリしてるうちに、綾を会わせようって思ってたんだ。
俺と蓮くんとの関係は、長くなるけど、聞きたい?」
「聞かせて?」
「たぶん、話を聞いたら綾は俺のこと、嫌いになると思う。
でも、話すよ。綾には聞く権利があるから」




