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黄昏に染まるその陰で  作者: 三当香季
10/19

第2部 ACT3の9 知恵あるものは

 春。テレビのニュースで電車の脱線事故が取り上げられているのを見た。

それはそれは凄惨な事故で、死者100名を超える大事故だった。

連日、ニュースでそれは取り上げられ、事故の原因や経過、責任問題や対応策などについてテレビの中で論争が繰り広げられていた。

 自分たちの身にいつ起こるかもしれないそのような事故は、深い傷跡と悲しみ、そして様々な教訓を皆に伝えた。

 それとはまったく関係のないことだが、脱線事故の起こったその週末、競馬のメインレースでの3連単の配当が193万円、百万馬券といわれる結果が出て、それも話題になった。

 193万円の配当とは、100円が193万円になるということである。

 1,000円買ってたら19,300,000円。

 一万円買ってたら一億九千三百万円の払い戻し。

(現実的には、的中口数が増える分、配当は下がって額は変わっちゃうんだろうと思う)

 痛ましい事故と超万馬券の話を並べるのは不謹慎だとは思うんだけど、脱線事故と193万馬券の両方に私は衝撃を受けて、その週は忘れられないものとなった。


 そして、こうも思った。


-こういう衝撃的な出来事って、記憶に残りやすい。

もし、この二つの出来事を結びつけることができれば、来世の私がギャンブルに興味がなかったとしても、競馬へと導くことができるのではないか?-


って。


 大きなニュースになるような出来事というのは、大勢の人たちの目に留まる可能性が高い。それを目にしたことによって、その週末の競馬の結果が”先読み”できれば。

 つまり、


推理・ミステリーものの作品の頭の部分を知る

 ↓

その物語の結末が読めてしまう


というのが今の私の”先読み”なんだけど、

それを、


ニュースで大きな事件などの印象に残りやすい出来事を知る

 ↓

その週末の競馬の結果が分かってしまう


という風に来世には持っていくことはできないだろうか?


 ”先読み”のカラクリは全く分からないけれど、意外に、「この風景、どこかで見た気がする」といったものや「あれ?これって初体験のはずなんだけど知っている気がするなあ」なんてことも、実は前世の記憶に触れているのかもしれない。

ただ、それを前世の記憶とは思わないし、それ以上踏み込まないから、明確な前世の情報を手に入れられないのだとしたら。


 私の場合は、前世の記憶が物語だったから、その先に触れて確かめることが容易かった。読み進めるだけでそれに触れることができるから。(アニメの場合は見続けることで)

 でもほとんどの人は、誰もがある程度は、前世の記憶を開ける鍵に触れる瞬間はあるんだけど、それを使って前世の記憶が入っている宝箱を開けられなかったり、開けたとしても大した内容じゃなかった場合だと”気のせい”とか”妄想だったか”なんて感じで終わらせてしまうんじゃないのかな?。


 もしそうだとしたら、来世の人生で有効な情報を強く思い入れることによって、来世へもそれが繋がるようにしたうえで、その情報に辿り着く鍵(”先読み”が発動する鍵)も、誰もが目にするもので、それについても強い思い入れを持つことで情報へと誘導することはできないかしら?


あたりまえだけど、確証はない。

確証はないし、まだまだモヤモヤする部分はあるんだけど、はっきり言って行き詰まっちゃっている私は、その方向で進むことに決めた。

(ただ単に、他にやることがないから、やめると暇になっちゃうだけなのかもしれないけどね)


 その日から私は、大きな事件、出来事をチェックし、そういうことがあった週末の重賞レースの名前と結果を頭に叩き込むことを始めた。

 実際に、以前よりは絞り込んでいる分だけ、後から思い出せる率は高くなった。

ただ、それが来世に届けられるかどうかはわからない。

他人には言えないような”やばいこと(アホなこと)”をやっているなあと自分でもたまに思う。

馬券を買うでもなく、大事件のニュースを熱心に見て、競馬の結果も読み漁っている二十代女子。はたから見たらコレ、マジでやばくね?


 そんなこんなで「時事ネタ収集&競馬腐女子生活(ただし馬券を買うわけではない)」を謳歌していた私だったが、またも、ある疑問がひょこりと顔を覗かせるのであった。


 ステファン 少年の前世の記憶というものは、”過去の時代の記憶”だと言われていた。検証した結果、彼の覚えていたその街の情報は、現在のものとは明らかに違う部分があって、それは数十年前のものだった。

なので、彼の前世の記憶は、間違いなく”彼が生まれる前”のものだ。

 それに比べて、私の”先読み”、私が生まれる以前には存在していない作品ばかりで起こる現象なのた。以前から、何となくそれは感じていたんだけど、リストアップしてみたら、私の”先読み”できた作品は、”私が生まれた以降=同じ時代に生み出された作品ばかり”だということが判明した。


 これはどういうこと?

前世なのに同時期(同時代)だというのであれば、それってもう前世って言わないんじゃないの?

 私の”先読み”は前世の記憶ではない可能性も考えた。

じゃあなに?さっぱりわからない。

もしかしたら、やっぱり今やっていることはまったくの無駄なのかしら?無駄、無駄、無駄、無駄。無駄なんじゃあないの?

 いや、待て待て早まるな。そういえば、タイムリープっていうのが題材なアニメがあったよね。私の場合は転生じゃなくて、タイムリープなんじゃね?

まだ諦める時間ときじゃない。諦めたらそこで試合終了だ。


 そこで頼るのは、ありがたいことに今の時代は本当に便利なツールがある。

以前、”地獄”に関して調べたのと同じようにインターネットで”前世”について検索をかけてみた。

そうすると、いやあ、びっくりするぐらい”前世”について書かれているサイトがあるものなのね。”地獄”よりもいっぱいあったよ。

「前世の記憶とは魂の記憶。それをカルマ(業)といます」

「人は輪廻転生をしていて、本当はすべての人が前世の記憶を持っている。その引き出し方が分からないだけなのです」

「ときに途方もない内容の夢を見ることがありますが、それは前世の記憶である可能性があるのです」

 などなど、精神科医や心理療法家にセラピスト、占い師に霊能者、宗教家や自称神様や神の使いといった御高名な方々がインターネット上で情報(持論)をぶちまけておりました。

 そんな中でも、

『スピリチュアル・マスター・ プロフェーテース彩美 の心の架け橋』

というサイトの「輪廻転生には種類があります」というコーナーにこんなことが書かれていた。


 魂というものは輪廻転生して浄化され、最終的には天国へと到達することを目的としています。

 魂が肉体を得たとき、善行によって魂は浄化されて上のステージへと導かれます。でも、悪行を働いた場合は、地獄で苦しみを味わうことで罪を償うことになります。

 転生にはいくつかの種類があります。

基本的に、その生涯で子をなした者の魂は、その子孫の肉体へと転生することが多いようです。

そして、子をなさなかった者の魂は、魂の空きがある肉体へと導かれることになるのです。

 どちらの場合でも、事故死や自殺など、天寿を全うできなかった者は同じ時代を繰り返すことが多く、天寿を全うできた者や病死の者は未来へと転生することが多いようです。

 また、稀にかなり古い時代へと転生する者もありますが、このような者は、神に選ばれし預言者である場合が多いです。しかし預言者を騙る偽物もいるということは覚えておかなければいけません。そのような悪魔には騙されないように、十分に気を付ける必要があります。


 読んでいて、さすがの私もきな臭さは嗅ぎ取れていたものの

「子をなさなかった者の魂~事故死や自殺など、天寿を全うできなかった者は同じ時代を繰り返す~」

というところに興味を持ってしまった。


 輪廻転生と言っても、誰もがすべて次世代に生まれ変わるわけではなく、同じ時代を繰り返したり、過去にさかのぼって生まれ変わったりするのかもしれない。

それには何かしらの条件があって、 プロフェテース彩美 先生が言うには、

・子孫を残せた人→未来へ転生。自分の子孫の一人として生まれ変わる。

・子孫を残せなかった人→魂の入れ物(肉体)に空きがあるところに入り生まれ変わる。(血縁は関係なくなるということかしら?)

・事故死や自殺など、天寿を全うできなかった人→同じ時代に転生する場合が多い。(振出しに戻る的な?)

・天寿を全うした人、病死の人→未来へ転生することが多い。

・(稀だが)古い時代に転生する人→神に選ばれし預言者の場合が多いが、偽物もいる。(中には未来の記憶を持っていけど預言者ではない。というパターンもあるのかしら?人の持つ根本的な性質の部分で分かれる・・・とか?)

 まあ、そんな感じだそうで、

・ ステファン 少年の場合は、過去の記憶を持って未来に転生したんだけど、前世とは血のつながりはなさそうなので、前世の人は子をなさなかったパターン。なのかな?

・私の場合は、前世の人が事故死とか自殺で死んじゃったから同じ時代を繰り返すことになった。ということになるのだろうか?


 例のあの声のことも併せて考えてみると、

数回前の前世で罪を犯した私の魂は、現在、罪を償うための地獄めぐりの真っ最中。

直前の前世では事故死か自殺で死んでしまったらしく、その人と同じ時代に私が生まれた。そして、なぜだか前世の記憶(推理・ミステリーものの作品の内容)を持っている。

そして、まだ地獄めぐり継続中なので、生まれた環境それほど良くない。

( ステファン 少年の境遇はよくわからないので、どの界(道)にいるのかはわからない)

ということなのかな?

もしかしたら、今回も事故死や自殺で死ぬ運命なのかしら?

それが地獄めぐりというものなのかね?

もし、来世が未来だったら、今やってることはまったくもって無意味なことになっちゃうな。

子供作っちゃダメってことじゃんね。

 でも、今やっている無駄なあがきというのも、罪を償わせるために何か見えない力のようなものが試練を与えているのだとしたら・・・。

まさに地獄めぐりってやつぢゃあないかっ!

ああ、もう!それって納得いっちゃうじゃないかっ!


 そして、

”包丁を手にしたあの夜”の「今回は早かったな」と、

”交通事故の現場を目の前にした時”の「あと四回だな」には、

なにか違いがある感じがしてきたの。

「今回は早かったな」は、私に向けられた声。

「あと四回だな」はただ聞こえた声。

そんな感じ。

「あと四回だな」の方が私に向けられたものじゃなくて、たまたま何の因果か、私が聞いちゃったってだけで、実はあの事故現場で亡くなった他の誰かに向けられた言葉だったって考えたら・・・。

あら、私、すごくない?

凄い発想、思考能力。危ない奴って言った方が正解なのかもしれないけど。

まあ、それはともかく、

「あと四回だな」が私に向けられたものじゃないのなら、私の”地獄めぐり”の残り回数は四回ではない。ということなのよね。


 やばい思想に足を踏み入れている気もするんだけど、他にやることがない私なので、「時事ネタ収集&競馬腐女子生活(ただし馬券を買うわけではない)」はとりあえず続ける方向で。

 もしかしたら来世の自分の糧になるかもしれない。という淡い期待だけを頼りに、自分を信じて生きていくわ。


 そして、そんな「時事ネタ収集&競馬腐女子生活(ただし馬券を買うわけではない)」も三年目に突入して、もはやベテランの域に達したころ。

 私は、職場でのイベントで使う雑貨を購入するために、近所のお店へと自転車を走らせていた。小さい十字路に侵入したときに、見慣れた街の風景が一瞬で青一面の世界に変わった。

あ・・・れ?

ん?

あ、

この青は空だわ。

そう思ったところで景色はまた一転して、今度は空中から見下ろしている感じで辺りの様子が見て取れた。

そこで、私は何が起きたのかを悟った。

車には跳ねられた。

というよりも、ぶっ飛ばされたらしい。

でも、その割に痛みはない。

ともったんだけど、


グシャ


変な音。


なんだよグシャって。


変な音とともに辺りは真っ暗になった。

真っ暗の中、かすかに何かが聴こえる。


これ、あのオルゴールの音だ。


ああ、そうか。そういうことか。

わかっちゃった。

この音色は死の気配がしたときに聴こえちゃうんだ。

そういうことか。

でもって、私ってば死んじゃうのね。

事故で。

なるほどね。


あのなんとかって占い師だったか霊媒師の言ってたことも、あながち間違ってなかったのかもしれない。

だとしたら、私の「時事ネタ収集&競馬腐女子生活(ただし馬券を買うわけではない)」も無駄にならないかもしれないなあ。


そして、


「あと二回だな」


ほらほら、

くると思ってましたよその声。


・・・


おっ?

あと・・・二回!?


・・・三回・・・じゃないのね。


ってことは、やっぱり「あと四回だな」は私に向けられた言葉じゃなかったのよね。

ねえ、死神さん。

死神さんじゃないのかもしんないけど。


私の悪あがき

無駄になりませんように・・・。

最期にそう願うことができたところで、


わたしは消えた。


みなさん、さようなら。


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