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黄昏に染まるその陰で  作者: 三当香季
13/19

第4部 ACT1の1 誰かが私に・・・

 -なぜこんな目に合うのか?-

 私、 梅川貴子 はそう思うのであります。

目は見えている。耳も聞こえている。しかし、言葉を話そうとしてもうめき声ぐらいしか出てこない。

そもそも体が全然動かない。


 60代半ばに脳梗塞で倒れたことからそれは始まった。

倒れた時に受け身が取れなかったのが悪かったとかで、頭と腰を打ち、腰のほうは骨が折れた。

 倒れる数日前に、少しろれつが回らなくなったり、顔の半分が引きつっている感じがときどきあった。

それをそのまま放っておいたのがいけなかった。でも、それももう後のまつり。


 意識を取り戻した時には、病院のベッドで寝かされていて、なんか変な感じはしたのだけれど、娘から「半身まひ」と聞かされるまで、自分の体の半分が動かなくなっていることに気付かなかった。

 治療やリハビリを続けて、なんとか話しをすることはできるようになったけど、右の手脚は動きをとり戻すことはなく、自分一人で立ち上がるのは困難。移動するには車いすが必要となった。


 財産がないわけではなかったので、退院後には専属の介護士を雇った。元々、家政婦さんを雇ってたので、その両方の手を借りることで、家族の手はさほどわずらわすことなく自宅での生活を行えていた。


 でも、70歳を過ぎたころから、少しずつ話すことに支障が出始め、自分の意志が相手にうまく伝わらなくなっていった。

 意思伝達装置というものを医者から紹介されて使ってみたりもしたのだけれど、いつしかそれさえも私は扱えなくなってしまった。

今はもう、私が何かを考えても、誰も理解してくれない。


 寝たきりの生活。食事は管を通して胃に流し込まれる。トイレなんてもう何年使っていないのかしら?

オムツをあてがわれて、定時に介護士が換えてくれる。お風呂も年に数回だけ、普段はタオルで体を拭いてもらうだけ。

 特に何がしたいという欲求があるわけじゃないんだけど、ただベッドで寝ているだけの毎日は退屈。

ときどき、ヘルパーさんや家族が、リクライニング型の車いすに私を乗っけて庭へ出してくれたりはするんだけど、家の敷地の外に出るのは病院に行く時ぐらい。


 病院の先生だって、私の考えていることは理解してくれてない。

もしかしたら、まだ私が思考できることさえも解っていないのかも。

見えているし、聞こえてるんだけど、それは伝わらない。

検査によると、私の脳や体はうまく反応していないらしい。

医者は娘に、

「見えているようですし、聞こえてもいるみたいです。でも、それをちゃんと理解しているかどうかは疑問といえる状態です」

と、説明している。

これってどういうことだろう?

私は見えてるし聴こえてるよ。

みんなの顔だって、部屋の風景だって、ちゃんと見えてる。

みんなの声だって、ときどき点けてくれるテレビやラジオや音楽の音だって聞こえてるよ。

なのに、検査では私の脳は反応していないらしい。

植物状態というものなのかなあ?

そういうのがあり得るのかどうかは分からないけど、脳は動いてないけど、魂で考えてるってことなのだろうか?


 でもね、魂はまだ離れてないのよ。きっと。

だって、自分を見下ろしてる景色はまだ一回も見ていないもの。

だからやっぱり、魂は体に貼りついてて、その目で見て、その耳で聞いているはずだと思うんだけど、脳波検査じゃあ反応なしみたい。

これってどうゆうこと?魂が体から離れる一歩手前の状態とかなのでしょうかねえ?

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