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楽園の雑用係  作者: 星雷はやと
第1章 ネコと猫とおネこ様と。
2/11

第1話 漁村


「いや……めっちゃ、猫……」


 指定されたN市のバス停に到着すると、俺は大量の猫に囲まれた。潮の香りが漂う漁村に、猫がいることは可笑しくはない。だが何故、俺が囲まれているのか理解出来ないのだ。これが俺の最大のモテ期だろうか。出来れば同じ人類が良かった。


『見てください、真尋! カモメですよ!』

「良かったな、仲間に出会えて。そのまま仲間の元に還れ」


 日光が遮られると、騒がしい声が頭上から響く。現れた男は光る輪を頭に輝かせ、白い羽根を広げて俺の前に降り立つ。羽根が宙に舞い、羽毛アレルギーの人が見たら発狂ものだ。猫たちはショウメイの登場により、蜘蛛の子を散らすように逃げた。さらば俺のモテ期。


『私はカモメではありません! 私は天使です!!』

「自称だろう?」


 頬を膨らませて抗議するショウメイ。こいつは自称天使という、狂った男である。いくら光る輪と白い羽根を持ち、白いスーツを着ている美形だろうと、こいつは天使ではない。

 この『自称天使』は、俺が子どもの頃からストーカーをしている。二十数年間ストーカー行為をするなんて正気の沙汰ではない。こんなのが、本当の天使であるわけがないのだ。

 ショウメイの金色髪と全体的に白い所為で、太陽の光が反射して眩しい。切実に大海原に還って欲しい、俺は目を細める。


『正真正銘の天使です!』

「ムキになるほうが、嘘みたいだぞ」


 昔から俺が『自称天使』と呼べば、ショウメイは本物だと五月蠅く抗議を口にする。俺は本心を口にしているだけのだが、狂った男にはそれが理解出来ないようだ。哀れな奴である。


『なっ!? 私は誇り高き天使ですよ!?』

「今回情報収集だけでこんなに報酬貰えるとか、マジで最高だわ」


 喚くショウメイを無視し、海辺に沿って上機嫌で歩き出す。


 俺の名前は国上真尋。本島の大学を卒業した後、俺は定職に就かず実家でニート生活を過ごしていた。すると『楽園の島』から『雑用係』のスカウトを受けたのだ。家族はニートからの大出世だと大喜びし、俺を送り出して今に至る。

 不労所得者になりたい俺だが、衣食住の保証付きに高額の給料とボーナスが出るとなれば致しかない。フェリー船を乗り継ぎ『楽園の島』に数か月前にやって来た。ショウメイという厄介なストーカーも同行しているが不可抗力である。


「うわぁ……範囲が広すぎじゃないか?」


 暫く海辺を歩いたが何も起きる気配がなく、情報収集をしようにも周囲に人の姿がない。嫌な予感がしてスマホを睨むが、表示されている文字が変わる様子はない。

 今回の仕事内容はこのN市沿岸部で数年間起きている、水難事故についての情報収集である。担当者から提示された事前情報は、場所と時期だけだ。内容をよく確認せず了承してしまい、情報収集範囲が広すぎることに今更気付いたのだ。


『報酬に目が眩んでいるからですよ?』

「仕方ないだろう」


 宙に浮き足を組んだショウメイが、呆れた顔で俺を見下ろす。咎めるような視線に、鋭い言葉を飛ばした。

 海に面しているN市を一人で情報収集するなど、提示された金額では到底割に合わない。俺は仕事の担当者に、仕事を断わるメールを打つ。


「あら、お兄さん観光の人!?」


 背後から声をかけられ振り向くと、鍔の広い白い帽子を被った少女が居た。


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