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楽園の雑用係  作者: 星雷はやと
第1章 ネコと猫とおネこ様と。
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第2話 少女と老人


「これ、宇美。急に声をかけたら驚かれてしまうだろう」


 少女の後ろから、杖を突いた年配の男性が心配そうに声をかける。


「あ、大丈夫ですよ、こんにちは~。いやK市の者です。大学のレポートで海辺の生態系についての課題が出されまして、調査に来ました」


 怪しまれないように、適当な噓を交えて応える。数年前までは学生だった為、見た目では問題はない筈だ。スマホをズボンのポケットにしまう。


「そうなの!? だったら私が案内してあげるわ! 挨拶をしてくるから、ちょっと待っていて!」

「走ってはいかん。足元に気を付けるのだぞ?」

「急がなくて良いよ。待っているから」


 少女は微笑むと帽子を抑えながら、桟橋へと走る。漁船が数十隻、停泊しているが漁師と知り合いでもいるのだろう。静かな桟橋へと駆ける少女を見送った。


「騒がしい孫で申し訳ない」

「いえ、元気があって良いじゃないですか。それには住人の方と誰とも出会わなかったので、声をかけてもらえて助かりました」


 二人の関係は孫と祖父のようだ。地元住民からの情報収集は渡りに船である。情報は金だ。有益な情報を得るべく、愛想の良い笑みを浮かべて応える。


「……地元の者は、最近の海は可笑しいと近づかないからな」

「何かあったのですか?」

「この数か月のうちに、何人も海に引きずり込まれて亡くなってのぅ……」

「それは……お気の毒に……。では、お孫さんは誰に挨拶を?」


 地元住民も海の異変には気付いる為、海を避けているようだ。しかし年配の男性の言う期間と、メールで送られて来た事故の期間の差異に眉をひそめる。

 どちらが正しいかと言えば、後者だろう。だが、それは俺が関与することではない。情報の取捨選択は『楽園の島』の仕事である。俺は面倒なく金が貰えさえすればいいのだ。

 海を避けているならば漁船に誰か居る可能性は低い。では少女は誰に挨拶をしに行ったのだろうか。話の流れから相手を尋ねた。


「友人じゃ。引きずり込まれた一人で、毎日挨拶をするのが日課で……宇美!?」

「……え?」


 物憂げに語っていた年配の男性が、突如として叫び声を上げると駆け出した。俺は彼の奇行に固まる。何があったのか分からず首を傾げ、振り向いた。


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