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黄昏に染まるその陰で  作者: 三当香季
8/19

第2部 ACT3の7  光あれ

 ”先読み”に関して

-前世の記憶なのかもしれない-

そう思えた。

この不思議な現象を紐解くための紐が見えてきた気はする。

 ただ、その紐を解くためには、紐を握って引っ張らなきゃならない。しかし、まだ紐に触れてもいない。

 出航して間もなく座礁してしまった感はあるんだけど、じゃあ何をすればいいの?って感じだったので、しょうがなく書店・図書館通いを続けることにした。

これ以上続けたところで何の進展も無いんじゃないのかね?なんて思ってたんだけど、日課になっちゃってた部分もあったのよ。

 推理・ミステリーものをほとんど手に取ってしまった後は、ほかの分野の本を適当にあさってペラペラとめくっていた。

しかし、ほかの分野では”先読み”できる本に巡り合うことはやっぱりなかった。


 船は座礁したまま。未だ波は上がらず。


 惰性の書店通いも飽きてきたころ、ある本のコーナーに目がいった。

それは入り口近くの台に積まれている本のコーナーで、真上に大きめのポップがででーんと吊るされていた。

『意外にも購入する人続出中!

命の大切さ、生きるためにしてはいけないこととはなにか、悪いことをしたらなぜいけないのか。

おどろおどろしい絵ばかりだけど、お子様のしつけに良いと評判の一冊です!

地獄がどんなところか丸わかり!』

と、書かれていた。


-地獄の本がしつけにいいだなんて・・・-


 本に視線を落とすと、表紙の絵からしていかにも地獄といった感じでおどろおどろしい。

 一冊手に取ってページをめくると、中もまたおどろおどろしい絵のオンパレード。


-これ、子供が見たら泣いちゃうんじゃないの?-


赤と黒の世界はかなりのインパクト。

文字は大きめのフォントが使われていて、ルビまで振ってある。

そういったところで、


-マジで子供向けなんだ・・・-


と分かる。

 驚きつつも読み進めると、出てくる出てくる地獄絵図。阿鼻叫喚の世界。

燃え盛る炎、針の山、氷の世界、踊るように嬉々として人を責めあげている鬼たち。

死後の世界なんだから殺人ではないにしろ、拷問の絵や血ドバーの絵がこれでもかこれでもか、泣く子はもういねえがぁ~と云わんばかりに各ページを埋めていた。


-気の弱い子だったらトラウマになりかねないな-


そんな心配さえしてしまう。


~どういうことが悪いことなのか~

~悪いことをすれば死んだ後どうなるのか(地獄に落ちます)~

~地獄に落ちないためには悪いことをしてはいけません~


という風に教える内容ではあるのだが・・・

これは刺激が強すぎるわ。


 絵の迫力に圧倒されてしまって、虚無の状態になった私は、その本を元の場所に戻すと書店をすたこら後にした。

 家に帰ってからもあの地獄絵図は頭から離れなかった。

そして、インターネットで

「地獄」

と検索をかけてしまう私なのであった。


 結構あるもんだね。電脳の世界には、『地獄紹介サイト』

いくつかのサイトをネットサーフィン。

多少の差はあるものの、書かれている内容にはパターンがあるようで、


人は死ぬと、閻魔大王や冥界の主人や番人などによって裁かれる。

その人の生き方によって、行先は分かれて


天上界~天人の世界

人間界~人の世界

修羅界~争いの絶えない世界

畜生界~獣や虫の世界

餓鬼界~常に飢えと渇きと苦しみが続き、満たされることのない世界

地獄界~死ぬ前の人生で犯した罪を償うために罰を受け続ける世界


というふうに六種類(サイトによっては五種類)の世界に送られるのだという。

(サイトによっては 界 ではなく 道 と書かれているところもあった)

六つの世界のことを「六道」と言って、魂は輪廻転生し、前世で罪を犯した者はそれを償い、汚れを落とす。悟りを得たものは煩悩から解放され、自由の境地に達した者は解脱し、天上界への入場を許される。


 送られた先が「人間界」であったならば、その先に天上界への扉を開くチャンスがあるのだけど、解脱できなかった者はその人生の中で犯した悪行の度合によって他の五つの世界へと送られる。


 地獄に落とされた者は、何百年も数種類の責め苦を受けてその罪を償う。

そしてその後、「餓鬼界」「畜生界」「修羅界」「人間界」のいずれかに転生する。


サイトによって書かれている内容に多少の違いはあるものの、主軸は大体こんな感じ。


 で、私は思う。


-「人間界」「修羅界」「畜生界」「餓鬼界」って、別々の世界じゃなくて、この世界のことじゃないの?-


人間がいるのは、この世界。

戦争が絶えないのも、この世界。

獣や虫がいるのも、この世界。

飢えと渇きと苦しみが続き、満たされることの無い地域があるのもこの世界。


そう考えると、「地獄界」という罪を償うために罰を受け続ける世界という場所もこの世があてはまるような気がする。


 ということは、「天上界」以外は全部地球上の世界のことで、「どの立ち位置・境遇に生まれるか」の違いだったりはしないだろうか?


それほど苦も無く、普通に生活できる環境に生まれれば「人間界」

紛争の絶えない環境の中に生まれれば「修羅界」

飢えと渇きと苦しみが絶えない環境に生まれれば「餓鬼界」

獣や虫に生まれたら「畜生界」


そう考えれば、「地獄界」だってこの世界に思えてくるよね?

だって、「この世は地獄」「生き地獄」とかって言うじゃない。

まるで罰でも受けているような不遇な環境に生まれたのが「地獄界」

罰を受けて、罪を償って、そこから抜け出すことができれば「人間界」や「天上界」への道が開ける。

そうなのかもしれない!?

私は何かを悟ってしまったのかも!!


 「人間界」にいる人は、自由の境地に達することができれば「天上界」へ入ること(解脱)ができるが、その境地に達することできなかった場合は、再び「人間界」へ転生を繰り返し、再び修業を積む。

「人間界」で罪を犯せば、その度合いによって転生先の環境が変わってきて、

欲にまみれた者は「餓鬼界」へ、

赦す心を失い、戦乱を好んだ者は「修羅界」へ、

人として許されがたい罪を犯した者は「畜生界」へ、

そのほかの償うべき罪を犯した者は「地獄界」へと送られる。


そう考えれば、「天上界(天国)」と「この世」の二つの世界だけで、「死んだら天国へ」というのは間違いなのではないだろうか?

 いやまてよ。

「天上界」というのも実はこの世の中に存在していて、いわゆる富裕層と呼ばれるような人たちの世界のことなのかもしれない。

 とすれば、この世の富裕そうな人たちの中にも罪深そうな人がいるんだから、せっかく前世で解脱して「天上界」ステージへ進めたにもかかわらず、そこで罪を犯してしまったがために来世では「地獄界」に転落。というのもあるのかもしれない。いわゆる堕天。

まったくもって、まわるまわるよ、めぐるめぐるよ輪廻転生。


 そこまで考えて私は、ちょっと目眩がしてきた。

やばい方向に行ってしまっているぞ、これ。

今、どこぞの宗教の勧誘を受けたら、入信してしまいそうで怖くなってきた。


 冗談はともかく、な~んかそんな風に考えたら、今の自分の境遇も合点がいく気がしてきた。

じたばたばたばた、もがきながら生きてるのって、前世で犯した罪を償っている最中ってことじゃないのかね?

だって、ここは平和な国なんだから「修羅界」ではなさそうだし、獣や虫に生まれたわけではないから「畜生界」ではない。

貧乏だけど、飢えに苦しむほどではないから「餓鬼界」でもなさそう。

だとすれば、「地獄界」なんじゃないの?


・・・

前世の私は何をやらかしたのかしら?

・・・


「地獄」

 もう一度そのキーワードを検索してみる。

出てきた項目の中で、まだ覗いてないサイトを閲覧していると、その一つに


地獄では、罪の重さで受ける責め苦、期間、回数が違い、その種類は百三十六である。

その期間、その回数を地獄の中で様々な責め苦を受け続けることから、それを”地獄めぐり”ともいう。そこから逃れる術は、罪の分の罰を受ける以外はない。


と、書かれていた。

回数?

地獄に落ちて、鬼に拷問されたり、苦難を与えられたり。それには罪を償う分の期間・回数がある。

回数??


ハッとした。


-今回は早かったな-

-残り四回だな-


あれに繋がるんじゃないの?

そう、あの変な声。

あの声が意味しているものが、地獄の中で罪を償うために輪廻(いわゆる地獄めぐり)していることを指しているものだと考えれば・・・。


 全てを終わらせてしまいたいと思ったあの夜。私は自分の命さえも絶とうとして包丁を持った。それに対して何者かが、

「今回の人生(地獄で責め苦を受ける回数のひとつ~地獄めぐりの回数のうちの一回)は早く終わるんだな」

そんなつぶやきを、私は聞いてしまった。


 交通事故現場に遭遇したときには、

「残り(地獄で責め苦を受ける回数~地獄めぐりの回数は)四回だな」

と言った。


 私の魂は、以前、罪を償わなければならないような人生を送った。

そして、死んだ後に閻魔様から犯した罪を償うために地獄へと送られた。

今まさに、地獄での人生を何回か(もしくは何年か)繰り返している(地獄めぐり)最中で、

命を終わらせようとした夜には、

「今回は(前に比べて)早かったな」

交通事故現場のときには、

「残り(の地獄めぐりの回数は)四回だな」


なのだとしたら、あの声の主は・・・


”死神!?”


でも、

「今回は早かったな」

これは、私が死ぬもんだと思って早とちりで言った言葉っぽいよね。

だって、あの夜に私死ななかったもん。

「残り四回だな」

これはどうなんだろう?

あの交通事故に私も巻き込まれて死ぬ予定だったのかしら?


 その辺は腑に落ちないところだけど、あの声の主は”死神”の類と考えれば納得できる。”死神”が存在することを肯定したうえでの話ではあるけど。


 そして、その声の主の”死神”は、早とちりでつぶやいた声を私に聴かれちゃうようななドジな”死神”。

アニメかなんかで見たことがあるような設定の”死神”さんですなあ。



 どう考えてもこれはやばい発想だわ。

あの声は幻聴です。で、片づけたほうがまだ救いがあるような気もする。

でもなんだか、そのやばい発想も捨てがたい。


 そうそう、私にはもう一つ、妙な現象があるでしょ。

”先読み”

私の”先読み”は、推理・ミステリーものの一部にだけ起きる限定もの。

「これは何?」って考えたとき、作家としての才能に恵まれすぎたが故に先が読めちゃう天才という方向にもっていきたかったんだけど、私には文才の欠片もないことが判明。

じゃあ、いったい何なの?

ずーーーーーっと、何年も疑問に思ってきたんだけど、『世にも不思議な世界』というテレビ番組で『前世の記憶を持つ少年』という話を見て”前世の記憶”なのではないか?と思うようになった。


 前世の記憶を持っているとされる ステファン 少年は、外国のとある街の記憶を持って生まれた。

それは、 ステファン はその街以外の前世の記憶は覚えていなかった。ということだよね?

前世の記憶の一部分だけを、次に生を受けた時に何らかの理由(原因、要因)で覚えていたのだったら、私の”先読み”と同じだと言えるのではないかしら?

私のとはちょっと規模の差はあるとはいえ。ね。

 私の場合は、前世の記憶の中でも「推理・ミステリーものが好きだった」部分が残った。

ステファン 少年の場合は、前世の記憶の中でも「大好きな街の記憶」部分が残った。


 ときどき、作曲家とかの話で、「降りてきた」というのあるでしょ?

何かの拍子で神がかり的にパッと頭に良いフレーズが浮かんだりするというヤツ。

意外と、前世の人の記憶遺産がサルベージされて出てきたものかもしれないよね。

『 ステファン 少年の街の記憶』

『私の”先読み”』

それとはちょっと違ったパターンにはなるけど。


 なにかの因子、例えば”思い入れ”や”思念”なんかが強く影響した場合にそれが発芽するのかもしれない。

ステファン 少年の前世の記憶は、”思い出す”ではなくて、”覚えていた”という感じだったみたいだけど、私の場合は、その作品に触れない限りは出てこない。なので、”思い出す”感じだと思う。

私の”先読み”も、彼とは違うパターンの”前世の記憶の発芽”なのかもしれない。


 整理してみると、

私は地獄で罪を償っている真っ最中なので、なかなかどうして割と苦難の生活を送らされている。

これは”地獄めぐり”と呼ばれるものなので、贖罪の人生をあと数回繰り返すことになるらしい。

 ただ、人生を繰り返すといっても、同じ人生ではないらしく、罪を償うために苦難の人生を数パターン送るというものらしい。

とはいえ、苦難の人生を送るだけで贖罪のカウントが数えられるものなのか、なにか他にも条件があるのかはわからない。

 あの声によれば、私の”地獄めぐり”の回数は”あと四回”らしい。

あの声というのは、どうやら”死神”の類のものっぽい。

そう、私は”死神の声”を二度も聞いてしまっているのだ。


・・・

大丈夫かな。私。

いろんな意味で

・・・。


 いやー参ったね。ようやく生活が軌道に乗り始めてきて、少しは幸せ気分を味わえるのかなあなんて思い始めているというのにね。実は、精神的に病み始めていて、じきに精神崩壊を起こしちゃうってコースじゃないことを祈るばかりだ。

・・・そうなることが今回の罪ほろぼしのストーリーだったりして。

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